第19話
アランが書いた能力値はかなり興味深かった。
名前:アラン
レベル:36 種族:人間
職業:自覚できない(進行率:50%) 名望:10
知力:36 知恵:36 筋力:18(+30)
素早さ:20 運:18 魅力:40
体力:720(+200) 魔力:1440(+200)
真っ先に目につくのはスタットだった。
本来、魔法に関連したキャラクターであれば知力と知恵はレベルと似た値が出る。
この部分はアランも同じだった。
レベル値と知力値、知恵値が同じだった。
ただ、筋力がおかしかった。
たいてい魔法使いの筋力値は自己レベルの半分だ。
(36レベルに筋力値が18なら正常だが、筋力に追加スタットが30もついたという点はおかしい。)
インモラルは目を細めた。
追加スタットは通常、キャラクターの特異スキルや称号、師匠のスキルに間接的に影響を受ける。
おそらく3つのうち1つの影響で筋力が高まったのではないだろうか。
(それでも上昇幅が少し過度な感じがある。)
スタットにおいて妙な点はそれだけではなかった。
体力と魔力もさらに増えていた。
アランが着用したアイテムを再度確認してみた。
装備は経験値アップ効果のみで、スタット上昇効果はなかった。
増えた体力と魔力。
これはやはりアイテムの影響ではないという意味だ。
インモラルはまるでパズルを目の前にしているようだった。
(全体的にスタットがおかしい…魔法使い系なのに知力よりも魅力が高いことからして···。)
インモラルは興味深い表情をした。
アランの統計は全般的に優れていた。
一般のNPCより確実に一歩進んだ能力値だった。
(しかし…)
水の音が聞こえるキャンプ場の隅。
アランを前にしたインモラルは内心残念がっていた。
(魅力スタットではなく…知力や知恵が40ならどうだっただろうか。そこに追加のスタットをのせたら息が止まっただろうに。)
卓越するほど高い知恵。
あるいは桁違いに高い知力。インモラルが期待した能力値はそのようなものだった。
魅力スタットは実戦で使いにくい。
また、筋力スタットはそもそも魔法使いには不要だ。
(神官系に転職したら分からないだろうか。)
結論として、スタットがあまりにも不要に分配されていた。
インモラルは残念な気持ちで目をそっと閉じた。
(いや、社会に出たばかりの青年が自分の車があって家があって土地があるだろうか。今は全て持っている人に投資しようとするのではない。基盤を固めるのに今必要なのは、たくましさ、そして潜在力のある人材だ。)
気を取り直したインモラルは目を開けた。
そして今度はスキルの内訳を確認した。
1) 不明:職業解禁後に使用することができます。
2) 不明:職業解禁後に使用することができます。
3) 不明: 百万人に一人が得られるかどうかの優れた教育を特別に得ることになりました。筋力が補正されて体力、魔力が上昇します。
*名称は職業解禁後に表記されます。
4) 祝福された縁(特異スキル): 全ての縁がバタフライ効果となって大きな恩恵とサポートを受けます。モンスターも例外ではありません。この恩恵は種族の限界を跳び越えます。発動頻度は魅力スタットに比例します。
インモラルは困惑した顔をした。
今は興味深いどころか、頭が少し混乱していた。
分からないアクティブスキルが2つ。
不明なパッシブスキルが1つ。
はっきりしない特異スキルが1つ。
(元々こういうゲームじゃなかったよな…説明がどうしてこんなにみんな不親切なんだ?)
インモラルは不満を心の中で抑えた。
それとともに冷静に頭を回転させた。
(それでも、これは少し分かる。)
インモラルが悟ったのは、まさに追加スタットの出所だった。
アランの筋力、体力、魔力が増えた理由。
それは3番目にある不明なパッシブスキルの影響だった。
(授業に集中していたらできたのだろうか?何かそうするには追加補正が大きすぎるが?)
本当にいろいろな面で明確性のないパッシブスキルだった。
完璧に理解しにくいのは、4番目の特異スキルも同じだった。
(特異スキルは普通自己主張が強いものだが…これすらも輪郭と説明がはっきりしない。)
言い換えれば、アランの特異スキルは縁と関連があった。
対象と特定の関係を築くと恩恵を受けるようだ。
(モンスターと種族さえ関係ないないと言った。ならばレイスが5階からなくならずに6階までついて行ってバフをくれたのは、たぶんこのスキルの影響か。)
ただ恩恵の期間に対する明確な言及がなかった。
どんな風に発動するのかさえ分からない。
その規格も計り知れない。
アランの特異スキルは一言で言ってはっきりとした線がなかった。
(表現しにくい能力がアランにあると感じた理由は、まさにこの点のせいだったのか。線がないから運なのかスキルなのか迷ったんだ…)
実にユニークかつ難しい特異スキルだった。
(まさかこの私ですらこのスキルに影響を受けたのでは…いや、私がアランを助けたのは私の選択だった。)
深まる思いを振り払った。
分かるのは大体ここまでだった。
(前にあるアクティブスキル2つは、全く見当もつかないし。)
インモラルが黙っているとアランは言った。
「変なものばかりですみません…。」
インモラルは少し驚いた。
表情に出さないつもりだったが、アランは気づいたようだった。
「そんなこと言わなくていい。十分潜在力に満ちたスキルだからね。」
「…本当ですか?」
アランは少し不安そうだった。
インモラルは頭を冷やして整理した。そして、事実のみを述べた。
「もちろん、断言できる。きっとすべての秘密は職業にあるだろう。アラン、君は今自分の職業が何なのか自覚していない。だからステータスに浮かぶべき職業が出てこないわけであって。君は自分の職業に気づいた瞬間、アラン、君はもっと強くなるだろう。」
