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ワルツの距離

 夜会でルルディとワルツを踊りながら、シュウはイブニングドレスに包まれた華奢な肢体を抱き寄せて尋ねた。


「ルルディは、こういうのは好き?」

「……ぇ、あ、はい、好きですよ。」

「……ふぅん。」


 シュウは、清潔感がある身なりが好きかと質問し、

 ルルディは憧れた相手とのダンスに頭に花が咲いてほわほわしていたので、深く考えずに頷く。


 翌日から、シュウは無精髭をきちんと剃り、髪型を目元が見えるように整えて、眼鏡をはずした姿で出勤するようになった。


 なんて素敵なの!

 でも、みんながシュウ先生が美丈夫だって気づいてしまった。


 ルルディはちょっぴり後悔する。

 自分は、シュウがどんな姿でも好きになっていたのだと気づいて。


 保健室にシュウ目当ての女子生徒が現れるようになり、ルルディは保健室に居辛くなってしまった。

 シュウは優しいから、他の女子生徒にも微笑みかけるだろう。

 胸が痛くて、自然と脚が遠のく。

 ルルディから保健室に行かないと会えないのだと気づいて、一方通行な現状に虚しくなった。

 


 授業の合間の休み時間。

 実はクラスが一緒であるネーレイスが気付いた。


「あらルルディ、顔色が良くないわ。

保健室に行った方がいいんじゃなくて?」

「うん、ちょっと体調不良かも。

今日は保健室はやめて早退しようかしら。」

「……?

ルルディ。」

「なぁに、ネーレイス。」


 コテンと首を傾げるルルディを、思わずネーレイスは凝視した。

 アルカイックスマイルは保っているが、驚きが僅かに隠しきれない。


「貴女、シューヴァ先生と何かありましたの?

あのルルディが保健室に行かないなんて。」

「何にもない関係だから、行けないのよ。」

 

(あのシューヴァ先生とルルディが、何もない関係だなんてあり得ないけれど。)

 

 ネーレイスは、先日のワルツを踊る2人を思い出す。

 ぴったりと寄り添う姿は、ほとんど恋人同士の距離感だった。


「ロクト。」

 悲しそうなルルディを心配して、ネーレイスはロクトを呼び寄せた。


「ロクトは今日は用事があるでしょう、護衛の方にルルディを自宅まで送るように臨時依頼を出してくださる?」

「かしこまりました。お嬢様。」

「今から馬車を呼んだら時間がかかるでしょう。

わたくしの馬車は常駐させているから、使いなさいな。」

「うん、ありがとう。甘えちゃうわね。」


 ロクトの臨時依頼を受けて、レインと言う冒険者がやってくる。

 ふらふらしているルルディを案じたのか、提案してきた。


「歩けるか?

横抱きは嫁限定だからしないけど、おんぶなら出来るぞ。」

「あ、はい、じゃあ、お願いします。」


 なんか独特の感性と言うか、変わってる人だなぁ。

 確か新婚さんだ、お嫁さんが大好きなんだな。


 ひょいっといとも簡単に荷物のようにレインに背負われて、ルルディはレインのお嫁さんを羨ましく思うのだった。


 今日の授業が全て終了し、王太子妃教育を受けに登城しようと、ロクトを従えて廊下を歩くネーレイスに、呼び止める声がかかった。


「ルルディはもう帰りましたか?」

「今日は昼前には、体調不良で早退しましたわよ。」

「……ぇ?

……そうでしたか。」


 暗い目をする冷涼な美丈夫を眺めて、ネーレイスはアルカイックスマイルを保ったまま、内心叫んだ。


 なんか、怖いですわよ、これ!

 ヤバい匂いがしますわ、

 ルルディ、なんでこんなになるまで、拗れさせたんですのぉぉー!

よろしければ★を頂けると嬉しいです。


本作は短編「雨の日には君を想う。」「視線の行方」と登場人物が繋がっているので、気が向いたらぜひご覧ください。

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