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第48話 「猶予の代償――異変は加速する」

お読みいただきありがとうございます。

第48話は、

与えられた猶予が

決して“無料”ではなかったことが

明らかになる回です。

守れたものと、

引き換えに生まれたもの。

その釣り合わなさを

感じていただければ幸いです。

違和感は、

 すぐに来た。

 世界の圧が、

 弱まった直後――

 空気が、

 妙に軽い。

 「……おかしい」

 俺は、  即座に  目を使った。

 【鑑定結果】

 対象:遮断区域(内部)

 状態:安定

 備考:修正負荷、外部転嫁中

 外部。

 嫌な言葉だ。

 「……何が  起きてる」  フェンが、  通信越しに訊く。

 「安定してる」  俺は答える。  「でも、  ここじゃない」

 足元の歪みは、

 確かに  薄れている。

 倒れかけていた柵は、  止まり。  空気の滞りも、  和らいでいる。

 「……助かったのか」  住民の一人が、  小さく言う。

 その声に、

 胸が痛んだ。

 「……一時的には」  俺は、  正直に答えた。

 次の瞬間――

 通信が割り込む。

 「……鑑定士!」  リリスの声が、  明らかに切迫している。  「遮断区域“外”で、  異常が……!」

 嫌な予感が、  確信に変わる。

 「場所は」

 「管理棟周辺」  「数値が、  急激に  振れています!」

 俺は、  理解した。

 世界は、  “均した”。

 ここを守るために、

 別の場所を  歪ませた。

 【鑑定結果更新】

 備考:安定維持のため、

    負荷分散処理実行中

 分散。

 つまり――

 押し付け。

 「……神じゃない」  俺は、  呟く。  「これは、  “調整側”のやり方だ」

 謎の女の、  顔が浮かぶ。

 「……来て」  アリアの声が、  震える。  「こちら、  抑制が  追いつきません」

 「人は」  俺が問う。

 「……避難は  進めています」  「でも……」

 でも。

 言わなくても、  分かる。

 猶予の代償は、

 誰かが  払う。

 「……俺が」  俺は言う。  「調整する」

 「それ以上やれば」  リリスが、  止めようとする。  「あなた、  本当に――」

 「分かってる」

 分かっている。

 俺はもう、

 “自由な鑑定士”じゃない。

 世界は、  俺の行動を  材料にする。

 だが――

 今は、  止める。

 目を使う。

 遮断区域“外”の  歪みを――

 引き戻す。

 世界が、

 一瞬、

 躊躇する。

 「……っ」

 頭が、  割れるように痛む。

 【警告】

 管理逸脱率、上昇

 次回修正、不可避

 それでも、

 手は止めない。

 「……鑑定士!」  誰かの叫び。

 次の瞬間――

 世界が、

 “決めた”。

 圧が、

 戻る。

 だが――

 俺だけにだ。

 【状態更新】

 管理制限:強化

 行動範囲:限定

 視界が、  狭まる。

 「……やりすぎ」  背後で、  女の声がした。

 振り向くと――

 彼女がいる。

 「猶予は、  無限じゃない」  女は、  淡々と言う。  「一箇所守れば、  別が壊れる」

 「……分かってる」  俺は、  息を整えながら言う。  「でも、  見捨てられなかった」

 「でしょうね」  女は、  否定しない。  「だから、  あなたを  拾った」

 拾った。

 その言い方が、

 妙に  引っかかった。

 「覚えておきなさい」  女は続ける。  「あなたが  守った分だけ」

 「世界は、  別の形で  帳尻を合わせる」

 それが――

 猶予の代償。

 遮断区域は、

 今も  安定している。

 だが――

 世界全体は、  少しだけ  歪んだ。

 それを、  元に戻せるかどうか。

 答えは――

 まだ、  出ていない。

ここまでお読みいただき、

ありがとうございます。

主人公の行動は、

間違ってはいません。

ですが、

世界にとっては

“効率が悪い”。

守った場所があれば、

歪みは

別の場所に移ります。

それが、

世界の選んだ

公平です。

次話、

主人公は

「助ける存在」ではなく、

「調整の一部」として

扱われ始めます。

それでもなお、

彼は

見ることを止めません。

それが、

最大の問題です。

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