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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第5章 迷走編
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第13話 青大蟹 

 筏ができたというので材木屋さんに行く、相当大きく見えるがぎりぎりの大きさらしい。

「じゃあ、ばらそう。何か注意することがあるか」

とパースさんが材木屋さんの頭領に聞く。

「組み立てを簡単にしてるからばらすのも簡単だ。やってみてくれ」

パースさんは手慣れた手つきで筏をばらしていく。筏が丸太14本になった。予定よりも2本多い。

「頭領、2本多いが」

「魔物と戦うんだろう。1、2本はすぐに持ってかれるよ、予備だ」

「そうか」


 僕が、

「じゃあ、闇の袋に入れるよ」

というと、パースさんが呆れたような顔をした。

「1本でも100kg以上あるぞ、入るわけがない」

「とりあえず入れてみましょう」

といって、マジャルガオンの袋の口を開けて、丸太を突っ込む。丸太が袋に飲み込まれていく。1本目、2本目と入って行くと、頭領もパースさんも顔が青ざめていく。

「何だ、その闇の袋は」

「呪いがかかった袋です。持っていると属性が消えます」

そう僕が言うと、2人は1歩後ろに下がった。丸太が14本、止める金具、ロープと全部マジャルガオンの袋に入ってしまった。

「頭領、ありがとう。じゃあ、出発します」


 そういって僕たちは馬車に乗った。パースさんたちはカングスまでは乗合馬車だ。馬車で行けるところまで行って、そこで待つ。ロチャたちがカングスからパースさんたちを連れてくる。ロチャたちはアジメールまで戻り宿で待機する。調べ物があればすぐにギルドに走ることになっている。


 草原を東に進む。グリーンクロコダイルが出てきたがパースさんたちと一緒に狩っていく。

「さすが鰐専門の冒険者ですね」

「ああ、グリーンはな。ブルーだとウォーターボールがやっかいだがな」

進んでいくと前回野営をしたところに出た。

「じゃあ、ここで野営しましょう」

と言うと、シェリルが結界石を置く。ナナも結界を張る。これで水竜でもなけりゃ近づけないはずだ。パースさんも驚いていた。

「結界の重ねがけかい。それも高位の結界石だぞこれ、夜の見張りは俺たちに任せてくれ」


 夜が明けてセシリアがキスで起こしてくれた。

「おはようございます、ご主人様」

なんか嬉しい、久しぶりだもんなセシリアの朝のキス。

「あー、顔がにやけてるにゃん」

とナナが言う。みんなが笑っている。パースさんたちまで。


 僕たちは結界石に自分を登録するように四隅の石に触る。シェリルが教える。

「パースさんたち、4隅の結界石に触って下さい。それで出入りが自由にできます」

パースさんたちも結界石に触る。


「パースさん、僕たちは水竜を倒しに行きます。ここで待っていてください」

というと、パースさんは、

「付いて行くよ。戦力にはならないだろうがな。自分たちは自分たちで守れるよ。危なくなったらここに逃げ込めばいいんだろう。『黒龍の牙』の戦いも見たいしなって、それが最大の理由だがな」

「水竜との戦いになったらブレスが来るので離れていて下さい」

「分かった。その前に逃げ込んでるよ多分」

結局パースさんたちは付いてくることになった。


 グリーンクロコダイルやブルークロコダイルを倒しながら進む。ブルークロコダイルのウォーターボールが僕の装備で消えたことにパースさんらは不審な顔をしたが無視することにした。


 セシリアが叫ぶ。

「蟹です。あまり大きくはありません。おそらくビッグクラブです。その後ろにジャイアントクラブもいます。合わせて50匹ほどです」

「パースさん、少し下がって下さい。撃ち漏らしたやつとか回り込んできた奴をお願いします」

「まかせとけ」

と言ってパースさんらは後ろに下がる。


 アルトのファイアーストーム、シェリルのウインドストーム、ナナの石つぶてが飛ぶ。ビッグクラブが潰れていく。ジャイアントクラブは耐えている。ジャイアントクラブにマインドボールを放つ。混乱したジャイアントクラブは辺り構わず攻撃を開始した。


 セシリアがジャイアントクラブの鋏をかいくぐりながら氷の刃で腹を割いていく。シェリルも風の剣で倒していく。僕も剣に魔力を込めずに切っていく。ジャイアントクラブの硬い甲羅も紙切れみたいに切れる。相当な切れ味だ。ほとんど攻撃を受けずに戦いは終わった。何匹かは湖に逃げ帰ったようだ。


「ジャイアントクラブなんて瞬殺かよ、さすが『黒龍の牙』」

それから先は不気味なくらいにほとんど魔物は出なかった。湖が見える位置まで来たときに魔物たちが見えた。一番奥に水竜の首から上が見えている。その前に青大蟹が4匹、その前にジャイアントクラブが100匹以上いる。鰐やトカゲの魔物も多数いる。


