UTOPIA その2
私たちの住処は、新宿区の端にあるビルで、一階は屋台となっていてその上の階にある。屋台には、誰もいないが、休日はよくお酒を飲んでいた。
ここゲーム世界。OUTLINEで唯一の心落ち着けられる場所でもある。
玄関先の規則的な犬の吠え声。
寒くもない暑くもなく風もない開け放たれた窓。
どこかから電気が通っている照明。
私が、ここゲーム世界で一番最初に慣れた景色だった。
二階に差し掛かる踊り場には、液晶テレビが設置されていて、私たちが置かれている今の環境のヒントが時折流れている。
液晶テレビで映る無人のニュースには、今後起きるはずの様々な世界崩壊の予想が画面に幾つものグラフとして表示されていた。
警告と黄色い文字で表示され、本来グラフがあったところが明滅しているところは、既に超小型隕石によって、崩壊してしまった国だ。
「あ、木ノ神さん。また一つ崩壊した国がある」
「あ……そうね」
「知らない国だ。名前さえ……」
「そうよね。あまり聞きなれない国の名前ね。でも、ここはゲームの世界なんでしょ」
「ああ、そうだよね。夕食。何にする?」
「ええと、卵料理は昨日食べたけど、卵料理がいいわ」
二階のドアを開けると、そこは私と長谷則さんの10LDKだ。