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乙女心大爆弾

 噂からすると、ヒロインは王子様ルートに入りそう?


 考え込むルルディは、ヒロインの設定を思い出した。

 夏休み明けのこの時期、ヒロインは全ての攻略対象と出会い、個別ルート開放のためにパラメータと好感度上げをしているはずだ。

 個人的には、あの俺様王太子に、ツンデレ悪役令嬢はもったいないので、ヒロインには是非王子様のルートを選んで欲しい。


「でも、嫌だわ、もしそうなったらネーレイスが断罪されちゃう。」


 王太子とネーレイスの仲は、冷え込んでいる。

 世界は自分を中心に回っているとばかりの俺様は、やることをやらないで理想論を振りかざすタイプだ。

 今やるべき仕事をネーレイス等の周囲へ押し付け、別の今しなくていいことに夢中になる。

 ナチュラルにうむ、くるしゅうない、と他人の手柄を横取りする。

 婚約者とのお茶会は自慢話長々、なのに相手の話聞かない、自分の理想にネーレイスを強制的に押し込めようとする。

 エトセトラ、エトセトラ。


 ネーレイスから二人切りのお茶会の時には、殺意がこもった愚痴を聞かされているからか、ほとんど話したことがない王子へのルルディの好感度は地の底にめり込んでいる。

 リソースが前世の乙女ゲームの記憶なんて言ったら、ネーレイスからは鼻で笑われそうだが、 断罪されそうな可能性が出てきたら、 匿名の封書かなんかで告げ口しよう。


 あなたの婚約者、浮気してますよ。

 卒業パーティーで、大勢の前で、婚約破棄を叫びますよ。


 あのツンデレ悪役令嬢なら、華麗なるざまぁをしてくれそうである。

 楽しみ、楽しみ。

 悪い顔をしてルルディはこっそり、ほくそ笑んだ。



 さて、翌日。

 一度振られたくらいで諦めるルルディではない。

 彼から事情を聞き出すために、彼を死なせないために、アピールしまくるのだ。

 保健室で、担任教師から出された課題をこなしながら、ルルディは、チラチラとシュウを盗み見た。


「今日は注意力散漫だね。

どうしたの?体調悪い?」


 昨日のことなどなかったかのような何時も通りの態度で、心配そうにルルディの額に手を当ててきたシュウ。

 はーーっ、好き。

 ルルディの頬が赤くなる。


「少し熱っぽいね、早退する?」

「だ、大丈夫です。少し横になっていれば楽になると思います 。」

「そう?じゃあ、ベッド使ってね。

寒気はしないかな、湯たんぽを用意しようか?」

「湯たんぽより、先生に抱きしめてもらいながら一緒に寝てほしいなぁ………なんて。」


 それなりにある胸を押し当てて、ルルディはシュウの腕に抱きついた。

 キラキラキラ。

 あざとい上目遣いで期待を込めた視線を送る。

 胸はほら、子供扱いじゃなく少しでも意識してもらう為の乙女心大爆発の策である。

 このために寄せてあげるブラをしてきたのだから、どうぞ柔らかさを堪能してください、先生!

 胸元に、いい香りがするボディクリームだって塗ったくりました!

 先生限定でお触り可!

 

「…… 大人をからかうもんじゃありませんよ。

さ、いい子だから早く寝なさい。」


 するりとしがみつく腕をほどいて、 そっけなくシュウは保健室にある自分のデスクに戻った。

 と、取り付く島もない。

 がっかりしたルルディは、拗ねたような哀愁を漂わせながらモゾモゾとベッドに潜り込んだ。


「………」


 もう少し粘って、よくよく観察すれば、ほんのわずかにシュウの耳が赤くなっていたことに気付けただろう。

 素直なのが、裏目にでることもあるのだ。


よろしければ★を頂けると嬉しいです。


本作は短編「雨の日には君を想う。」「視線の行方」と登場人物が繋がっているので、気が向いたらぜひご覧ください。

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