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第16話 「安定化作業――未管理領域に線を引く」

お読みいただきありがとうございます。

第16話は、

未管理領域に対して初めて行う

「安定化作業」を描いた回です。

戦闘ではなく、

管理とは何をすることなのか。

その第一歩を意識して書いています。

楽しんでいただければ嬉しいです。

未管理領域での作業は、戦闘よりも神経を使った。

 「……じゃあ、ここからだ」

 俺は、地面に杭を打ち込む位置を指示する。

 「半径三十。

  それ以上は、今は触らない」

 「了解」

 フェンが、剣ではなくハンマーを持つ。

 その姿は少し珍しい。

 「壊すんじゃなくて、

  境界を示すだけ、だな?」

 「ああ」

 「“ここまでは触らない”って線を、

  世界に教える」

 リリスが、静かに頷いた。

 「管理とは、制限でもあります」

 「何でもできる状態は、

  何も決まっていない状態です」

 その通りだった。

 未管理領域は自由だ。

 だが、自由すぎる。

 結果として、

 触れたものを消し、

 意味を壊す。

 「……始めます」

 リリスが、両手を地面に触れさせる。

 世界樹の魔力が、

 ごく薄く、広がった。

 完全な管理ではない。

 修復でもない。

 “これ以上崩れないようにする”だけの介入。

 

 【鑑定結果】

 対象:未管理領域(部分)

 状態:暫定安定化

 備考:管理者不在状態を維持

 

 「……いける」

 俺は、息を吐く。

 完全に戻す必要はない。

 今は、

 被害が拡大しないことが重要だ。

 「……変わったな」

 フェンが、周囲を見回す。

 風の流れが、

 少しだけ整っている。

 「消えなくなった」

 さっきまで、不安定だった草が、

 ちゃんと“そこにある”。

 だが――

 「完全じゃない」

 俺は、言った。

 「触れば、まだ危険だ」

 その時。

 後方から、拍手の音がした。

 「見事です」

 セリアだ。

 記録用の魔導紙を片手に、

 冷静な目で周囲を見ている。

 「破壊も、占有もしていない」

 「だが、拡大もさせない」

 「……合理的ですね」

 「気に入らないか?」

 フェンが、ぶっきらぼうに言う。

 「いいえ」

 セリアは、即答した。

 「むしろ、好ましい」

 「利用は、後からでもできます」

 その言葉に、

 フェンが睨む。

 だが、セリアは動じない。

 「順番の話です」

 「先に安定」

 「次に観測」

 「最後に、判断」

 彼女は、はっきり言った。

 「これは、“使うため”ではなく」

 「“壊さないため”の工程です」

 ……少しだけ、見直した。

 「記録、どうだ?」

 俺が聞くと、

 セリアは紙に視線を落とす。

 「未管理領域は、

  完全な異常ではない」

 「放置された結果、

  定義が消えただけ」

 「つまり――」

 彼女は、顔を上げる。

 「管理すれば、

  世界は応える可能性がある」

 それは、希望だった。

 同時に――

 責任でもある。

 「簡単じゃないぞ」

 俺は、言う。

 「管理ってのは、

  引き受けるってことだ」

 「失敗すれば、

  俺たちのせいになる」

 セリアは、微笑った。

 「だからこそ、

  一人に背負わせない」

 「今日の作業で、

  はっきりしました」

 「あなたは、

  使い捨てにしていい鑑定士ではない」

 フェンが、鼻で笑う。

 「最初から、

  そのつもりだったろ」

 リリスが、静かに言った。

 「世界が……

  少し、落ち着いています」

 確かに。

 未管理領域は、

 まだそこにある。

 だが、暴れてはいない。

 「……成功、だな」

 俺は、小さく言った。

 完璧じゃない。

 解決でもない。

 それでも――

 最初の一歩だ。

 世界が放棄した場所に、

 初めて、人の意思が入った。

 それは、戦いじゃない。

 だが確実に――

 世界を変える行為だった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

今回の安定化作業は、

問題の解決ではありません。

あくまで

「これ以上壊れないようにする」ための措置です。

・未管理領域は消えていない

・完全な修正もできていない

・それでも、被害は止められた

この“中途半端さ”こそが、

話の難しさでもあります。

次話では、

この安定化によって生じた

新たな変化や副作用が見えてきます。

よろしければ、

引き続きブックマーク・評価・感想で応援していただけると励みになります。

どうぞよろしくお願いします!

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