恋をしたから
「姉上、大丈夫ですか?
無理はしないで、暫く自宅療養した方がよいですよ。」
「あら、ルクス。
今日はお友達とお出かけじゃなかったの?」
ルルディの自室のベッドに横になりながら。
メイドからルクスの訪問を聞いて、ルルディは自分にしっかりと腹まで毛布が掛かっていることを確認した。
「姉上が倒れたって聞いて、帰ってきちゃいました。」
「あらまあ、お友達には申し訳無いことをしたわね。」
「そうかなぁ、あの人、僕は殿下のおまけみたいな扱いだし、大丈夫だと思いますよ。」
ああ、これは、イベントだ。
ヒロインは、乙女ゲームを着実に進めている。
退室するルクスをどうにか笑顔で見送ると、ルルディは青ざめる。
毛布を剥がすと、裾の長いネグリジェでは隠しきれない、不自然な燦めきが姿を表す。
真珠光沢を持つ螺鈿のようなそれは、鱗だった。
ルルディの脚に、疎らに鱗が生えてきたのだ。
慄き、ルルディは悟った。
先祖返りだ。
『先祖返りした体に、今の魔力が薄れてきた体が対応しきれなかったみたいだ。
魔力不足だよ。』
シュウが論文のことを説明してくれた声が甦り、病弱の原因は、これだったのだと気付く。
最近は歌唱コンクールのために無理をして、ずっと唄に魔力をのせて練習していた。
魔力を使いすぎて人間の姿を保てず、異形になりつつあると考えれば、辻褄が合う。
歌が上手い異形、脚の鱗。
『僕の愛しい人魚のために、あなたには死んでもらいます。』
原作のシュウのセリフ。
ゲームプレイ中は意味がわからなかったけど、今ならわかる。
人魚は、ルルディのことだ。
『昔は奴隷制度があったから、奴隷の魔力濃度の強い血液を用いて、治療する方法を考案したみたいだね。
魔力は血液に残りやすいからね。
特に心臓なんかの……あ、ごめん。』
私だ……!
私、だったんだわ!
原作には書かれていなかったけれど。
原作のルルディがシュウと恋に落ちたから、シュウはヒロインを殺そうとしたに違いない。
ヒロインは、学園で1番の魔力の持ち主だ。
弱った魔力を取り戻すためにヒロインの血、いや、心臓が必要だった。
獣人の症例は、人魚にも使えるとシュウは踏んだのだ。
私のせいだった!
恋をしたから!
大丈夫、大丈夫。
まだ間に合う。
先生は私のこと、好きじゃない。
逃げなくちゃ!
よろしければ★を頂けると嬉しいです。
本作は短編「雨の日には君を想う。」「視線の行方」と登場人物が繋がっているので、気が向いたらぜひご覧ください。




