表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/71

第41話 「それでも、世界は止まらない」

お読みいただきありがとうございます。

第41話は、

解決も、逆転もありません。

判断は行われ、

結果が出ただけです。

その重さを

受け取っていただければ幸いです。

判断は、

 静かに下された。

 会議室ではない。

 命令でもない。

 現場だった。

 「……やります」

 若い管理員の声は、

 震えていなかった。

 「抑制を待っていたら」  「この区域は、  生活が止まります」

 フェンが、

 一瞬だけこちらを見る。

 俺は、

 何も言わなかった。

 言えなかった。

 【鑑定結果】

 対象:区域E 更新作業

 状態:非推奨

 備考:高確率で拒否反応発生

 見えている。

 はっきりと。

 だが――

 それを止める言葉が、

 なかった。

 「……鑑定士?」  アリアが、  確認するように呼ぶ。

 俺は、

 一拍遅れて答えた。

 「……止めた方がいい」

 それだけだった。

 強く言わなかった。

 命令もしなかった。

 その時点で、

 もう分かっていた。

 「承知しました」  管理員は、  静かに頷く。  「責任は、  現場で取ります」

 その言葉が、

 決定だった。

 作業は、

 始まった。

 抑制処理が、

 間に合わない。

 世界が、

 拒否する。

 空気が、

 重くなる。

 地面が、

 歪む。

 「……来る」

 俺が言った時には、

 もう遅かった。

 鈍い音。

 短い悲鳴。

 そして――

 沈黙。

 「……倒壊」  通信が、  切れ切れに入る。  「二名、下敷き」  「……一名、  反応ありません」

 時間が、

 止まる。

 誰も、

 すぐには  言葉を発せなかった。

 「……死亡確認」

 その報告は、

 淡々としていた。

 一名。

 たった一名。

 それだけで、

 十分だった。

 世界は、

 壊れていない。

 だが――

 取り返しは、  つかなくなった。

 「……俺が」  フェンが、  低く呟く。  「止めるべきだった」

 「違う」  俺は言う。  「誰でも同じだ」

 責任を、

 押し付け合う声はない。

 怒号もない。

 ただ、

 理解だけが残った。

 鑑定は、

 正しかった。

 だが――

 それは、  守れなかった。

 【鑑定結果更新】

 備考:修正確定

 警告:以降、猶予なし

 猶予なし。

 その文字が、

 視界に焼き付く。

 「……これで」  アリアが、  かすれた声で言う。  「もう、  戻れませんね」

 俺は、

 頷いた。

 否定できなかった。

 世界は、

 止まらない。

 正しさも、

 待ってはくれない。

 ただ――

 犠牲を、  受け入れながら  進むだけだ。

ここまでお読みいただき、

ありがとうございます。

今回の死は、

世界が壊れた結果ではありません。

人が、

正しいと分かっていながら

別の選択をした結果です。

鑑定は間違っていません。

主人公も、

間違っていません。

それでも、

人は死にました。

ここから先、

「正しさ」は

守ってくれるものではなくなります。

それでも

主人公は、

見えてしまいます。

それが、

本当の地獄の始まりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