表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

例え海の底でも

 真夜中。

 人気のない海辺で、ルルディは座り込んだ踝までを海水に漬けながら、ぼんやりと月を見上げていた。

 今夜は三日月で、あたりは薄暗い。   

 下半身のウロコの数は減らず、月の光に淡く輝いている。


「そろそろ戻らなくちゃ……」


 寄せては返す波を脚に感じながら、ゆっくりと立ち上がる。

 すると、ぼんやりしていて気づかなかった為か、唐突に、背後からの砂を踏みしめる足音がルルディの耳を打った。


「捕まえた。」


 暗闇から伸びてきた腕に、手首を強く掴まれる。


「……君を探してる間、気が狂いそうだったよ。」

「せ、先生………」

 

 腰が砕けてしまいそうな、耳元で囁かれる、甘いバリトンの声。

 冴えざえとした青白い月の光に照らされて、無表情にそこに立っていたのは、シュウであった。


「どうして……?」

「わからない?」

 

 呆然とするルルディの手首に込める力を、シュウは強めた。 

 絶対に逃すまいと、きつく掴む。

 

「大人を煽る悪い子だね、君は。」

 

 優しくて甘すぎる蜂蜜を、耳に流し込まれるような錯覚をルルディは覚えた。

 甘ったるいのに、どこか仄暗く薄闇に溶ける声。

 ルルディが焦がれたそれは、かつて見た夢を紡ぐ。


 「君が好きだから、ここまで追いかけて来たんだよ。」

 

 これは夢の続きだろうか。

 もし現実なら、彼を救う為にまた、逃げなくてはいけない。

 胸が張り裂けそうに痛む。


「でも先生、わたしのこと好きだなんて、聞いてない……」

「君に好かれたくなければ、わざわざ外見を整える為に時間を使ったりしない。

君が卒業するまで、と。

我慢して我慢して、結果が逃げられましたじゃ、キレたくもなる。

……もう遠慮しないから。」


 シュウは、動揺するルルディを引き寄せて、抱きしめる。

 大人としての、取り繕った言葉はいらない。

 本音をぶつけなければ、ルルディが逃げていくと、シュウは気づいていた。


「君が好きじゃなきゃ、殺人鬼にならないだろ?」


 ルルディは、息を飲んだ。

 なぜ、なぜ彼がそれを知っている?


「どうして、それを。」

「君が人魚になったのを今みて、納得したよ。

確かに、僕ならそうする。」


 ルルディを探すために、シュウは神託を受けられる、国を逃げ出した元司教に会った。

 その時、警告のように、シュウが殺人鬼になる未来は告げられていた。


 ならば、少し考えたらわかることだ。

 ルルディが、シュウから逃げ出した理由。


「ルルディ、君が恐れていたのは、僕が殺人をおかすことだね?」


 ルルディを追い詰めるように、シュウは笑う。

 腹の底から湧き上がるのは、怒りか、それとも悲しみか。

 腕の中のルルディを、逃さないように、きつく抱きしめる。


「好きだ、ルルディ。

例え海底でも追いかけて分からせてやる……!」


 激情を押し殺すような低い唸り声が耳を掠めた。

 噛みつくような深い口づけ。


 ルルディの胸はキュンとした。

 初めての口付けはあの時のチョコレートより、甘くて。

 好きだと言う言葉が、激しい中に優しさを残した唇の柔らかさから伝わってきて、嬉しくて。

 嬉しくて。

 ルルディは、知らず知らず、嬉し涙をこぼす。

 ぽろぽろ。

 涙は真珠の輝きを放って、こぼれ落ちていった。

間違えて書きかけを投稿していたので、再投稿です。

よろしければ★を頂けると嬉しいです。


本作は「雨の日には君を想う。」「視線の行方」と登場人物が繋がっているので、気が向いたらぜひご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