第2話 「奴隷市場で、世界樹のエルフを鑑定した」
お読みいただきありがとうございます。
第2話は、
主人公が“世界の異常”に本格的に踏み込む回であり、
最初のヒロイン登場回です。
・主人公が無双しない
・でも、できることは確実に増えている
そんな立ち位置を意識して書いています。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
路地裏で拾った剣が“聖剣”だった。
それだけで、今日一日が現実離れしている。
だが――世界の異常は、それだけじゃ終わらなかった。
翌朝。
情報収集のために足を運んだ街外れで、俺はそれを見つけてしまう。
奴隷市場だ。
檻が並び、値札が下がり、
人の尊厳が数字に置き換えられる場所。
本来、近づくつもりはなかった。
だが、通り過ぎようとした瞬間――
胸が、嫌な感じにざわついた。
「……なんだ?」
視線の先。
檻の奥に、一人のエルフの少女がいた。
銀色の髪。
伏し目がちで、感情が読み取れない表情。
痩せてはいるが、弱々しさはない。
むしろ――不自然なほど静かだ。
俺は、無意識に鑑定を使っていた。
【鑑定結果】
名前:リリス
種族:エルフ
状態:拘束中/能力制限
権限:世界樹管理者(未解放)
「……は?」
一瞬、理解が追いつかなかった。
世界樹。
管理者。
そんな単語、ギルドの資料でしか見たことがない。
神話級――いや、それ以上の存在だ。
だが、檻の中の彼女は、ただの“安値の奴隷”として扱われている。
これは……。
「またかよ」
思わず、呟いた。
やっぱりこの世界、どこか根本的におかしい。
「おい、兄ちゃん。見るだけなら金はいらねぇぞ」
奴隷商が、下卑た笑みを浮かべて声をかけてくる。
「そのエルフ?
無口で愛想もねぇし、魔力も反応しねぇ。
ハズレだよ、ハズレ」
――魔力が反応しない?
違う。
抑え込まれているだけだ。
俺は、静かに選択肢を開いた。
【修正権限:部分解除】
対象:能力制限
影響範囲:最小
心臓が早鐘を打つ。
ここで使っていいのか?
だが、放っておけば彼女は“何も知らないまま”売られる。
俺は、決めた。
次の瞬間。
檻の中で、淡い緑色の光が揺れた。
ほんの一瞬。
誰にも気づかれない程度の変化。
だが――
エルフの少女が、ゆっくりと顔を上げた。
翠の瞳が、まっすぐ俺を見る。
「……あなた」
初めて発せられた声は、澄んでいて静かだった。
「私が、見えるの?」
息が詰まる。
周囲の誰も、何も感じていない。
だが彼女だけが、世界が修正されたことを理解している。
「少しだけ、な」
俺は檻の前に立ち、彼女に向かって言った。
「君は、そんな場所にいる存在じゃない」
一瞬の沈黙。
そして、彼女は小さく首を振った。
「……でも、私は売られる」
「それは、世界の誤解だ」
自分でも驚くほど、はっきり言えた。
「俺が、それを正す」
彼女は、しばらく俺を見つめてから――
ほんのわずか、微笑った。
「……分かった」
「あなたを、信じる」
その瞬間。
俺の視界に、確信めいた文字が浮かんだ。
【通知】
世界樹管理者リリス
仮契約:成立
こうして俺は、
最初の仲間を得た。
――世界に隠された“本物”を。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
ついに1人目のヒロイン、リリスが登場しました。
即最強化せず、
「未解放」「仮契約」に留めているのがポイントです。
次話では
・リリスの力の片鱗
・鑑定スキルが“戦闘でどう役立つのか”
が見えてきます。
ここから
仲間が増え、
主人公の評価が少しずつ変わっていきます。
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