 パースさんたちの顔色が青い。

「無理だ。魔物が連携して襲ってくるなんて」

「パースさん、野営地まで戻って下さい。ここから先は僕たちだけで戦います」

「分かった、下がらせて貰う」


 パースさんたちが下がったのを確認して僕はみんなに指示を出す。

「僕はできるだけマインドボールを放つ。シェリル水竜に風の弓でダメージを与えて。魔物たちが襲ってきたら震地をかけるので一斉に攻撃しよう」


 僕は魔物たちのグループで一番大きい奴にマインドボールを放っていく。シェリルが風の弓でじっくりと水竜を狙い矢を放つ。矢はものすごい早さで水竜の首に突き刺さった。水竜が大きな低い悲鳴を上げる。魔物たちが一斉に襲ってきた。


 マインドボールは青大蟹にも当たったが何の変化もなかった。ジャイアントクラブは混乱に陥ったようだ。範囲攻撃の魔法が炸裂した。弱い魔物はそれで終わりだ。リーナが叫ぶ。

「もう一度範囲攻撃放って少し下がりましょう」

次から次に範囲攻撃魔法が炸裂した。そして僕たちは100m程下がった。魔物の数は半分以下になった。僕とセシリアが前に出る。

「ジャイアントクラブがきます。10匹だけです」

2人で倒していく。3匹ほど後ろに逃がしたがアルトとシェリルが難なく倒した。


 青大蟹が動き出した。小さい2匹だ。小さいといっても高さが8m位はある。作戦では狙うのは左の一番後ろの足の股関節、シェリルが矢を放つその後ろを付いて行くように僕がファイアースピアを放った。2匹目も同じだ。青大蟹は体勢を崩す。そこにアルトがファイアーラプチャーを腹の正中線めがけて放つ。もう一匹はセシリアが氷の刃で切り裂く。2匹とも動きが止まった。他の青大蟹は動かない湖をじっと守っているようだ。


 セシリアが切り裂いた青大蟹は腹を上に向けてひっくり返っている。ナナと僕が駆け上がり解体する。見ていたパースさんらも寄ってきた。セシリアたちは湖の魔物たちを睨んでいる。

「何やってるんだ。まだ終わってないだろう」

とパースさんが言う。

「心臓の位置を確かめているんだ」

「ジャイアントクラブの心臓は右目の下にある。そいつも同じじゃないか」

とパースさんのパーティーで解体を受け持っているアルバニさんが言った。ナナが身体の中に入り込んで確かめる。

「ありました。サトシ様も確認しますか」

「もちろん」

と言って身体の中に入る。よし、心臓の位置さえ分かれば青大蟹は敵ではない。


 身体から出て、ナナと僕にクリーンをかける。身体に付いたどろどろしたものがきれいに落ちた。

「ありがとうございますアルバニさん、心臓が見つかりました」

「心臓を見つけてどうするんだ。あの辺りの殻は腹側でも厚くて矢は通らない」

「そうですね」

リーナが助け船を出す。

「パースさん、アルバニさん下がってください。青大蟹をおびき出します」

「分かった」

といって彼らは下がっていく。


 リーナが、

「シェリル、一番大きいのの右目を狙いましょ」

「了解」

とシェリルが風の弓を構えた。

「アルト、ナナ、範囲攻撃を」

一斉に攻撃を再開した。魔物たちもこちらに向かってきた。矢が青大蟹の右目に当たる。視力を奪えたかどうかは分からないが痛みは十分に感じたようだ。


 怒った青大蟹がこちらに向かってきた。水竜は首に刺さった矢を気にしている。守りに徹するなら青大蟹を止めたのだろうが水竜も怒っている。つられてもう一匹の青大蟹も出てきた。僕は他の魔物を全く無視して青大蟹に向かう。セシリアとアルトが左右を守ってくれている。青大蟹にあと10mというところでフリーズをかける。青大蟹は硬直して倒れる。僕は殻の上に駆け上がりもう一度フリーズで止めを刺す。そこにもう1匹の青大蟹が襲ってきた。アルトがファイアーラプチャーで鋏のある腕の関節を叩き折る、攻撃は逸れた。その隙に、

「フリーズ」

と叫び青大蟹を倒す。念のため3発放った。


 アルトが、

「あーっ」

と叫ぶ。顔が真っ赤になっていた。セシリアが、

「大丈夫」

と駆け寄る。僕はアルトがレベルアップしたことが分かった。

「アルト、セシリア、下がるぞ」

そう言って一緒にリーナたちの位置まで下がる。女の子たちはアルトを囲んで何やら話している。


 アルトが僕に聞く、

「ヘルファイアーを取っていいですか」

「もう奴隷じゃないんだから、僕に聞かなくても」

「だめです。リーダーはサトシ様なんですから」

「はいはい、いいですよ」

リーナが怒る。

「もっと真剣に応えて下さい」

みんなが僕を睨む。

「でも水竜の前だよ。早く取って」

「はい、分かりました」

とアルトはヘルファイアーという魔法を取った。


 さあ、水竜に挑戦だ。


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