表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第5章 迷走編
107/142

第15話 Sランク

 パースさんたちはまだ残っている魔物の解体作業に行った。コリーさんが索敵を使えるらしいので何かあったら戻ってくるだろう。だから結界の中は僕たちだけだ。アルトとナナが口火を切った。

「サトシ様、あれほど危険なことはしないでってお願いしましたよね」

「いきなり飛び込むなんて危ないにゃん」

「ほんとに、私の運命もかかっているんですからね」

とシェリルも言う。

「もう、アルトもセシリアも首輪の奴隷じゃないし僕が死んでも・・・」

「何を言ってるの。私を王女に戻すの」

「いや、それはまだ・・・」

シェリルが話す度に他の4人は微妙な顔をするのは僕の思い過ごしか。それにシェリルは僕と本当に結婚する気なんだろうか。


 セシリアが、

「飛び込んだのは何か作戦があったからですよね。でも、それからの動きがよく分かりませんでした」

リーナも、

「瞬間移動か何かの魔法を取ってるんですか、闇の魔法か何か。いきなり水竜の背中に現れたりして」

「いや、瞬間移動じゃなくて擬態だよ」

「「擬態」」

「そう擬態の魔法を魔食いしてたんだ、それでミズトビウオに擬態して水竜に飛び乗ったんだ」

リーナが思い出したという顔で、

「ミメシスですね。祠やリトルフェンリルに擬態していた」

「そう、そのときに魔食いしたんだ」

「で、それを黙っていた。秘密にして何をしようとしてたの」


 ナナが、

「壁に擬態して着替えを見るとか、服に擬態して私たちに着られるとか」

シェリルも、

「それとも誰かに擬態していかがわしいところに入るとか」

少女たちの怒りがどんどん高まっていく。

「そういうつもりは無かったんだけど、なんか言いそびれて」

と言うとリーナが、

「まあいいわ、何を考えてたか分からないけど。サトシも秘密の1つや2つ持っていたいのよね」

「そうなんだ、ご主人様って」

それから、さんざんイヤミを言われて過ごした。早くパースさんたち戻ってこないかな。


 もう終わるかなと思っているときにリーナが言った。

「で、魔食いで何を取ったのか全部言って。作戦を立てる上で必要でしょ。私たちも取った魔法全部言うから」

「分かった」

やっと終わった。みんな真剣な顔に戻っている、さすが冒険者。


「じゃあ僕から言うよ。まず魔法から。生活魔法が1と2、遠距離操作、鑑定、翻訳が大陸共通語」

セシリアが割り込む、

「えっ、大陸共通語。そうかご主人様はこの世界の人じゃなかったんだよね」

「続けるよ。翻訳は大陸共通語、古代語、シャイアス語、ファジルカ語。それに魔食い」

「スキルや魔法だけでも結構あるのね」

とシェリル。

「そして魔食いしたのが、ブートドッグの加速、アルマジロンの身体強化、キングベアの豪力、レッドウルフのファイアースピア、レイスのマインドボール、地竜の震地、水猿のウォーターボール、ミメシスの擬態、それに水竜のウォーターブレス、これで終わり」

「やはりウォーターブレスを魔食いしたんだ。それで水竜がブレスを放てなかったんですね。あのときはもうだめかと思ったんですよ」

とシェリル。リーナが、

「じゃあブレスを打てるんだ、すごい。口から出るのよねブレスだから」

「どっかで一度試して見ないと分からないよ。他の人には隠しておきたいしね」

「そうですよね。でもリトルサラマンダーとは戦いやすくなりますね。ウォーターブレスがあれば」

やはり行くつもりなんだサマルカン大陸に。


 セシリアが続けた。

「じゃあ次は私。生活魔法1、身体強化、治療魔法1と2、ウォーターボール、探索、索敵、緑の結界、ウォーターカッター、蔓の捕縛、それだけ」

シェリルが驚く、

「それだけって、そんなに多いのさすがエルフ。魔法の取得が早いのね。じゃあ私も言うわ。生活魔法1、加速、俊足、神速、身体強化、トルネイド」

リーナが、

「私は、生活魔法1、ライトボール、光槍、身体強化、光の癒し、シャイニングバースト」

ナナが、

「生活魔法1、石つぶて、支援魔法が土の加護、加速、身体強化、消気、魔法防御です」

アルトが、

「私が取っているのは、生活魔法1、ファイアーストーム、身体強化、ファイアーアロー、ファイアーラプチャー、そして今度取ったヘルファイアーです」


 みんな興奮している。あらためてそれぞれの魔法を聞くと凄さが分かる。『黒龍の牙』とかSランクのパーティーとか言われてもいいくらいの魔法力だ。それにリトルフェンリルの装備、最高の武器。


 リーナが、

「Sランクのパーティーなんて無理だと思っていたけどそうでもないみたいね。でも魔法と装備だけのことだけ、精神面とかはまだまだだよね」

シェリルも、

「若いんだからそれはしょうがないよ。これから成長していかないと」


 それから僕たちは解体を手伝った。水竜はどこも無駄にならなかった。肉も鱗も目玉も剥ぎ取った。骨も売れるらしい。胴体が沈まなかったら肉だけでもものすごい値段になっただろうとアルバニさんが残念そうだった。蟹は肉も売れるようだ。腐るものは僕の闇の袋に入れることになった。


