行方不明の人魚姫
最近、妙に避けられているのには、流石のシュウも気づいていた。
何時もなら来るはずの時間に、ルルディは保健室に姿を現さない。
ドアを叩く音がしてほのかに期待しても、訪れるのは、いままでもっさりしていたシュウに見向きもしなかったのに、少し容姿を整えただけで、手の平を返してきた女子生徒だ。
いくつか告白もされたが、意味がない。
好きな相手に好かれなきゃ、意味がないのだ。
会いに行かないと会えないこともあるのだと、いままで、どれだけルルディに自分が甘えていたのか、自嘲する。
何かあったのかと、自分からルルディに会いに行こうとしていた矢先のことだった。
会って話して、今度は自分から告白しよう、と。
「はぁ!?
ルルディが屋敷を抜け出して行方不明になった?
っっざけんなよ!」
バキッと、シュウが握りしめていた万年筆が折れる。
額に血管が浮き上がり、瞳孔が開いた碧眼がギラギラと輝く。
口調を取り繕う余裕すらない様子に、ネーレイスとロクトの顔は引きつった。
「怖いですわ、ヤバいですわ、なんとかしてくださいまし、ロクト。」
「無理っす。」
ロクトの背中に隠れながら、ネーレイスは溜め息をついた。
結局、恐れていた事態になってしまった、と。
(ああもう、この貸しは高くつきますわよ、ルルディ!)
ブチ切れるシュウを宥めるように、扇子を口元に当てて声を潜める。
「必ず当たる占い師を紹介しますわ。
紹介状がないと会えませんのよ。」
「……必ず?」
胡散臭そうなシュウに、ネーレイスは応えた。
「かの宗教国出身の元司教ですの。
聖女を選出した神託を受けた、ホンモノですわ。」
王族しか使えない伝手だが、黙っていればわかるまい。
もしバレても秘匿を漏らしたのは、婚約解消予定の慰謝料としておこう。
ネーレイスは願う。
なんだかんだ眺めていて楽しかったルルディとシュウの恋模様が、上手くいきますように。
「お嬢様、尊い……」
親友の為に頑張る悪役令嬢の姿に、ロクトは神を崇めるかのように床に傅いて感動していた。
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本作は短編「視線の行方」と登場人物が繋がっているので、気が向いたらぜひご覧ください。
司教が視線の行方のヒーロー、レーゲンです。




