第四話:悪役と聖女、共闘の果てに
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私、エヴァンジェリン。
どの周回でも、私はヒロインを虐げ、最終的には断罪される運命だった。
しかし、この物語の「悪役」は、私だけではなかった。
真の敵を倒すためには、私が「悪役」として世界を救うしかない、と。
悪役令嬢エヴァンジェリンと聖女リリアの共闘。
戦いの行く末は――。
さあ、物語の続きは本文で。
ルシアンの介入により、私は再びリリアの前に立つ。
私の放った魔力の槍は、兄によって止められたのではなく、兄の身体に流し込まれた私の魔力によって、彼の判断を確かなものにするための布石だったのだ。
兄が周囲の衛兵や騎士たちを説得している間に、私はリリアと向き合う。
「……愚かな兄妹め。もはや、手遅れだ」
不気味な声が響き渡り、リリアの背後から、漆黒のローブをまとった影が、ゆっくりと実体化する。
その顔はフードの奥に隠されているが、全身から発せられる悪意の魔力は、世界を滅ぼすほどの力を持っている。
「影の魔術師……!」
私は、過去の周回で何度も私を絶望に突き落とした、憎むべき敵を前に、震えをこらえた。
しかし、影の魔術師は、私には目もくれず、リリアを見つめている。
「リリア・エルトリア。お前の聖なる力は、この世界を浄化するに値する。
だが、その弱さは、世界を滅ぼす。だからこそ、私はお前の力を導いてきたのだ」
影の魔術師は、リリアの力の負の側面であることを自ら明かしたのだ。
リリアは、その事実に絶望し、その場に崩れ落ちる。
「嘘……私の力が……世界を壊してるなんて……」
その時、影の魔術師の視線が、私に向けられた。
「そして、お前だ、エヴァンジェリン。いや……ヴェラ、と呼ぶべきか。
お前は、私が幾度もこの時を繰り返させ、『世界の鍵』として完成させた、私の最高傑作だ」
(私が……最高傑作……?)
彼の言葉は、私の心を抉った。
周回は、私の意思ではなかった。影の魔術師が、私という「悪役」を、世界を救う道具として完成させるために、用意した「育成プログラム」だったのだ。
私の孤独も、絶望も、全てがこのための筋書きだった。
怒りが、私の内側から湧き上がってくる。
「ふざけないで……! 私の人生を、お前の実験台にしないで!」
私は、全身の魔力を解放し、影の魔術師に向かって解き放った。
しかし、私の魔力は、影の魔術師に触れた瞬間、霧散してしまう。
「無駄だ。お前の魔力は、私の分身であるリリアの力なしでは、不完全なものだ」
彼は、冷酷にそう言い放つ。
私は、絶望に打ちひしがれた。
過去の周回でも、この状況に陥り、力尽きてきた。
影の魔術師を倒すには、リリアの聖なる力が必要なのだ。
「……私のせいだ……」
リリアは、泣きながらそう呟き、自らの腕に魔力を集中させ、自害しようとする。
「私が消えれば、みんなが……」
その時、私の脳裏に、リリアと築いてきた友情の記憶が鮮明に蘇った。
「エヴァ様は、私にとってお姉様のような存在です!」
彼女が独りぼっちで泣いていた時、私が手を差し伸べた、あの温室での光景。
私は、震える手で、リリアの手を掴んだ。
「消えないで、リリア! あなたは、私の『居場所』よ! あなたが消えたら、また私は独りぼっちになってしまうわ!」
私の言葉に、リリアは目を見開いた。
「……エヴァ、様?」
彼女の瞳に、再び光が戻り始める。
「あなたの力は、世界を壊す力じゃない! 私に……私に、その力を使わせてちょうだい!」
私の言葉に、リリアは涙を流しながら頷いた。
「……はい。エヴァ様! 私の力……あなたに使ってください!」
リリアは、私に手を差し伸べた。その手から、温かく、清らかな聖なる力が流れ込んでくる。
その力は、私の「悪役の魔力」と混ざり合い、新たな魔力を生み出した。
それは、「善」でも「悪」でもない、世界を救うためだけに存在する、唯一無二の力。
「これが……! これが、私の力……!」
私は、リリアの聖なる力を借り、影の魔術師に向かって、巨大な魔力の波動を放つ。
「お前は、ただの『実験』だった。私の人生の、何周目かの、『実験台』に過ぎなかった!」
影の魔術師は、私とリリアの共闘に驚愕し、私を「不完全な存在」と罵る。
しかし、その魔力は、もはや影の魔術師の制御を離れていた。
ヴェラの「悪」とリリアの「聖」、相反する二つの力が、奇跡を起こす。
「消えなさい……私の『居場所』を脅かす、偽りのヴィランよ!」
私の魔力が、影の魔術師を完全に飲み込む。
断末魔の叫び声と共に、影の魔術師は、光となって消滅した。
私は、力を使い果たし、その場に倒れ込んだ。
リリアは、力を失いながらも、私の元に駆け寄り、私を抱きしめる。
その温かさが、私が求めていた「居場所」だった。
(これで……独りぼっちじゃない…)
私は、リリアの腕の中で、静かに目を閉じた。
遠くで、兄ルシアンと王子レオンハルトの、安堵したような声が聞こえた気がした。
これは、孤独な悪役令嬢が、抗うことのできない運命の中で、
かけがえのない仲間たちと「居場所」を見つける物語。
悪役令嬢は聖女の共闘の末、勝利を手にする。
それがどんな未来に続くのか――。
彼女たちの行く末を見守っていただけたら嬉しいです。
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