表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/70

第49話 「彼女の役割――世界を円滑に壊す者」

お読みいただきありがとうございます。

第49話は、

新しく現れた存在が

何者なのかではなく、

何をしている存在なのかが

少しだけ見える回です。

理解できるほど、

安心できなくなります。

その感覚を

味わっていただければ幸いです。

「……あなた」  俺は、  彼女を見る。  「“調整側”って言ったな」

 女は、  遮断区域の外――  歪みが押し出された先を  眺めたまま答えた。

 「ええ」

 否定しない。

 「世界は、  完璧じゃない」  女は続ける。  「だから、  常にズレる」

 「そのズレを、  神が  全部見て回るのは  非効率」

 効率。

 何度も聞いた言葉だ。

 「だから」  女は、  こちらを見る。  「私みたいなのがいる」

 【鑑定結果】

 対象:調整側個体

 状態:世界機構補助

 備考:直接介入は限定的

 補助。

 主ではない。

 だが――

 無視もできない。

 「……世界を、  守るためか」

 「違うわ」  女は、  即答する。  「“回す”ため」

 その言い方に、  ぞっとする。

 「守るかどうかは、  優先度の話」  「でも、  止まるのは  一番困る」

 「止まらなければ、  犠牲は  出続ける」

 「出るわ」  女は、  淡々と言った。  「必ず」

 否定の余地も、  躊躇もない。

 「……じゃあ」  俺は、  歯を噛みしめる。  「俺は何だ」

 「例外」  女は、  少しだけ  考えてから答えた。  「それも、  面倒なやつ」

 面倒。

 だが――

 切られない。

 「あなたは、  ズレを  “見てしまう”」  「だから、  完全に排除すると  逆に困る」

 「だから、  管理下に  置いた」

 俺は、  視界の端に  浮かぶ表示を見る。

 【状態】

 管理制限:有効

 行動裁量:低

 優先度:未定

 未定。

 評価中。

 「……つまり」  俺は言う。  「俺は、  便利な  警告装置か」

 女は、  小さく笑った。

 「自分で言う?」  「まあ、  否定はしないけど」

 その軽さが、  逆に  重い。

 「でも」  女は続ける。  「あなた、  想定より  厄介よ」

 「感情で  動くから」

 遮断区域の  住民たちが、  脳裏をよぎる。

 「だから」  女は、  俺を見据える。  「次からは、  制限を  はっきりかける」

 「……どんな」

 「一度に  一箇所だけ」  「他は、  見えても  触らない」

 世界の帳尻を、  一人で  壊されると  困るらしい。

 「……拒否権は」

 「ないわ」

 即答だった。

 「受け入れなければ」  女は、  淡々と言う。  「次は、  本当に  修正される」

 消される。

 それを、  遠回しに  言っている。

 俺は、  目を閉じる。

 選択肢は、  最初から  一つしかない。

 「……分かった」

 目を開ける。

 「でも」  俺は、  はっきり言った。  「見捨てない」

 女は、  一瞬だけ  驚いた顔をして――  すぐに  元に戻した。

 「でしょうね」  「だから、  まだ使う」

 使う。

 それが、  彼女の結論だった。

 世界は、  今日も  回っている。

 犠牲を  内側に抱えたまま。

 その歪みを、  俺は  見続ける。

 見える限り。

ここまでお読みいただき、

ありがとうございます。

謎の女は、

敵ではありません。

ですが、

味方でもありません。

世界を

“うまく壊れ続けさせる”

ための存在です。

主人公は、

正しさを選びました。

その結果、

世界に組み込まれました。

ここから先、

彼は

自由に動けません。

それでもなお、

「見る」ことだけは

止まりません。

それが、

世界にとって

最大の不確定要素です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