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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第5章 迷走編
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第16話 試し撃ち

 家に帰り改めてカードを見る。リーナが、

「黒に銀色の文字か、良いねこれ」

「『黒龍の牙』だもんね、ご主人様の装備は黒ずくめだし」

「イグナシオ大陸は黒帝龍の大陸だからね。これからいろんな大陸に行くわけだからイグナシオ大陸の代表みたいな感じだね」

とセシリアとシェリルが同意する。他の大陸に行くことは決定事項なんだ。


 リーナがまじめな顔になって確認する。

「シェリル、結婚のことはどうするの。サトシはSランクになったんだから」

シェリルよりもセシリアやアルトがこわばった顔になった。

「そりゃあね。でも、まだ申し込まれてもないし」

とこちらを見る。僕は固まった。


 沈黙が流れる。僕が何か言わないとこの沈黙は終わらない。

「よく分からない」

そう言うと、みんなが一斉にこちらを見る。見ただけで何もしゃべらない。

「よく分からないんだ。結婚なんて考えたことも無いし、この世界の結婚の意味もよく分からない。僕が前にいた世界の結婚とは少し違うと思う」

アルトが、

「サトシ様の世界は一夫一婦制だったんですよね。愛妾とかもいなかった」

「歴史的にはあったらしいけど僕の周りにはそんなのは無かった。だけどコンラッド様やセシリアのご両親、それにバルナバーシュさん夫妻も、パースさん夫妻だって一夫一婦だよね」

「私の両親は他の人が入り込める隙はないです」

セシリアが言うと、リーナが続ける、

「パースさんは貴族じゃないからね。バルナバーシュさんは、エリシュカさんに冒険者をやめさせたと思っているから頭が上がらないのよ」

ナナも、

「コンラッド様は愛妾が何人かいるらしいです。この前、教えを請いにテラッセンに行ったときにアイリーン様から聞きました」

『にゃん』と言わないってことはまじめな話しなんだ。アルトも頷いている。リーナはさらに、

「アラスティア様は5人、バーナード様も3人と結婚されています。愛妾もいらっしゃるとか。シェリルのお父様は王様だったからもっと多かったよね」


「分かった、でも少し考えさせて欲しい。まだ時間はあるんだから。一番の問題は僕がこの世界にいつまでいられるかってことなんだ。あと2年もいられないかもしれない。このこともしっかり考えていて欲しいんだ」

そう言うのがやっとだった。


 シェリルが、

「とりあえずSランクになったことだけでも報告しましょう。教国まで行きますか」

「いや、結論が出るまではちょっとね。手紙でも良いかな」

「良いですよ。でもすぐに結婚のこと問い合わせて来ますよ、宰相が付いていますから」

「ディオジーニ様かあ、苦手だな」

そう言ってSランクになったことだけを報告する手紙を書いた。


 夜にまた、みんなは僕の部屋に集まった。

「シャイニングバーストを試してみたい」

とリーナが言った。僕も、

「僕もウォーターブレスを試したい」

そう言うとシェリルが、

「トルネイドと石つぶてとか、トルネイドとファイアーストームとかの組合せも試してみたい」

と言った。セシリアが、

「じゃあ、みんなで試しに行きましょ。で、どこに行く」

僕はいつも連携の練習をするアダラードの森を思い浮かべた。だが、リーナの意見は違ったようだ。

「森では破壊力がありすぎると思う。ヘルファイアーとか使ったら消すの大変だよ」

「ご主人様のウォーターブレスで消せるかも」

「でもひどく荒れるでしょうね森が」

「やめておこう。じゃあ砂漠しかないね」

「そうね、隣の演習場が使えればいいのだけれどあまり見せたいものではないわね」

とリーナが言う。僕が締める。

「じゃあ明日の朝、砂漠に行こう」


 みんなはそれぞれの部屋に帰る。僕は寝室に入りベッドに潜り込む。しばらくするとアルトがベッドに入ってきた。

「サトシ様、私は何があってもサトシ様に付いていきます。お側に置いて下さい」

そう言って豊かな胸を押しつけてきた、僕の理性はここまでだった。


 次の朝早くアルトのキスで目覚め装備を付けて階下に降りていくと。ロチャとオルモスが馬車を用意して待っていた。朝食は馬車の中で食べるらしい。砂漠の冒険者村に馬車を預けロチャたちも一緒に砂漠へと入っていった。1時間ほど砂漠に入り他の冒険者がいないことを確認して技を試す。


