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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第5章 迷走編
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第12話 鰐専門の冒険者

 静かな夜だった。このあたりには夜行性の魔物はいないのだろうか、物音一つしないのも不気味だ。風もなく見張りをしていても何も動かない。気分が萎える、精神的ダメージが意外と大きい。交代の時間がきてアルトと替わる。少しは慰めになるかとアルトの横で寝ることにする。アルトはギュッと僕の手を握っている。


 朝になった。アルトのキスで目覚めた。

「サトシ様、青大蟹です。湖の畔に4匹います」

「4匹もいるの」

「はい4匹です。それにその後ろに何かいます。遠くてよく分かりませんが水竜かもしれません」

セシリアが起きてきたので、

「セシリア、索敵で調べて」

「はい、ご主人様」

「ねえ、やっぱりやめようよ、ご主人様は」

「いやです、けっこう気に入っているんです。奴隷じゃないんだから命令しても無駄ですよ、ご主人様。近くに魔物はいないみたいなので近寄ってみます」

セシリアが湖の方に進んでいく。湖にかなり近寄りそして戻ってきた。

「水竜です。かなりの大きさです。50m位の大きさだと思います。とても陸上では歩けそうにない体型です」

「じゃあ湖で戦うのか。こちらは岸で戦うにしても水の中に逃げられるとやっかいだよね」


 みんな起きてきて、朝食を食べながら話し合う。リーナが、

「何とか湖から引きずり出せないかな」

「リーナ、それは無理だと思う。きっと水竜は水の中から出られないと思う」

「でも湖の中で殺しても沈んだら宝石を回収できないかもしれないわよ」

「それも問題だな。情報が足りないよね。一度アジメールに戻ろう。このあたりに詳しい冒険者を捜して情報を集めてみよう、伝説なんかも。ヴァンデル教の教皇が1つ持っているってことは前に1度は討伐されてるってことだよね。何かヒントが残っているかもしれない」

「そうですね。眷属の弱点なんかも調べるにゃん」

アルトが、

「倒した後、湖の島に向かう船も必要ですよ。水竜は倒しても魔物は残るでしょうから丈夫な船が」

シェリルが、

「まだ、時間はたっぷりあるからね。じっくり準備しましょ」

と言うと、みんな微妙な顔をした。


 ロチャに通信機で連絡する。

「ロチャ、一度アジメールに戻る。カングスから少し入ったところまで迎えに来て」

「はい、かしこまりました」

「それからギルドのレイアさんに水竜の伝説に詳しい人と草原の魔物に詳しい冒険者を紹介してくれるように頼んで。ギルドの依頼ということでもいいから」

「分かりました。ギルドでレイアさんに頼んでカングスに向かいます」


 1回目の草原遠征で水竜の姿が確認できたので成功とすべきなのだろう。もう誰にも大怪我はさせたくない。準備していたらとか後から思うのはいやだ。ロチャと別れたあたりまで来て馬車を探す。まだ来ていないようだ。通信してみると今カングスから草原に入ったところらしい。1時間くらい待って馬車に乗った。


 アジメールまで戻り、情報の収集をする。王都のカラプナルの方が情報量は多いと思うが山賊たちのことも気になるので出来れば近づきたくない。

「水竜の伝説に詳しい人はいないようです。レイアさんが伝説を集めてくれるそうです。冒険者ギルドの図書館にあるものだけだそうですけど。それに草原の魔物に関するものもあるそうです」

「それは助かる。弱点とか書いてあればいいんだけど」

「それから草原の魔物に詳しい冒険者も紹介してくれました。Bランクのパーティーだそうです」


 アジメールには着いてギルドに行く。応接室に通され冒険者のパーティーを紹介された。

「お久しぶりです」

といきなり声をかけられた。アジメールからカラプナルに行く乗合馬車で一緒になった鰐専門の冒険者たちだ。

「久しぶりです、では貴方たちが」

「『黒龍の牙』が草原に詳しい冒険者を捜しているんだ俺たちじゃなきゃいかんでしょう」

そう言って胸を張る。

「いろいろと教えて下さい」

「俺はパース。こいつが俺の女房でコリー。竜人族のバッセルトン、アルバニ、それに狼人族のジェラルドです」

「そんな丁寧な言葉じゃなくてもいいですよ、普段どおりで」

「そうか、済まんな。そうさせてもらう」

「レイアさん、いろいろとありがとうございます。助かります」

「何かあったらいつでも言ってください。本は1週間くらいなら平気ですから、宿でじっくり読んで下さいね。アジメールから離れるときは返却して下さい。じゃあ、私はこれで」