 ほとんど徹夜の解体作業だった。夜が明けてロチャから昼前に付くとの連絡が入った。朝食後、僕たちは寝ることにした。パースさんたちはまだ解体作業を続けるそうだ。


 昼前にロチャたちが到着した。人足たちは周りをびくびくしながら見回している。

「魔物のことは心配しないでいいよ。水竜を倒した『黒龍の牙』が守ってくれるからね」

とパースさんがみんなに説明する。みんなは僕たちの方を見て感心したような顔をした。アルバニさんが、

「とりあえずここまで馬車が来られるように整地から始めるぞ」

とみんなは作業にかかった。


 アルトとナナそれにコリーさんも加わって食事の用意を始めた。60人分の食事の用意だ。大蟹の甲羅を鍋代わりにして蟹鍋を作る。アルトが買い込んでいた食材もほとんど使うみたいだ。ロチャにも食材を買ってきてくれるように頼んでいたのだが馬車の中だ。整地だけでもまる1日かかった。


 素材を積み込みカラプナルの冒険者ギルドに向かう。全て運ぶには荷馬車10台でも足りなかった。3往復はしないといけないようだ。僕とリーナ、それにシェリルとパースさんがまずカラプナルに行く。他のメンバーは護衛のために残った。全ての荷物が届いたのは夜遅くだった。いろいろな店を回って売れば高くなるんだろうけどそれも大変なので全てギルドに売った。依頼品である水竜の宝石、それに水竜の角は売らなかった。それでも水竜の目玉や鱗に骨、それに青大蟹の殻が高く売れ、鰐皮なども数百あったので全部で金貨560枚にもなった。


 荷馬車の借り賃や人足たちの賃金を支払っても金貨500枚は残る。僕はパースさんたちに、

「ありがとうございます。今回の依頼料として金貨10枚、それに水竜の角を除いたので素材料の金貨500枚のうち300枚でよろしいですか」

そう言うとパースさんは、

「とんでもない。倒すのを一緒にやったんならそれくらい貰うが筏を組み立てたのと解体しただけだ。7日間だぞ、その10分の1でいいよ、それでも多いくらいだ」

と言った。

「じゃあ、これからもいろいろ協力していただくっていうことも含めますから受け取って下さい」

と金貨310枚を渡した。ルグアイには知り合いも少ないので半ば強引に受け取って貰った。それでも7日間で3千万円ほどの稼ぎは納得ができない様子だった。それから残しておいた水竜と蟹の肉を分けて別れた。


 次の日の朝、王宮に行きルグアイ王に謁見して水竜の宝石を渡した。王宮ではいろいろなことを聞かれた。特にアルトの父親のことを。そして、晩餐会にも誘われたが、すぐにマリリアに帰るからと断った。すると、

「プエルモント教国で何かあったらしいな、王女のことらしい。もう君たちの耳に入っているのか」

「いえ、それは・・・」

と口ごもっていると、リーナが、

「この依頼達成でリーダーのサトシがSランクに昇格することになっているのです。マリリアの冒険者ギルドに報告すると昇格できるんです」

と言った。

「それはめでたい。じゃあお祝いに贈り物をしよう。なにか欲しい物はないか」

リーナが答えた。

「ルグアイ国内の自由通行権をいただければと思います。ヴァンデルより北へは行けませんでしたので」

「ヴァンデル教徒ではないからな。良いだろう。通行許可証を与える。南の草原もこれで通れる」

「ありがとうございます」


 王宮を出てすぐにアジメールに向かった。アジメールのギルドに着きレイアさんに協力してくれたお礼を言い金貨1枚と水竜と蟹の肉をチップとして渡した。材木屋の頭領にもお礼をして『トレーヴの麓』に1泊してマリリアに向けて出発した。


 マリリアの屋敷に戻り肉を渡し留守番をしてくれた人達に蟹鍋を食べるように言った。それで僕たちの夕食も蟹鍋になった。

「美味しいんだけどね。このところ蟹ばっかりだからあきちゃうよね」

とシェリルが言う。みんなもうんうんと頷いている。


 夜が明け、ナウラさんと一緒にみんなで冒険者ギルドに行く。依頼達成の報告をするためだ。応接室に通され、

「いよいよSランクだな。おめでとう」

「ありがとうございます」

「Sランクになると伯爵と同等の扱いを受ける。お前もそのように振る舞えよ。それからカードの色を変更する『黒龍の牙』のカードは黒色にすると3国の宰相会議で決まった。これからはイグナシオ大陸の冒険者パーティーとして活動してくれという意味だ。3国が認めてくれたのだ」

「Sランクの冒険者はどれくらいいるのですか」

「Sランクは名誉クラスでもあるからな。意外と多いんだ」

「そうなんですか」

「まず、3国の国王に与えられる。それにヴァンデル教の教皇にも。プエルモント教の教皇にも与えられるのだが歴代の教皇はすべて辞退されている。それ以外ではコンラッド。それに俺もギルドマスターを引き受けたときにいただいた。ユージンも近衛隊を辞めたら与えられることになっている」

「なんで僕がSランクに」

「サトシは3国の国王が出したSランクの依頼を全て達成したということが理由になっている。ルグアイの依頼が無くても翻訳の部分を含めると3国が受ける恩恵は大きいから与えられる予定だった。それがあるからルグアイも依頼を出したんだと俺は思っている」

「そうなのですね」

「Sランクに昇格したことは全ての冒険者ギルドで公表されることになっているから、そのつもりでいろよ」

「・・・」

「カードを回収する」

と、僕たちのカードを全て回収し、新しいカードに魔素を書き換えて渡してくれた。そして依頼達成金である金貨3千枚分の魔素を受け取った。真っ黒なカードに金色でS、銀色で『黒龍の牙』の文字が入っているカードだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