 スコルピオンがいた。水竜がやっていたように息を吸い込みウォーターブレスと念じる。息を吐き出すとともに魔法が放たれる。口から放たれた魔法の水流は砂を巻き込みスコルピオンを破壊し吹き飛ばした、砂漠にはブレスを吐いた後が溝のように残っている。リーナが言った。

「すごい魔法ね。でも水竜と比べると威力がないね」

「レベルの問題かな」

と応えると、

「それにしても口からブレス吹くのは人前ではしない方がいいかも」

みんなはそれに頷いている。ロチャは顔が真っ青だ。

「もう1発くらい使えそうなんで今度は手から出してみる」

そう言って、手を構え、必要かどうかは別として息を吸い込み手から思いっきり魔力を放出する。


 ウォーターブレスが放たれた。手からでも大丈夫だ。セシリアが、

「威力が落ちましたね」

と言った。やはりブレスは口からかな。アルトが言う。

「杖を使えば良いかもしれません。水竜も額に宝石があったし魔石を使ったら威力も増すかもしれません」

「じゃあ、イバダンさんに相談してみよう。その前に闇の魔石を使ってもう一回試して見るよ。しばらく休まないと無理みたいだけど」


 セシリアが、

「サンドワームです」

見るとウォータブレスの削った砂地にサンドワームが入ってきた。リーナが前に進む。

「シャイニングバースト」

と雷杖を手に叫ぶ。ライトボールの大きいのが飛びサンドワームに当たり爆発する。辺り一面が光り輝きサンドワームは粉々に砕け散った。

「凄いね」

と僕が言うとリーナは、

「手応えは十分みたい。小さいサンドワームだから何ともいえないけど。どれくらい通じるか早くリトルサラマンダーに使ってみたい」

と言った。


 シェリルとナナが前に進もうとしたときに、オルモスが、

「冒険者が集まってきました。さっきの光のせいだと思います」

と言ったので試し撃ちをやめて昼食を取ることにした。冒険者たちは僕たちに説明を求めてきた。

「さっきの光は何だったんだ」

「お前らがやったのか」

「この砂の削れ方も尋常じゃないがお前らがやったのか」

と口々に聞いてくる。その中の一人が、

「お前らは何者だ」

と言った。シェリルが答えた。

「『黒龍の牙』よ。何か問題ある」

「カードを見せてみろよ。『黒龍の牙』はSランクなんだぞ、こんなひ弱な奴らだとは聞いてないぞ」

「サトシ、カードを見せて」

また僕かよと思いながらカードを出して冒険者に見えるようにする。いろいろ言っていた冒険者は1歩下がり土下座する。まるで水戸黄門だ。

「頭を上げてください。謝ることはありません。僕たちこそお騒がせして申し訳ありませんでした。できましたら僕たちだけにしてもらえますか、昼食を取りたいんで」

そう言うと、冒険者たちは昼食を取るところも見たいと残念そうな顔ですごすごと去っていった。

「有名になるのもいろいろ大変なんだね」

「そうよ」

とリーナとシェリルがにっこり笑う。王女と巫女姫で経験済みなんだよね2人は。


 静かになったところで昼食をゆっくり食べた。離れてはいるが見える範囲から去らない冒険者も多かった。今日はこれで帰り、後日もっと奥まで入って魔法を試すことにした。砂漠だから雨期になっても関係ないはずだ。


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