 パースさんが、

「水竜の討伐だって、そりゃ俺たちにゃ無理だぜ」

「討伐は僕たちでやります。沼地の魔物についていろいろと教えて欲しいんです」

「それだけでいいのか」

「それと水竜を倒したら湖の島に行こうと思っています。船かボート、何とかなりませんか」

「そりゃ無理だ、とても運べない。筏を組むしかないな」

「筏ってどれくらいの」

「貴方たち8人が乗って、筏を操るのは俺たちがやるとすると13人乗りだな」

「いえ、僕たちは6人で行きます」

「じゃあ11人だ。それでも相当な大きさだな。バラして運ぶにしても人足がかなりいるぞ」

「丸太で作るんですよね」

「そう、丸太でいったん作って、それをバラして運ぶ」

「丸太の太さはどれくらいですか」

「30cm位かな、長さは5mとして12本ってとこか。波は無いだろうし」

「それなら大丈夫です。運ぶことは考えないで下さい。筏を注文してくれますか、現地で組み立てるのをお願いするので組み立て方も習っておいてください」

「分かった。他にすることは」

「あとは、これから魔物についてしばらく本で勉強します。いろいろと聞くかも知れないので同じ宿に泊まっていて下さい『トレーヴの麓』です」

「分かった。あそこは食事も美味しいしな、ありがたい」


 筏ができるまで2週間かかるそうだ。組み立てやすくなるように工夫もしてくれるそうだ。その2週間の間に水竜の伝説や魔物の生態を調べた。

「水竜にはやはり水と火の魔法は効かないみたいだね。攻撃は水のブレスと頭の角と尻尾の物理攻撃だね」

アルトが聞く、

「水のブレスって魔法攻撃ではないのですか」

セシリアが答える。

「ブレスは魔法攻撃と物理攻撃の混合よ。私たちには魔法攻撃が効かないから凄い水鉄砲で撃たれるようなものかな」

「もう一つ、あの身体でのしかかられたら助からないにゃん」

「50mだものね、ご主人様」

また始まった。もっと真剣に考えようよ。


 3日目にパースさんたちが来た。

「筏は順調にできています。でも、どうやって運ぶつもり何ですか」

とコリーさんが言う。

「大丈夫です。サトシ様に任せておいてください」

とアルトが言う。シェリルが

「青大蟹の弱点は分かりますか」

と聞いた。パースさんは、

「青大蟹なんて見たらすぐに撤退です」

「普通の蟹の魔物は」

「ジャイアントクラブなら腹側を攻撃すれば何とかなる」

バッセルトンも続ける。

「腹側の正中線、縦に真ん中の線だな。あそこが意外と弱い」

セシリアが、

「じゃあ下に潜るか、立たせたまま攻撃するかですね」

「下に潜ったら押しつぶされるよ。立たせたまま攻撃するのが一番さ」

「火でも大丈夫ですか」

とアルト、

「もちろんだ、火が効かないのは水の中にいる奴と水竜だけだ」


 パースさんは不安そうな表情を浮かべ、

「ひょっとして青大蟹は俺たちも一緒に戦うのか」

「いえ、戦うのは僕たちだけでいいです。少し離れたところに結界石で結界を張りますから、その中にいて下さい」

「分かった。鰐くらいなら俺たちも戦えるんだが」

と明らかにほっとした表情だ。


 2週間の間に綿密な打ち合わせをパースさんやロチャたちとした。そしていよいよ筏が完成した。


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