日本崩壊後 その11
長谷則が、珍しく焦りの入り混じった声を上げた。
「あ、木ノ神さん! どこにあるんだ? 「まるまるまじろ」って? この通りには、少なくても喫茶店が3つはあるぞ?」
「あ!」
小道を通り過ぎると、T字路に差し掛かる。同じような喫茶店が、その目の前にズラリと並んでいた。私は、右端から全ての看板を穴の開くほど見つめていった。
そこで、問題がでてきた。
看板がない喫茶店が2つ。
一番左端と真ん中にある喫茶店だけが、看板が店の外にでてない。
もうお手上げかと思ったら、長谷則が突然歩く方向を右へ向け、右から左へを通る形に前進していった。
なるほど、こうすれば少しはoutの危険性がなくなる。
私も向きを変え、右端の喫茶店を目指した。
通せんぼするかのように、立ち並ぶ喫茶店が4つ。私は、長谷則と一緒に順々にその前を通って行く。しばらくすると、一番左端へ向かう。だいぶ前を歩いている長谷則から、歓喜の声が上がった。
「やったぞ! ここが「まるまるまじろ」だ!」
私は、長谷則へ追いつくと、彼がこんなにも頼りになる人物でほっとした。
彼が喫茶店のコップを持っている。
それは、最後の喫茶店の中で、木材でできたテーブルの上に乱雑に置いてあるお盆や食器、ソーサー。コップなどに、「まるまるまじろ」という店の名前が書いてあったのだ。
…………
「やったわね。長谷則さん」
「ああ、もう立ち止まっても大丈夫そうだ」
長谷則は、それまでの前進を止め。立ち止まり、大きく息を吸った。私も立ち止まり、荒い息を鎮めにかかる。
そこで、着信メロディーが聞こえた。
「やあ、無事だったようだね」
電話にでると、あの男だった。