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第59話 「例外の再来――観測者は、触れてみる」

お読みいただきありがとうございます。

第59話は、

未知が“見ているだけ”を

やめる回です。

それは干渉ではありません。

ですが、

世界の前提を

一つだけ外します。

世界は、

 落ち着いていた。

 新しい調整側は

 迷わず動き、

 修正は即時、

 犠牲は最小。

 数値は、

 理想的だ。

 ――理想的すぎる。

 「……安定度、  過去最高値です」

 ルークの報告に、

 誰も喜ばなかった。

 俺だけが、

 嫌な感覚を

 引きずっている。

 「……来る」

 理由はない。

 確信だけがある。

 次の瞬間――

 空気が、

 “抜けた”。

 音が消えたわけじゃない。

 圧が消えたわけでもない。

 ただ、

 世界が一拍、

 遅れた。

 「……何?」  新しい調整側が、  即座に反応する。  「時間同期に、  微差――」

 言葉の途中で、

 その声が

 止まった。

 背後に、

 気配。

 振り向くと――

 あの男がいた。

 「やあ」  軽い調子。  「ちょうど、  静かで良かった」

 「……観測者」  俺は、  歯を噛みしめる。

 「今日は、  見るだけじゃない」  男は、  笑う。  「ちょっと、  触ってみる」

 新しい調整側が、

 即座に警告を出す。

 「管理外存在」  「即時離脱を――」

 男は、

 指を鳴らした。

 ――それだけ。

 世界が、

 “止まった”。

 完全停止ではない。

 神も、

 調整側も、

 人も――

 存在は続いている。

 だが、

 “次の処理”が

 来ない。

 【鑑定結果】

 対象:世界進行

 状態:未更新

 備考:外部参照、上書き中

 ……上書き?

 「……何をした」  俺が問う。

 「順番を」  男は、  肩をすくめる。  「一つ、  入れ替えただけ」

 「原因より先に、  結果を置いた」

 新しい調整側が、

 初めて

 動揺を見せる。

 「……不可能です」  「結果は、  原因が  存在して初めて――」

 「世界の話でしょ?」  男は、  遮る。  「僕は、  世界の外」

 言葉が、

 重い。

 「……つまり」  俺は、  ゆっくり言う。  「世界が、  “まだ起きていない結果”を  前提に  動いている」

 「正解」  男は、  楽しそうに言った。  「ね?  簡単に  ズレるでしょ」

 数値が、

 揺らぐ。

 安定度が

 下がっていないのに、

 修正ログが

 増え始める。

 「……対応不能」  新しい調整側が、  はっきり言った。  「この状態は、  想定外です」

 想定外。

 それが、

 世界の弱点だ。

 「安心して」  男は、  俺を見る。  「壊しはしない」

 「ただ――」

 一歩、

 俺に近づく。

 「君が  選ぶ前提を、  一つ  消してみた」

 胸が、

 嫌な音を立てる。

 「……何を」

 「“必ず後悔する”って  前提」  男は言う。  「それ、  世界が  君に押し付けてる」

 新しい調整側が、

 即座に否定する。

 「感情評価は、  制御対象外」  「後悔は、  個体の  副次反応――」

 「そう」  男は頷く。  「でも、  世界は  “後悔がある前提”で  均してる」

 均す。

 帳尻。

 「それを」  男は、  静かに言う。  「一回、  外した」

 世界が、

 “次”を  決められずにいる。

 初めて見る光景だった。

 「……戻す」  新しい調整側が、  処理を開始する。  「この例外は――」

 「戻せないよ」  男は、  あっさり言った。  「原因が、  まだ  起きてないから」

 因果が、

 逆転している。

 世界は、

 それを  修正できない。

 「……なんで」  俺は、  問いを絞り出す。  「こんなことを」

 男は、

 少しだけ  真面目な顔になった。

 「君が」  「“それでも選ぶ”って  知りたいから」

 次の瞬間――

 時間が、  “続いた”。

 世界は、

 動き出す。

 何事も  なかったかのように。

 だが――

 確実に  一つ、  戻らないものがある。

 【鑑定結果更新】

補足:世界進行

前提条件:一部欠落

 欠落。

 それは、  エラーじゃない。

 “削除”だ。

 男の姿は、

 もうなかった。

 新しい調整側が、

 低い声で言う。

 「……鑑定士」  「今のは、  記録不能です」

 「だろうな」  俺は、  息を吐く。

 だが――

 俺は、

 確かに  感じていた。

 世界が、

 俺の選択を  “先読み”できなくなった  感覚を。

ここまでお読みいただき、

ありがとうございます。

観測者は、

世界を壊していません。

ルールも破っていません。

ただ、

「そうなるはずだ」という

前提を

一つ消しました。

世界は、

前提の上で動く構造です。

それを失った瞬間、

最適解は

最適でなくなります。

次話、

主人公は

初めて

“世界に先回りされない選択”を

迫られます。

それが、

救いになるかどうかは――

まだ分かりません。

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