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4話「上へ。」

チン。


……………っ…


ノイズは……消えてる。視界も綺麗。


「生き…………てる…………」

ここは……どこ?


私は、仰向けになっている体を起こした。


そう…確か…死にかけて…

視界の端で、〈充電中〉と言う文字が点滅している。

体に力が沸いてくる。



私は、周りを見回す。



真っ白な狭い部屋。

右足にはケーブルが刺さってる。

それと…壁にある光ったボタン。

そのボタンに、私はおぼついた足取りで向かった。


歩き出すと同時に、足からケーブルが音を立てて外れた。



………ボタンに手を伸ばしたところで、私は躊躇った。



「このボタンを押したら…何が起こるんだろ?」

ドアみたいなのが開いてくれたら嬉しいんだけど……

何か良く無いことが起こるかもしれない。


………でも、このままじゃ何も変わらない。


私は、意を決してボタンを押す。



カチッ—————



私がボタンを押すと同時に、視界の端に闇が広がった。

ドアは音もなく開き、その先に続いていたのは暗い通路だった。


まるで別の世界のような、そんな空間に背筋が凍る。


私は一歩、向こうへと踏み出す。


…温度が変わったのがわかる。


グシャッ——グシャッ——グシャッ———グシャッ


奥から何か、肉が潰れるような音が聞こえる。



理由はわからない。でも………行っちゃダメな気がする。



「や…………………だ………………………」



その時。


暗闇の奥から弱々しい、か細い声が通路の奥から響く。


「………行かないと」


私は、動かない足を無理やり動かして、通路の先へと進み始めた。


カツッ———カツッ———カツッ———

機械の足で鉄でできた床を歩くたび、金属音が響く。

踏み出すたび、嫌な音が大きくなり、心の奥にある何かが大きくなっていく。


先に進みたくなくて、私は後ろを振り返った。


その時。

バキッ———————!!


一際大きい音が鳴ると、潰れるような音が止まった。


音が、消えた。



————嫌な予感がする。



その時、一際大きな空間が広がった。


「————!」

あまりに悲惨な光景に、息を呑む。

天井からは、大量に……………




私が沢山ぶらさがっている。

沢山。

全部私だ。




ポタッ———ポタッ———ポタッ———




赤色の何かが、至るところで、沢山たれている。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

血。血だ。

私は、思わず後ずさる。


グチョッ


足が、真っ赤だ。

私の、肉。

私の、体。


「あっ…あ……あ……」


ドサッ


鈍い音を立てて、目の前に大きな赤い何かが落ちる。

「私がっ、あ、あっ、あっ」

白目を剥いた私だ。

酷い匂いだ。

虫がたかっている。


血。血。血。肉。肉。骨。骨。虫。


モノクロだったはずの、私の視界が、真っ赤だ。


沢山私がいる。

沢山死んでる。


ここまで来た私が。

ここでみんなが。


「グチュッ、グチャッ、ビチャッ」


奥で、何かが、動いてる。


ゴロゴロゴロゴロ


ガン!


足に、何かが勢い良くぶつかる。

私の頭。

髪には血がこびりついている。


頭の口だけが、ゆっくり動く。


「や…………………だ………………………」


その瞬間。


パンッ———


中で爆発音がした。

私をここに連れてきた声の主は、私を置いていった。

「あ…あ…あ…あ…」

視界が歪む。

涙が、床の血に混ざる。


その時。

目の前に落ちた私が浮かび上がった。

天井に、まるで洗濯物かのようにかけ直された。

私を持ち上げていた機械のアームは、こちらをみている。


反射的に、私の体が動いた。


バキッ


バシャッ


反射的に、私の体が動いた。でも、遅かった。


次の瞬間、鉄のアームが私の足を容赦なくへし折った。視界が反転し、床に広がる腐った血が口いっぱいに流れ込む。


「おえっ———」


吐くものなんてない。

アームが、またこっちを向いてる。

その時。


バキッ


ドシャッ


アームが吹き飛んだ。

部屋の壁に叩きつけられ、黒煙が立ち上っている。


「助かった……の?」


その時、目の前の血溜まりに黒いのが広がった。

黒色の絵の具のようなものが、上から落ちてきている。


「な………に—————」


視線を上げた私は、そこで固まった。

サメのようなものが上にいる。


目が沢山ある。


見たことのある目。


口や目から、黒色の何かが垂れてる。


歯には乾いた血と、まだ濡れた血がこびりついてる。


悪夢?


なるほどね。


あの時、私死んだんだ。


きっとそう。


そうでしょ?


カチャッ


その時。

手に何か硬いものが触れた。


————銃。


やることはわかってる。


でも。


急かすように、銃からは絶えず血が滴り落ちている。

これを撃っちゃったら……きっと、これから沢山辛い目に遭うことになる気がする。


死にたくない。死にたくないけど…

…………生きたいとは思えない。


死にたくない………か。

…あの時より、私、成長できてたのかな?

生きたいと思えなくても………

死にたくないなら、答えは一つ。


チャキッ


「諦めるのなら、いつでもできるもんね」


もし、次、私が、諦めたくなった時。



死にたいって、思えますように。







———◇———









目の前には、手のマークがある、重々しい扉があった。

……あの時と一緒だ。

銃を左手の方に移して、空いた右手をかざす。


音もなく扉が開いて、いつもの景色が目の前に広がる。


私は、後ろを振り返る。


でも、それは先に進みたくないわけじゃない。


今までのことを噛み締めるため。


足は替えた。


銃もある。


追い風もある。


完璧。


「じゃあ………いこっか」


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