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人魚姫の子守唄

 波打ち際で、波に隠された螺鈿の光が、燦めく。

 何ものにも遮られることのない穏やかな時間を手に入れて、シュウはゆっくりと息を吐いた。

 ルルディはシュウに膝枕をしながら子守歌を歌っていた。


 優しくルルディが歌ってくれる子守唄。

 心地よく、眠りへと誘ってくれる優しい歌声。



 嫌われてもいい、失うよりは。

 決死の覚悟で見つけ出したルルディに、無理やり口付けたと言うのに。


『嬉しい……!

わたしも先生のことが、大好きです!』


 満面の、笑顔。

 あんまりルルディが嬉しそうな、能天気な空気を出すものだから、拍子抜けした。

 それと同時に、暗く淀んだ何かが、自分から霧散していくのが分かった。

 

 敵わないな。

 シュウは苦笑する。


 結局、ルルディから笑顔を向けられたら、何もかもどうでもよくなって、許してしまう。

 惚れ込んだ方が負け、か。


 今後のことは、何も決まっていない。

 それでも、ルルディさえ傍にいてくれれば、全ては些末なことだった。

 医師の技術さえあれば、国を変えてもどうとでもなる。

 今の所は、やたら人魚に詳しい冒険者に協力を仰ぎ、暫く厄介になることが最有力だ。

 人魚の肉は不老不死の妙薬。

 人魚の涙は美しい真珠となる。


 ルルディはもう、普通の暮らしは望めない。

 だから、守ってあげたいと強く、想う。


 真珠の光沢を持つ、不思議な色合いの長い髪が、潮風にゆれている。

 愛しいシュウの、シュウだけの人魚姫。

 護るためならば、悪魔にだって魂を売ろう。


 結局、シュウは最初から何も変わっていない。

 必要がなくなったから、ヒロインを殺すことを止めただけ。

 ルルディは、気づいていないけれど、それでいい。


 子守唄が穏やかな波のように広がる。


 シュウの思考の渦も、やがて穏やかになって。

 そのまま真っ白になって……安らかな、眠りに付く。

 優しい。

 優しい、子守唄だけが。

 耳に残って、深い眠りへと誘ってくれた。


最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

よろしければ★を頂けると嬉しいです。


本作は「雨の日には君を想う。」「視線の行方」と登場人物が繋がっているので、気が向いたらぜひご覧ください。

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