フェン視点短編 「止まらなかった剣が、止まった日」
お読みいただきありがとうございます。
今回は本編とは少し視点を変えて、
獣人剣士フェンの内側から描いた短編です。
本編では語られなかった
「なぜ暴走していたのか」
「止められた瞬間、何を感じたのか」
を中心に書いています。
本編と合わせて楽しんでいただければ嬉しいです。
剣を振っている間は、楽だった。
考えなくていい。
止まらなくていい。
全部、斬ればいい。
それだけで、生きてこれた。
強い。
そう言われるのは嫌いじゃない。
でも、その言葉の後には、決まって続きがある。
――「近づくな」
――「制御できないなら、危険だ」
――「使えない」
結局、私はいつも一人だった。
今回も、同じだと思っていた。
魔物を斬った。
冒険者も巻き込んだ。
頭が熱くなって、視界が赤く染まっていく。
ああ、まただ。
また止まれない。
そう思った瞬間――
世界が、急に静かになった。
剣が、重い。
心臓の音が、うるさいくらいはっきり聞こえる。
「……あ?」
膝をついた自分の姿が、やけに他人事だった。
目の前にいたのは、
剣も抜いていない男。
鑑定士。
最初に思ったのは、
こいつ、死にたいのか?
だった。
なのに。
不思議と、斬ろうとは思わなかった。
頭が、静かだった。
ずっと鳴り続けていた雑音が、
嘘みたいに消えている。
「……何をした」
そう聞いた声が、
思ったより普通で、少し戸惑った。
男は、淡々と答えた。
「止めただけだ」
――止めた?
そんなこと、できる奴がいるのか。
私は“強すぎる”からダメなんじゃない。
“止める仕組みがない”だけだ。
それを、
こいつは――一瞬で見抜いた。
気づいた時には、
私は剣を収めていた。
理由は、分からない。
ただ、この男の前では、
暴れなくていい気がした。
「条件がある」
そう言われた時、
正直、少し笑いそうになった。
今まで条件を出される側だった私が、
選ばれる側になるなんてな。
「俺の指示に従え」
悪くない。
命令じゃない。
管理だ。
それが、妙に心地よかった。
名前を名乗った時、
隣にいたエルフの少女が、私を見ていた。
静かで、強い目。
ああ、なるほど。
ここは――
一人で立つ場所じゃない。
剣が止まるってことは、
弱くなることじゃなかった。
初めて、そう思えた。
だから私は、歩き出す。
鑑定士の後ろを。
今度こそ、
“壊さない強さ”を持つために。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
フェンは
強いけれど、制御できない
危険だけど、切り捨てられてきた
そんなキャラクターです。
今回の短編では、
彼女にとって
「止められること=弱さではない」
という気づきを描いています。
この後の本編では、
フェンが正式に鑑定され、
仲間としてどう変わっていくのかが描かれていきます。
よろしければ、
「フェン推し」「この視点よかった」など、
感想をもらえるととても嬉しいです。
引き続き、本編もよろしくお願いします!




