エピローグ 「鑑定されない未来」
記録には、
残らなかった。
管理ログにも、
調整履歴にも、
神の注釈にも。
それでも――
世界は、
確かに変わっている。
避難所だった場所には、
いま、
市場がある。
仮設の屋台。
歪な配置。
誰が決めたわけでもない導線。
だが、
人は集まり、
物は巡り、
声が交わる。
「……不思議だな」 誰かが言う。 「前は、 こんな風じゃ なかったのに」
理由は、
誰も知らない。
正解も、
最適解も、
後から説明されない。
ただ――
“そうなった”。
少し離れた場所で、
一人の鑑定士が
それを見ている。
鑑定は、
していない。
する必要が、
ないからだ。
見える歪みは、
相変わらずある。
小さな不具合も、
消えてはいない。
だが――
それを即座に
「直す」存在は、
もういない。
代わりに、
人が動く。
誰かが拾い、
誰かが支え、
誰かが引き継ぐ。
効率は、
悪い。
再現性も、
ない。
それでも、
終わらない。
鑑定士は、
目を閉じる。
もう、
答えは見ない。
見えるのは、
結果だけだ。
それで、
十分だった。
世界は、
今日も
誰にも鑑定されずに
進んでいる。
この物語の世界は、
完璧にはなりません。
安全にも、
合理的にもなりきれません。
それでも、
続いています。
理由を失っても、
選択が残ったから。
ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございました。
この世界は、
あなたがページを閉じた後も
少しだけ、
勝手に進み続けます。
――終。




