第18話 「介入――王国が動く理由」
お読みいただきありがとうございます。
第18話は、
未管理領域そのものではなく、
それを“どう扱うか”を巡る立場の違いが前面に出る回です。
現場・制度・効率。
それぞれの正しさが、同時に存在しています。
楽しんでいただければ嬉しいです。
「介入――王国が動く理由」
王国の動きは、早かった。
あまりにも。
未管理領域の仮設拠点に、
見慣れない馬車が並んだのは、
副作用が確認されてから、わずか二日後のことだった。
「……来たな」
フェンが、低く呟く。
装飾過多な馬車。
紋章付きの外套。
護衛の人数も、明らかに多い。
「王国中枢です」
セリアが、表情を引き締める。
「“成功事例”として、
この件が報告に上がりました」
成功。
その言葉に、
胸の奥が、嫌な音を立てた。
馬車の扉が開く。
降りてきたのは、
年配の男と、数名の補佐官。
立ち居振る舞いだけで分かる。
――現場を知らない人間だ。
「ご苦労」
男は、こちらを一瞥し、
セリアに声をかけた。
「これが、例の未管理領域か」
「はい」
セリアは、簡潔に答える。
「現在は暫定安定化状態です」
「拡大は停止しています」
男は、満足そうに頷いた。
「結構」
「では、本題に入ろう」
嫌な予感が、確信に変わる。
「王国としては、
この成果を正式事業とする」
「管理主体は、王国」
「現場は、再編成だ」
フェンが、一歩前に出る。
「……現場を知らねぇ奴が、
勝手に決めるな」
男は、眉一つ動かさない。
「感情論だな」
「成果は出ている」
「副作用も、
管理すれば問題ない」
副作用。
軽く言う。
世界が止まりかけた事実を、
ただの“誤差”として。
「鑑定士」
男の視線が、俺に向く。
「君の能力は、貴重だ」
「王国直轄で、
働いてもらう」
断定だった。
拒否は、想定していない。
「……断る」
俺は、即答した。
空気が、凍る。
「理由は?」
男が、低い声で問う。
「現場を切り離す管理は、
世界を壊す」
「今、安定しているのは」
俺は、地面を見る。
「“何もしなかったから”じゃない」
「慎重に、
何度も引き直したからだ」
男は、ため息をつく。
「理想論だ」
「国は、
もっと効率を求める」
その瞬間。
セリアが、一歩前に出た。
「申し上げます」
「この件は、
私の管轄です」
男が、彼女を見る。
「第三管理課は、
あくまで研究部門だ」
「決定権はない」
セリアは、微笑った。
だが、その目は冷たい。
「ですから」
「研究結果として、
正式に報告します」
「――現時点での
完全管理は、危険だと」
補佐官たちが、ざわめく。
男の目が、細くなる。
「君は……
王国に逆らう気か?」
「いいえ」
セリアは、即答した。
「王国を、
守るつもりです」
沈黙。
重く、長い沈黙。
やがて、男は言った。
「……判断は、
一時保留とする」
「だが」
俺を見る。
「監視は付ける」
「成果が出れば、
その時は――」
それ以上は、言わなかった。
言う必要がないからだ。
馬車が去り、
静けさが戻る。
フェンが、舌打ちする。
「面倒なのが来たな」
「ええ」
セリアは、深く息を吐いた。
「ですが、想定内です」
リリスが、静かに言う。
「……世界が、
少し、緊張しています」
俺は、遠ざかる馬車を見る。
未管理領域より、
ずっと厄介なものが、
動き始めた。
世界のズレは、
自然現象だけじゃない。
人が、管理しようとする意志そのものが、
新たな歪みを生む。
鑑定士の仕事は、
また一つ――
増えたようだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
王国上層部が、本格的に介入してきました。
彼らは間違っているわけではありません。
成果を見て、動いただけです。
ですが――
数字で管理しようとするほど、
現場との距離は広がっていきます。
・未管理領域
・鑑定
・制度
・効率
それらがぶつかり合う中で、
誰が責任を取るのか。
それが、これからの焦点になります。
次話では、
王国から派遣された“監視役”が登場します。
新たな人物が、物語をさらに動かしていきます。
よろしければ、
引き続きブックマーク・評価・感想で応援していただけると励みになります。
どうぞよろしくお願いします!




