第22話 「報告――揺れる王国」
お読みいただきありがとうございます。
第22話は、
現場で起きた出来事が
王国全体に波紋を広げていく回です。
戦闘でも異常でもなく、
“報告”が世界を動かす。
そんなフェーズに入りました。
楽しんでいただければ嬉しいです。
報告は、三通に分けて提出された。
一つは、第三管理課から。
一つは、監査局から。
そしてもう一つは――
現場記録として、ルーク個人の名で。
内容は、ほぼ同じだった。
未管理領域の暫定安定化。
拡大停止は確認。
ただし、副作用あり。
再現性なし。
強行すれば、重大事故の可能性。
成功とは言えない。
その一文が、
王国中枢の空気を変えた。
「……事故未遂、だと?」
会議室で、重臣の一人が声を荒げる。
「なぜ、そんな重要な事を
もっと早く報告しなかった!」
「“未遂”だからです」
静かに答えたのは、
監査局の上官だった。
「ですが、
再発すれば確実に死者が出る」
別の声が割り込む。
「ならば尚更、
管理権限を強化すべきだ」
「現場に裁量を与えすぎている!」
議論は、すぐに二つに割れた。
制御を強めるべき派。
慎重に様子を見るべき派。
どちらも、
王国のためを思っている。
だからこそ、
結論が出ない。
一方、その頃。
未管理領域の仮設拠点は、
驚くほど静かだった。
「……上、荒れてるな」
フェンが、簡単な昼食をかじりながら言う。
「ええ」
セリアは、
届いた通達を畳む。
「正式な決定は、
まだ出ていません」
「ですが、
この件は“政治案件”になりました」
それは、
悪い知らせでもあり、
良い知らせでもあった。
「即座に解体、
ってわけじゃねぇんだな」
フェンの言葉に、
セリアは小さく頷く。
「事故未遂の詳細報告が、
効きました」
「強行すれば、
責任問題になる」
ルークは、
少し硬い表情で立っていた。
「……私の報告が、
波紋を広げてしまいましたか」
「広げた」
俺は、正直に答える。
「でも、それでいい」
「知られないまま進む方が、
もっと危険だ」
ルークは、
少しだけ肩の力を抜いた。
「王国から、
私に対する評価は下がるでしょう」
「たぶんな」
フェンが、あっさり言う。
「でも、
現場の評価は上がった」
その一言で、
ルークは苦笑した。
リリスが、
遠くを見つめて言う。
「……世界が、
少し、緊張しています」
「でも、
怒ってはいません」
「“見られている”ことを、
意識している感じです」
王国。
制度。
評価。
それらが動き出したことで、
世界そのものも、
静かに身構えている。
「次に来るのは、
命令か、
それとも――」
セリアは、言葉を切った。
「視察、ですね」
その場に、
重い沈黙が落ちる。
視察とは、
“見る”ための行為だ。
だが同時に――
決めるための前段階でもある。
「……来るな」
フェンが、ぼそりと言う。
「来るさ」
俺は、否定しなかった。
避けられない。
むしろ――
逃げるべきじゃない。
「ルーク」
「はい」
「次は、
見られる側になる」
「記録じゃなく、
判断が」
彼は、真っ直ぐ頷いた。
「……覚悟しています」
王国は、揺れている。
だが、
まだ決めきれていない。
その“間”に、
何が起きるか。
未管理領域よりも、
人の意思の方が、
よほど不安定だ。
鑑定士として、
俺にできることは一つ。
見誤らないこと。
世界も、人も。
それだけは――
絶対に、外さない。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
未管理領域は、
もう現場だけの問題ではありません。
・制度
・評価
・責任
・政治
それらが絡み合い、
簡単には引き返せない状況になりました。
次話では、
王国から視察団が到着し、
現場は“見られる側”になります。
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