第10話 「ざまぁ――鑑定士を失った代償」
お読みいただきありがとうございます。
第10話は、第1章の区切りとなる回です。
追放から始まった物語の、
ひとつの“結果”が描かれます。
派手な演出ではなく、
選択の積み重ねがどう返ってくるのかを意識して書きました。
楽しんでいただければ嬉しいです。
結果は、数字になって現れた。
ギルドの掲示板前。
そこに貼り出された報告書を見て、冒険者たちは言葉を失っていた。
――被害報告。
――失敗した討伐。
――想定外の負傷者数。
どれも、ここ数日分。
「……こんなはずじゃなかった」
《紅蓮の牙》のリーダーは、紙を握り潰す。
Sランク。
誰もが認める実力者。
それでも――
“鑑定がズレた戦場”では、意味をなさなかった。
「鑑定士は?」
ギルド長の低い声。
「……信用できません」
返答は、歯切れが悪い。
それを聞いて、
周囲の視線が一斉に《紅蓮の牙》へ向いた。
――お前たちが、追放したんじゃないのか。
言葉にしなくても、
空気がそう語っていた。
その時。
会議室の扉が、静かに開いた。
俺だ。
隣には、リリス。
少し後ろに、フェン。
三人揃った姿を見て、
誰かが小さく息を呑んだ。
「……アイン」
リーダーが、絞り出すように言う。
「頼む」
頭を下げた。
プライドも、体裁もない。
「戻ってくれ」
「条件は、何でもいい」
静まり返る室内。
俺は、すぐには答えなかった。
代わりに、一歩前に出る。
「鑑定は、しました」
それだけで、空気が変わる。
「この街周辺の魔物は、
すでに通常ランクでは対応できません」
机の上に、報告書を置く。
俺の鑑定結果だ。
「原因は、世界の誤作動」
「一部の魔物だけじゃない」
「今後、同様の事例は増えます」
ざわめき。
だが――
否定の声は、出ない。
現場が、すでに証明しているからだ。
「だから、俺は」
リーダーを見る。
かつて、俺を見下ろしていた目。
今は、怯えている。
「戻らない」
はっきり言った。
「鑑定士は、消耗品じゃない」
「切り捨てた結果が、今だ」
息を呑む音。
フェンが、腕を組んで言う。
「判断ミスだな」
「指揮官としては、致命的」
リリスは、静かに続ける。
「世界は、正しい管理がなければ壊れます」
「それは、人も同じです」
――完全に、詰んでいた。
《紅蓮の牙》は強い。
だが、もう進めない。
鑑定がない以上、
次の一歩が、踏み出せない。
「……」
リーダーは、何も言えなかった。
俺は、踵を返す。
「必要なら、依頼として受けることはある」
「ただし」
振り返らずに、言った。
「対等な立場で、だ」
それが、最後だった。
助けはする。
だが――戻らない。
“居場所”は、もう別にある。
会議室を出ると、
フェンが小さく笑った。
「派手じゃなかったな」
「十分だろ」
俺は答える。
「気づくのが、一番つらい」
リリスが、俺の袖を引く。
「……終わりましたか?」
「ああ」
街の外へ向かいながら、
俺は思う。
ざまぁ、というのは――
相手を叩き潰すことじゃない。
間違いを、最後まで理解させることだ。
そして、それができるのは。
もう――
鑑定士だけだった。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!
第1章は
・追放
・鑑定の逆転
・仲間との出会い
・元パーティとの決着
を描いています。
主人公は復讐を選びません。
ただ、戻らなかった。
それが、今回の“ざまぁ”です。
ここから第2章では、
舞台を街の外へ広げ、
「世界の誤作動」そのものに踏み込んでいきます。
新しいヒロイン、
新しい立場、
そして、より大きな選択が待っています。
よろしければ、
このまま第2章も
ブックマーク・評価・感想で応援していただけると嬉しいです。
引き続き、よろしくお願いします!




