第14話 「悪役令嬢――未管理領域を“利用する者”」
お読みいただきありがとうございます。
第14話では、
新ヒロインとなる人物が登場します。
戦闘ではなく、
考え方や立場の違いがぶつかる回です。
「正しさ」が一つではない世界を、
感じていただければ嬉しいです。
未管理領域の境界線付近は、不自然なほど整備されていた。
踏み固められた地面。
設営された観測杭。
そして――
人為的に引かれた結界線。
「……ここ、誰かが使ってるな」
フェンが、低く言う。
「それも、慣れてる」
同感だった。
偶然踏み込んだ場所じゃない。
意図的に、ここを選んでいる。
「止まってください」
澄んだ声が、前方から響いた。
視線を上げる。
そこにいたのは、
整った服装の少女だった。
年は、俺たちと大きく変わらない。
だが、その立ち姿には、
明確な“指示する側”の空気がある。
「この先は、許可なく立ち入ることはできません」
金髪を揺らし、
令嬢は淡々と告げた。
「……誰だ?」
フェンが、一歩前に出る。
だが、令嬢は一切怯まない。
「私はセリア・アルヴェーン」
「王国魔導研究院、第三管理課」
その名を聞いた瞬間、
リリスの表情が、わずかに変わった。
「……管理課」
「ええ」
セリアは、はっきり頷く。
「未管理領域を観測・利用するための部署です」
――利用。
その言葉に、胸の奥がざわついた。
「観測までは分かる」
俺は、前に出る。
「利用、とは?」
セリアは、少しだけ首を傾けた。
「資源化です」
即答だった。
「未管理領域では、
既存の法則が適用されません」
「魔力効率、素材生成、
どれも通常領域とは比較にならない」
淡々と、数字を読み上げるように語る。
「管理されていないからこそ、
利益が出る」
フェンが、鼻で笑った。
「危険だってのは?」
「承知しています」
セリアは、視線を逸らさない。
「だからこそ、制御する」
「壊れる前に、囲い込む」
――違う。
その考え方は、
俺たちとは根本的に違う。
「……鑑定士だな?」
不意に、セリアが俺を見る。
「あなた」
「報告にあった人物と一致します」
「未管理存在と交戦し、
撤退判断を下した者」
情報は、すでに上がっているらしい。
「それで?」
俺は、静かに返す。
「あなたは、戻したい側」
「私は、使いたい側」
その一言で、すべてが整理された。
敵意はない。
悪意もない。
ただ――
目的が違う。
「未管理領域は、放っておけば拡大します」
セリアは、少しだけ語気を強める。
「管理されていない以上、
世界全体への影響も無視できない」
「なら、あなたのやり方は?」
俺は、問い返した。
「利用ですか?」
「封鎖ですか?」
彼女は、一瞬だけ黙った。
そして、答える。
「最終的には、制度に組み込む」
「王国の管理下に置く」
なるほど。
彼女は“悪役”じゃない。
制度側の人間だ。
リリスが、静かに口を開く。
「管理とは、責任です」
「世界を、数字だけで扱うことではありません」
セリアは、リリスを見る。
初めて、感情が揺れた。
「……理想論ですね」
「ですが、嫌いではありません」
そう言ってから、俺を見る。
「提案があります」
嫌な予感がした。
「あなたの鑑定」
「私の管理」
「一時的に、協力しませんか?」
フェンが、即座に否定する。
「信用できねぇ」
「当然です」
セリアは、あっさり認めた。
「私も、あなた方を信用していません」
だが――
彼女は、微笑った。
「だからこそ、
見張り合う価値がある」
静かな沈黙。
未管理領域の風が、
四人の間を抜けていく。
俺は、深く息を吸った。
この出会いは、
戦闘よりも厄介だ。
だが――
避けられない。
「……条件次第だ」
俺がそう言うと、
セリアの目が、わずかに輝いた。
「話が早くて助かります」
こうして。
未管理領域をめぐる争いは、
“敵”ではなく、
“思想”との衝突へと変わった。
悪役令嬢セリアは、
確かに危険だ。
だが同時に――
この世界で、最も現実を見ている人物でもあった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
悪役令嬢セリアが登場しました。
彼女は敵ではなく、
制度と現実を背負った立場の人物です。
・未管理領域をどう扱うべきか
・管理とは何か
・正しさを誰が決めるのか
次話では、
アインとセリアの間で
具体的な「条件」と「ルール」が提示されます。
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