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第17話 「副作用――安定したはずの場所で」

お読みいただきありがとうございます。

第17話は、

未管理領域の安定化が

必ずしも“正解”ではなかったことが見えてくる回です。

うまくいったと思ったことが、

別の問題を生む。

そんな管理の難しさを描いています。

楽しんでいただければ嬉しいです。

異変は、翌朝だった。

 未管理領域の仮設拠点。

 夜明けとともに、

 リリスがふと足を止める。

 「……おかしい」

 その一言で、

 全員の動きが止まった。

 「どうした?」

 俺が問うと、

 リリスは地面に手を当てる。

 「昨日より……静かすぎます」

 静かすぎる。

 それは、安心を意味しない。

 フェンも、周囲を見回す。

 「風が、一定だな」

 「生き物の気配が、薄い」

 確かに。

 鳥の声がしない。

 虫の羽音もない。

 未管理領域特有の“ざわつき”が、

 ごっそり削ぎ落とされている。

 「……鑑定」

 俺は、即座に目を使う。

 

 【鑑定結果】

 対象:暫定安定化区域

 状態:過剰固定

 備考:変化抑制率 上昇

 

 「過剰……固定?」

 フェンが、眉をひそめる。

 「安定させすぎた、ってことか?」

 「近い」

 俺は、ゆっくり言葉を選ぶ。

 「“壊れない”代わりに、

  “変われなくなってる”」

 昨日引いた線は、

 確かに拡大を止めた。

 だが同時に――

 流れまで止めてしまった。

 「世界樹の力が、

  均一に広がっています」

 リリスの声に、

 わずかな戸惑いが混じる。

 「本来は……

  もっと揺らぎがあるはずなのに」

 セリアが、記録用の紙を見つめながら言う。

 「安定化が、

  生態系に干渉している可能性がありますね」

 「数字上は、成功です」

 その一言が、重かった。

 「成功、か」

 フェンが、低く呟く。

 「生き物がいなくなっても?」

 沈黙。

 それが、答えだった。

 「……失敗だな」

 俺は、はっきり言った。

 「少なくとも、

  この形は正解じゃない」

 安定させる。

 管理する。

 だが――

 固定することとは違う。

 「原因は、分かる」

 俺は、地面を見る。

 「“線”を引きすぎた」

 「世界に、

  選択肢を残さなかった」

 管理とは、

 決めることじゃない。

 選べる余地を残すことだ。

 リリスが、静かに言う。

 「……戻すことは、できます」

 「でも、少しずつです」

 「急に緩めると、

  反動が出ます」

 セリアが、即座に判断する。

 「段階的に解除しましょう」

 「記録を取りながら」

 フェンが、肩を回す。

 「つまり?」

 「もう一回、やり直しだ」

 俺は、苦笑した。

 「世界相手だ。

  一発で正解なんて、無理だろ」

 その時。

 拠点の外で、

 微かな揺れが走った。

 昨日まで、

 完全に沈黙していた場所。

 そこに――

 小さな歪みが生まれる。

 「……来るか?」

 フェンが、身構える。

 だが、俺は首を振った。

 「いや」

 「戻ってきてる」

 それは、敵意じゃない。

 異常でもない。

 変化の兆しだ。

 だが同時に――

 管理が、簡単じゃない証明でもある。

 セリアが、低く息を吐いた。

 「管理とは、

  想像以上に繊細ですね」

 「ええ」

 俺は、頷く。

 「間違えれば、

  世界を“止める”」

 「放置すれば、

  世界は“壊れる”」

 その間を探る。

 それが、

 これからの仕事だ。

 昨日の成功は、

 今日の課題に変わった。

 だが――

 引き返すつもりはない。

 「次は、もっと慎重にいこう」

 俺の言葉に、

 三人が頷いた。

 世界は、少しずつ応えている。

 それが正解かどうかは、

 まだ分からない。

 だが確かに――

 対話は、始まっていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

今回描いたのは、

「壊れないようにした結果、止めてしまった世界」です。

・安定=善ではない

・管理=固定ではない

・正しさは状況で変わる

こうした判断の積み重ねが

少しずつ重くなっていきます。

次話では、

この“成果”と“副作用”に

別の立場――王国上層部が注目し始めます。

よろしければ、

引き続きブックマーク・評価・感想で応援していただけると励みになります。

どうぞよろしくお願いします!

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