甘いチョコレート
「目通りしといてくださいね、レインさん。
こちらはお嬢様のご学友のルルディ嬢。
で、こちらは養護教諭のシューヴァ先生です。」
「レインだ。
学園内だけの期間限定の警護だけど、よろしく。」
かなり若い、21歳のロクトと変わらない位の年齢に見える冒険者だ。
この年でS級冒険者になっているとは、どんなオレ強えーチートを持っているんだろうとルルディは思ったが、もちろん口には出さない。
ヒョロヒョロではなくきちんと鍛えていそうな筋肉もあるようだし、チートに溺れることはなさそう、知らないけど。
「実力は確かな方です。
日勤数時間の短期バイトだから新婚旅行中の小遣い稼ぎにちょうどいいそうですよ。」
「小遣い稼ぎ。」
「新婚旅行。」
ルルディとシュウは微妙な顔をした。
ネーレイスが護衛を引き連れて、教室に戻っていくとロクトがすすすと音もなく近づいてきて、こっそりルルディに耳打ちした。
「王太子殿下のおかげで忙しくて、すぐにお見舞いに行けなかったことをお嬢様は気にしてたんです。
今日お見舞いに行けることになって、そわそわしてたんですよ。
ツンデレ可愛くないですか?」
「急にデレてくるのがたまらないわね!」
ロクトにツンデレという概念を教えたのは、乙女ゲームの記憶を思い出す前のルルディだ。
乙女ゲーム内のロクトは、つんつんしているネーレイスのことはビジネスライクにしか対応していなかった。
無自覚に原作破壊していたルルディである。
「………」
こそこそと話すルルディとロクトの姿は親密そうに見える。
会話の内容を知らないシュウは、長い前髪の下からその様子を真顔で見つめていた。
「ルルディって、筋肉好き?」
「え?」
「あのレインって冒険者の体格をじろじろ見ていたし。
ロクトも、あれは騎士並みに鍛えているでしょ?」
「筋肉ですか?
まあ、ひょろひょろしてるよりは、ある程度筋肉があった方が頼りがいがあって好きですよ。」
シュウは細身だが、腕は結構太いことにルルディは気づいていた。
じろじろと白衣に隠れた身体を見ていたと言うのは、はしたないので、ルルディは言葉を濁す。
「ふぅん。そうなんだ。」
翌日、シュウは白衣を着ていなかった。
黒いノーカラーシャツだけになると、引き締まった体躯が隠しきれなくなる。
やっぱり腕とか太いし、筋張っている。
あれ?想像以上に鍛えてる?
乙女ゲームはあくまでイラストである、実物は顔が眼鏡で隠れていても、ビジュアルが更に強い。
「先生、白衣着ませんか?」
「なんで?」
「わたし以外に、先生のかっこいいところは見せなくていいっていうか、その………寒くなって来たから風邪を引くといけません。」
ライバルを、増やしたくない。
ぽそぽそ言い、もじもじするルルディを見ながら、何故かシュウはふ、と微笑む。
「風邪、ね。
わかったよ、試しに白衣やめてみただけだから。」
「シュウ先生は、そのままが格好いいです。
大好きです。」
ドサクサに紛れて再度告白するルルディを、シュウは、ありがとう、と優しく受け流す。
シュウは白衣のポケットから、カラフルな包み紙を取り出した。
「ルルディ、口開けてごらん?」
「?」
素直にぱかっと口を開く無防備なルルディの口に、シュウはチョコレートをぽんっと入れた。
「この間は頑張ったみたいだからね。
ごほうび。
他の生徒には内緒だよ?」
君だけ特別、と目元をあわく染めて微笑む、シュウ。
ルルディは、チョコレートの甘さやらシュウの微笑みの甘さに、脳内のお花畑が咲き乱れていた。
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本編は「雨の日には君を想う。」の人外ヒーロー、レインがでてます、気が向いたらぜひそちらもご覧ください。




