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第58話 「名を持たない観測者」

お読みいただきありがとうございます。

第58話は、

これまでのどの存在にも

当てはまらない者が

現れる回です。

管理者でも、

調整者でも、

例外でもありません。

ただ――

見ている者です。

最初に気づいたのは、

 俺だった。

 鑑定じゃない。

 違和感ですらない。

 「……誰か、  いるな」

 言葉にした瞬間、

 新しい調整側が

 即座に反応した。

 「該当データなし」  「周辺領域に  未登録個体は  存在しません」

 即答。

 完璧。

 だからこそ――

 俺は、

 確信した。

 「……世界に  記録されてない」

 空気が、

 わずかに揺れる。

 その“隙間”から、

 人影が

 滲むように現れた。

 「へえ」  軽い声。  「やっぱり、  気づくんだ」

 若い男だった。

 年齢は、

 二十前後。

 だが――

 立ち位置が

 おかしい。

 遮断も、

 制限も、

 世界の圧も――

 一切、

 影響していない。

 「……あなたは」  新しい調整側が、  即座に距離を取る。  「識別情報を――」

 「ないよ」  男は、  あっさり言った。  「作ってないから」

 作っていない。

 作られていない、

 ではない。

 「……世界の  外の存在か」  俺が問う。

 男は、  少し考えてから  首を振った。

 「外でもない」  「内でもない」

 「強いて言うなら――」

 一歩、

 こちらに近づく。

 世界が、

 一瞬だけ  止まる。

 「“観測者”」

 【鑑定結果】

 対象:???

 状態:未定義

 備考:世界参照外

 ……初めて見る表示だ。

 「君たちが  必死で  守ってる“世界”」  男は言う。  「思ったより  脆いね」

 「……何が  目的だ」  俺は、  即座に問う。

 「目的?」  男は、  きょとんとする。  「ないよ」

 「ただ」  「面白くなってきたから  見に来ただけ」

 新しい調整側が、

 即座に  警告を発する。

 「危険度、  測定不能」  「管理外存在です」

 「でしょ?」  男は笑う。  「だから、  ここにいる」

 世界は、

 彼を  掴めない。

 神の気配も、

 介入しない。

 まるで――

 “想定に  入っていない”かのように。

 男は、  俺を見る。

 「ねえ、鑑定士」  「君、  自分が  最後の異物だと  思ってる?」

 心臓が、

 一拍、  遅れた。

 「……違うのか」

 「違う」  男は、  即答した。  「君は、  “最初の例”」

 「これから」  「同じものが  増える」

 増える。

 その言葉が、

 空気を  冷やす。

 「世界は、  正しさを  選びすぎた」  男は続ける。  「だから、  正しさに  収まらないものが  生まれる」

 俺は、  静かに息を吐いた。

 「……お前は、  味方か」

 男は、  肩をすくめる。

 「観測者に  味方はない」  「でも――」

 少しだけ、

 声を落とす。

 「君が  どう壊すかは、  楽しみにしてる」

 次の瞬間――

 男の姿が、  揺らぎ、  消えた。

 世界は、

 何も  修正しなかった。

 それが、

 何よりの  異常だった。

 【鑑定結果更新】

 警告:未定義存在、観測中

 観測中。

 把握ではない。

 排除でもない。

 ただ――

 遅れている。

 新しい調整側が、

 低い声で言う。

 「……鑑定士」  「今のは、  記録すべき  事象ではありません」

 「そうだな」  俺は、  静かに答えた。

 「でも」  「もう、  見られてる」

 世界に。

 神に。

 そして――

 “世界の外から”。

ここまでお読みいただき、

ありがとうございます。

新キャラは、

敵でも、味方でもありません。

世界のルールそのものに

属していない存在です。

それは、

これまでの問題が

すべて「世界の内部」で

起きていたという意味でもあります。

次話、

世界は

この“未定義”を

どう扱うかを

決められません。

そして、

決められないこと自体が

最大の危機になります。

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