第33話 「合理の微笑――彼女は“善意で踏み込む”」
お読みいただきありがとうございます。
第33話では、
新ヒロイン――
民間管理会社の現地統括責任者、
アリアが登場します。
彼女は敵ではありません。
ですが、味方とも限りません。
そんな立ち位置の人物として描いています。
楽しんでいただければ嬉しいです。
民間管理会社は、
言葉どおり“試しに”動いた。
未管理領域の中心ではない。
境界の、さらに外側。
「安全」と判断された場所から。
「……始まってますね」
セリアが、
遠眼鏡を下ろす。
簡易宿舎。
整備された道。
資源集積所。
無駄がなく、
よく考えられている。
「正直、
現場運用としては
優秀だな」
フェンが、
率直に言った。
否定しづらい。
だから――
嫌な予感がする。
「失礼します」
その声は、
静かで、よく通った。
振り向くと、
一人の女性が立っていた。
王国の紋章はない。
だが、
無駄のない服装。
目は鋭く、
口元は柔らかい。
「私は、
《エリア・ロジック》
現地統括責任者の
アリア・ヴェルナーです」
――来たな。
「あなたが、
未管理領域の
現場責任者ですね?」
視線が、
まっすぐ俺を捉える。
逃げ場のない目だ。
「……鑑定士だ」
俺が答えると、
アリアは、
興味深そうに微笑った。
「やはり」
「報告書、
すべて拝見しました」
セリアの眉が、
わずかに動く。
「再編前も?」
「ええ」
アリアは、
あっさり頷く。
「削られた部分も含めて」
フェンが、
低く言う。
「……それで、
あの運用か?」
「はい」
即答だった。
「私たちは、
世界を管理しません」
アリアは、
穏やかに言う。
「ですが――
人の生活は、
管理しなければ守れない」
綺麗な理屈だ。
正しい。
「未管理領域が
危険なのは事実です」
「王国は、
判断を先延ばしにした」
「ならば、
生活の部分だけを
先に整える」
「それの、
何が悪いのでしょう?」
真正面からだ。
「……世界が、
嫌がる」
リリスが、
小さく言った。
アリアは、
一瞬だけ、
彼女を見る。
そして――
少しだけ、
真剣な顔になった。
「ええ」
「分かっています」
その返事に、
空気が変わる。
「嫌がるから、
触らない?」
「それとも、
嫌がっても、
守るべき人を
守る?」
問いは、
重い。
「あなたは」
俺は、
彼女を見る。
「世界を、
どう扱うつもりだ?」
アリアは、
少し考えてから答えた。
「……取引、です」
世界と。
「無理はしない」
「壊さない」
「でも、
利益は得る」
フェンが、
口を開く。
「ずいぶん、
正直だな」
「隠しても、
無駄でしょう?」
アリアは、
そう言って微笑う。
その笑みは、
敵意がない。
だが――
引く気もない。
セリアが、
静かに言う。
「あなたは、
危険です」
アリアは、
否定しなかった。
「ええ」
「合理的な人間は、
いつだって
危険です」
視線が、
俺に戻る。
「鑑定士さん」
「あなたは、
世界を守る人」
「私は、
人を守る人」
「――協力できますか?」
協力か。
それとも、
対立か。
この女は、
悪役じゃない。
だが――
間違えれば、
世界を壊す。
「……条件次第だ」
俺は、
そう答えた。
アリアは、
嬉しそうに笑った。
「ええ」
「その言葉を、
待っていました」
新しいヒロインは、
剣も、
魔法も使わない。
だが。
数字と善意で、
世界を動かす女だった。
そして――
一番、
手強いタイプだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
アリアは、
世界を壊したいわけでも、
私利私欲だけで動いているわけでもありません。
彼女は、
「人の生活を守るために、合理的な判断をする」
タイプの人間です。
だからこそ、
世界と真正面からぶつかる可能性を秘めています。
・世界を守る主人公
・制度を守る王国
・生活を守る民間
この三つが交錯していきます。
次話では、
アリアが具体的な提案を持ち込み、
物語が一気に動き始めます。
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