UTOPIA
「長谷則さん。プレイヤー達の方はどう?」
「うーん。ごめん。ゴールまであと、1時間はかかると思う」
「まだ、全員そろっているものね」
「ああ、全員outになった人はいない。いや、させないよ」
私は、今。端末の前に長谷則さんと並んで座っている。窓の外は相変わらず夜中だが、星も見えない空には、野鳥や蝿や蜂が規則的に飛んでいた。
幸多田インダストリー社の支社で、私と長谷則さんが働くようになって、三カ月の月日が過ぎた頃。
私たちの他に、新しいプレイヤー達がここOUTLINEへと来た。
このゲームのお客か犠牲者であるプレイヤー達を、最初は、新宿駅から寿司屋、明かりが壊れていて明滅を繰り返しているコンビニエンスストア、文具店。西新宿のまるまるまじろ。それから、北へと高速道路を向かわせている。そこに、このゲーム世界。OUTLINEからの唯一の出口となるゴールがあるのだ。
ゴールといっても、ただのドアだ。
誰でも開けられる宇宙船のような大きなドアが、高速道路のど真ん中にポツンとある。
「まだ、信じていないのね。彼ら……」
「ああ、安全な指示をいっくらやっても、信用しない。俺たちは味方だっていうのにね」
「もうそろそろ、定時よ。残業やる? それとも、帰る?」
「ああ、帰る。あとはシステムをオートにしようか。ここまでゴールへの方角を正確に教えていればプレイヤー達は大丈夫だろう」
私と長谷則さんは、この階のエレベーターホールへ歩いた。ここは、5階の数あるブースの一つで、そこから地下1Fの駐車場まで下りる。駐車場には、それぞれの高級車がある。
ゲームの世界なので、使おうが使うまいが、有り余る全世界のお金は自由に使えた。