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第二話:偽りの友情と、聖なる力の影

乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私、エヴァンジェリン。




どの周回でも、私はヒロインを虐げ、最終的には断罪される運命だった。




しかし、この物語の「悪役」は、私だけではなかった。




真の敵を倒すためには、私が「悪役」として世界を救うしかない、と。




リリアとの友情を育んできたエヴァンジェリン。



偽りの友情に真実を見つけた悪役令嬢に不穏な影が忍び寄ります。



さあ、物語の続きは本文で。

 舞踏会から数日後。私は、学園の中庭にある温室に足を運んでいた。

 そこは、リリアが毎日のように訪れる、彼女のお気に入りの場所だ。


 この場所で彼女と交流し、友情を深めることは、私が過去の周回で学んだ「破滅回避」の重要なステップの一つだった。


 温室の扉を開けると、甘い花の香りと共に、リリアの愛らしい笑顔が私を迎えた。


「エヴァ様! こちらにいらしたのですね!」


 彼女は、まるで子犬のように私の元へ駆け寄ってくる。

 その無邪気な笑顔に、私は安堵のため息を漏らした。

 この笑顔を守るために、私はどれだけの努力を重ねてきたことか。


「ええ、リリア様。あなたに会いたくて」


 私が優しく微笑みかけると、リリアは嬉しそうに私の手を取った。


 その瞬間、私の体の中を、ひやりとした、冷たい気配が駆け抜けた。

 それは、昨日王子が私に近づいた時とは比べ物にならない、不気味で、ゾッとするような感覚だった。


(やはり……この子の中に、あいつがいる)


 私の脳裏に、影の魔術師の姿がちらつく。過去の周回で、リリアの力がその魔術師に利用され、世界が破滅していく光景が蘇った。

 リリアの手は、優しく温かい。

 だが、その温かさの奥に、世界を破壊するほどの恐ろしい力が潜んでいることを、私だけが知っている。


「どうかなさいましたか、エヴァ様?」

 私の表情が固まっていることに気づいたリリアが、不安そうに尋ねる。


「いいえ、なんでもありませんわ。少し、めまいがしただけです」

 私は慌てて笑顔を取り繕い、手を離した。


 リリアは何も疑わず、私の腕に自分の腕を絡ませてきた。

「エヴァ様は、私にとってお姉様のような存在です! エヴァ様といると、心が安らぐんです」


 彼女の言葉は、私の心を温かく満たしていく。

 この友情は、私が何度も周回を重ねて、ようやく手に入れたものだ。


「私も、リリア様といると、心が安らぎますわ」

 私は心からそう思った。この温かさを失うくらいなら、どんな代償も払う覚悟だった。


 しかし、その時だった。

 リリアが触れた私の腕から、急に魔力が暴走したかのように、温室の隅に置いてあった鉢植えが、一瞬で枯れ果てたのだ。


「え…?」

 リリアは、その光景を見て、顔を青ざめさせた。


「ごめんなさい、ごめんなさい! 私、また……」

 彼女は私の腕から離れ、自分の手を握りしめ、まるで自分が怪物であるかのように怯えている。


(違う! あなたのせいじゃない!)


 私は、リリアの力が、影の魔術師の魔力を増幅させ、制御不能になっていることに気づく。

 このままでは、彼女は周囲から恐れられ、孤独に陥ってしまうだろう。


 この周回で、リリアを独りにさせてはならない。

 私が独りぼっちになるのも嫌だが、彼女が独りぼっちになるのも、もう嫌だった。


 私は、枯れた鉢植えをそっと手に取り、微笑みかけた。

「大丈夫ですわ、リリア様。これは、私が実験していた魔法のせいかもしれません。お気になさらず」


 私の言葉に、リリアは少しだけ安堵の表情を浮かべる。


 私は心の中で、強く誓った。

 この偽りの平穏は、いつか終わりを告げるだろう。


 だが、その時は、もう私一人ではない。

 この大切な友情を、私はこの手で守り抜く。


 そう決意を固める私の背後で、枯れた植物の陰から、不気味な黒い霧が、ゆらりと立ち上っていることに、リリアは気づいていなかった。

これは、孤独な悪役令嬢が、抗うことのできない運命の中で、


かけがえのない仲間たちと「居場所」を見つける物語。


大切な友情を守り抜くと決めたエヴァンジェリンとそれを阻む黒い霧。


彼女たちの行く末を見守っていただけたら嬉しいです。


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