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第25話 「暫定指示――早すぎて、遅すぎる」

お読みいただきありがとうございます。

第25話は、

王国からの暫定指示が届き、

現場が最も嫌な形で動かされる回です。

正解を出すより、

間違えないことが難しくなってきました。

楽しんでいただければ嬉しいです。

王国からの指示は、

 その日の正午に届いた。

 封蝋付き。

 正式文書。

 「……来たか」

 フェンが、短く言う。

 セリアは、無言で封を切った。

 視線が、紙の上を走る。

 そして――

 一度、目を閉じた。

 「……暫定指示、です」

 嫌な予感しかしない。

 「内容は?」

 俺が問うと、

 セリアは淡々と読み上げた。

 「未管理領域について」

 「第一に、

  暫定安定化は“成功例”として扱う」

 「第二に、

  同様の手法を他領域にも適用するため、

  手順を文書化せよ」

 「第三に――」

 そこで、一拍置く。

 「現場判断は、

  王国指定の監督官の承認を要する」

 沈黙。

 風の音が、

 やけに大きく聞こえた。

 「……つまり?」

 フェンが、低く言う。

 「今のやり方は、

  “使える”って判断された」

 「ええ」

 セリアは、頷く。

 「ですが――

  “現場主導”ではなくなります」

 ルークが、

 言葉を探すように口を開く。

 「手順化……

  つまり、再現を前提に?」

 「その通りです」

 セリアは、

 視線を紙から離さない。

 「個別判断を排除し、

  成果を安定させたい」

 「……最悪だな」

 フェンが、はっきり言った。

 「今、世界が“選ぼうとしてる”

  その時に?」

 その通りだ。

 早すぎる。

 だが――

 同時に、遅すぎる。

 「……鑑定」

 俺は、目を使う。

 

 【鑑定結果】

 対象:暫定安定化区域

 状態:変化加速

 備考:管理判断待機状態

 

 管理判断待機。

 まるで――

 返事を待っているみたいだ。

 「世界は、

  もう一段階、

先に行ってる」

 俺は、低く言う。

 「今さら、

“成功例”に固定したら――」

 「止まるか、

反発する」

 リリスが、

 静かに言った。

 「……今の世界は、

見られることを受け入れました」

 「ですが、

指示されることには、

まだ慣れていません」

 その違いを、

 文書は理解していない。

 「ルーク」

 俺は、彼を見る。

 「この指示、

そのまま通すとどうなる?」

 ルークは、

 唇を噛みしめた。

 「……現場は、

動けなくなります」

 「承認待ちが増え、

判断が遅れ」

 「“判断される前提”の世界に、

事故が起きる可能性が高い」

 正解だ。

 「セリア」

 「はい」

 「この指示、

法的には?」

 彼女は、即答した。

 「拒否権はありません」

 「暫定とはいえ、

王国命令です」

 フェンが、

 舌打ちする。

 「詰んでねぇか?」

 「いいえ」

 セリアは、

 紙を置いた。

 「まだ、

抜け道はあります」

 全員の視線が、

 彼女に集まる。

 「“手順を文書化せよ”」

 「つまり――」

 彼女は、

 ゆっくり言った。

 「文書化できない部分を、

明確にする」

 なるほど。

 「再現不可能」

 「現場依存」

 「判断に鑑定士と管理者の立ち会いが必須」

 「条件が揃わなければ、

実施不可」

 「……それ、

上が嫌うやつだな」

 フェンが笑う。

 「ええ」

 セリアも、

 微笑った。

 「ですが、

嘘ではありません」

 リリスが、

小さく頷く。

 「世界も、

それを望んでいます」

 「急がれすぎると、

拒否します」

 俺は、深く息を吸う。

 王国の指示は、

早すぎて、

遅すぎる。

 だが――

まだ、終わりじゃない。

 「……やろう」

 俺は、言った。

 「正直な文書を書く」

 「“使える方法”じゃない」

 「“使うと危険な理由”の報告書だ」

 それは、

王国への挑戦でもあり、

最後のブレーキでもある。

 世界は、

返事を待っている。

 王国も、

判断しようとしている。

 その間に、

できることは一つ。

 見誤らせないこと。

 鑑定士の役目は、

ますます厄介になった。

 だが――

引き受けるしかない。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

暫定指示は、

一見すると合理的です。

ですが――

・世界の反応は進んでいる

・現場は流動的

・手順化は固定を生む

この三つが重なった時、

“正しい指示”は一気に危険になります。

次話では、

文書化作業そのものが

世界にどう影響するのかが描かれます。

よろしければ、

引き続きブックマーク・評価・感想で応援していただけると励みになります。

よろしくお願いします!

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