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【完結】断罪された悪役令嬢は、世界を救うために「真の悪」になる ~何周目かの人生で、ようやく見つけた私の居場所~  作者: ましろゆきな
第四章:世界を救った悪役令嬢の孤独と真実

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第一話:英雄のいない夜明け

 夜が明け、太陽が昇り始める。


 影の魔術師が消え去った学園の中庭には、激しい戦いの痕跡だけが残されていた。ひび割れた大地、倒壊した建物、そして、気を失っている人々。


 私は、リリアに抱きかかえられながら、ゆっくりと意識を取り戻した。

 リリアは、力を失ったことで顔色は悪いが、その瞳には安堵と、私への深い信頼が満ちていた。


「エヴァ様……、終わったのですね……」

 彼女は、涙を流しながら、私の頬にそっと触れる。


 その時、周囲の人々が、目を覚まし始めた。

 彼らは、目の前の惨状と、私に抱きかかえられているリリアを見て、顔を青ざめさせる。


「見ろ……! 悪役令嬢が、リリア様を……!」

「やはり、あの魔力は、世界を滅ぼすためのものだったんだ!」


 人々は、私を指さし、罵声を浴びせる。


 彼らの目には、私が聖女を襲い、街を破壊した悪魔にしか映っていない。

 彼らは、影の魔術師の存在を知らない。私とリリアが共闘したことなど、知る由もない。


 その時、私の元に、王子レオンハルトが駆け寄ってきた。

 彼は、私の真意を理解している。しかし、その表情は、私を「悪役」として断罪する、冷たい仮面に覆われていた。


「エヴァンジェリン・グランヴィル……! 貴様の魔力は、もはや王国の脅威だ。直ちに拘束する!」


 彼の言葉は、公にそう言わざるを得ない、王族としての責務だった。


 私は、レオンハルトの苦渋の表情を見て、静かに微笑んだ。


(それでいいのよ、殿下。それが、あなたの役割だもの)


 しかし、その時、兄ルシアンが、静かに私の前に立ち塞がった。

 彼は、衛兵たちを静止させると、レオンハルトに歩み寄る。


「お待ちください、殿下。彼女の魔力は、王国の平和のために使われるべきだ」


 ルシアンは、私が真の救世主であると、公に伝えようとしていたのだ。


 私は、兄の言葉に、心の中で叫んだ。


(兄様、やめて! それでは、あなたまで……!)


「兄様……やめて……!」


 私の声は、震えていた。

 その時、リリアが私の言葉に呼応するかのように、兄の袖を掴んだ。


「グランヴィル様……! ダメです! あの方を、悪役に……しておいてください!」


 リリアは、全てを理解していたのだ。ヴェラが「悪役」として生きることで、世界は平和を保てることを。


 ルシアンは、リリアの言葉に驚き、そして、私の覚悟を再確認した。

 彼は、苦渋の表情で、再び冷徹な公爵の仮面を被る。


「……リリア嬢の言う通りだ。いや、私が間違っていた」


 彼は、レオンハルト王子に静かに告げる。


「殿下。彼女の魔力は、王国の秩序を乱します。公爵家は、家訓に従い、彼女を断罪し、国外へ追放します。それが、王国の平和に繋がるでしょう」


 彼は、私を「悪役」として切り捨てるという、最も残酷な決断を下したのだ。


 レオンハルトは、ルシアンの言葉に、苦しそうに顔を歪める。

 私は、リリアに抱きかかえられたまま、静かに目を閉じた。


「ありがとう、兄様……」


 私の役目は、これで終わりだ。


 英雄として称賛されることなく、誰にも理解されないまま、ただ独りで生きていく。


 しかし、私の心には、なぜか不思議な温かさがあった。

 この夜明けに、誰も英雄はいない。


 ただ、それぞれの役割を全うした、孤独な「悪役」がいるだけだ。

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