「ああ…そういえば。」
アランは過去をかみしめるように話し続けた。
「もともとは初歩明知だったのですが、いつからか「自覚できない」に見え始めました…。」
「まあ、多分いろんな経験を通じて職業が変わったんだろう。とにかく平凡な魔法使い系ではなさそうだね。」
アランは微妙な表情をしていた。
嬉しそうでもあり、一方では複雑そうだった。
するとアランは目を少しに向けた。
「私は校長先生のようた優れた人になりたいです。」
「なえると思うよ。」
冗談ではなかった。
スキルが明らかにならず能力値が無分別でも、全体のスタット自体は優秀な方だ。
魔法使い系列の中でどんな職業がかかっても1人前ははるかに超えるだろう。
アランは一番弟子として最低点に満足していた。
(アランならアカデミーの基盤を固め、小さな柱になれる。少しだが私も強くなるだろう。特にアランは心構えが優れている。これまでの行動がその根拠だ。)
インモラルは確信があった。
アランは最初の一番弟子として栄養価のある人物だ。
そんな結論に達すると、やることが一つに絞られた。
「アラン、もう行きなさい。明日からまた上に上がるためには今寝ておくべきだ。」
「はい。今日も気にかけてくださり本当にありがとうございます!校長先生!」
アランは頭を下げて挨拶をした。
キャンプ地の隅から遠ざかっていくアランは、歩き方が前よりたくましくなっていた。
インモラルはそれをもっと気に入った。
夜は更けていった。
食事はとっくに終わっており、生徒全員が簡単に設置した宿舎に入り明日の準備をしながら一人二人と眠りについた。
寝息があちこちから聞こえてきた。
インモラルは宿舎に入らなかった。
後片付けをするふりをして行動を開始した。
皆が眠るまで待ったのには理由があった。
倒さなければならないモンスターがいたからだ。
それはまさにレイスだった。
アランを追いかけるレイスが目標だった。
これまでレイスはアラン絶壁の役割を忠実に果たしてきた。
おかげでアランはもちろんアランのパーティー全体が確実に強くなることができた。
しかし、今はだめだ。
アランに一番弟子の可能性を見た以上、この辺で殺さなければならない。
そうしないと、アランパーティーは9階で全滅する可能性が高かった。
インモラルは人を見る目が優れていた。
人を打った時、何回目で折れるか感覚的に分かっていた。
6階ですでにコツを掴んだ。
(レイスが7、8、9階とも難易度を上げる場合…アランパーティは蓄積された疲労で9階で崩壊する。)
絶壁ではなく死。
レイスがもたらすバタフライ効果はアランパーティーが手に負えない水準に突き進むことが明らかだった。
アランは全て見せた。
自ら絶壁を作り、信じられないスピードでダンジョンを突破した。
もし見せられなかったら、レイスを生かしておく選択肢を選んだかもしれない。
(もう違う。見たいものは全部見た。)
ここまでよく走ったから今はゆっくり行かなければならない時期だった。
(もっと強くなるために。)
強弱を調節することも、育てる人のやるべきことだ。
6.5階に来た時だった。
湖の裏側に長く伸びた森でレイスの気配を感じた。
アデルもずいぶん前に感じたと言ったが、アランが頼んでその命を維持しているところだった。
(申し訳ない、アラン。君がレイスを殺さないよう私に頼まなかったのは、私が情深いと思ったからだろう。間違えていた。私は可能性だけ見ている。それが経営家で、ゲーマーだ。)
インモラルはゆっくりと湖のそばを歩いた。
夜風が吹いた。
風に森の匂いが徐々に立ち入った。
やがて湖が終わるところから森が出てきた。
インモラルはゆっくりとその中に入った。
竹がぎっしり詰まった場所だった。
特有の竹の香りが鼻の中を軽く触った。
そろそろその匂いに慣れる頃。
遠くから何だか荒い息づかいが聞こえた。
インモラルは首をかしげた。
足を止めたインモラルはゆっくりと音がしたところに視線を移した。
するとそこにはアランがいた。
寝ると言っていたアランがこんなところにいるなんて。
(何してるんだろう?)
その答えはアランが持っている武器を見て分かった。
アランは剣を持っていた。
「もうやめて、アラン。もう400回は軽く超えた。」
アランの前に浮かんでいるレイスがそう言った。
「この程度では基礎体力を伸ばせない! 僕は他の人よりもっと努力しなきゃならないんだ!」
レイスはため息をついた。
「あいつの基礎体力の話…そんなんで明日ミスしたらどうするの?」
「僕は自分を信じている。僕の直感だけど先生は僕に期待している。だから僕はもっと先へと進むことができる存在にならなければならない。しかも感じた。ダンジョンのモンスターが勉強していたものよりもなぜかもっと強いいたいだ。」
「うーん…。」
レイスはそれが自分のせいであることを知っているかのような反応をした。
結局レイスは止めることを諦めた。
代わりにアランが剣を振り回す度に声を出して数字を数えた。
2人はインモラルが遠くから見守っていることを全く知らなかった。
(これは…。)
遠くから眺めるインモラルは驚いて額に手をつけた。
仕方ないという表情だ。
(はぁ、まったく。)
インモラルは心の中で同じ言葉を何度も繰り返した。
もどかしくもありながら、またこれが面白いとも感じていた。
しばらくためらった後、インモラルはついに決定した。
足の向きをそっと変えたインモラルは、ゆっくりと二人から遠ざかっていった。
来たところに戻るのだ。
森を出るインモラルは静かに独り言を言った。
「そうだ…私は可能性だけを見ている。」
再び見えた湖は、森に入る前のまま静かに流れていた。
風も変わりなかった。
夜が過ぎ、湖には再び朝が訪れた。
インモラルに与えられたダンジョン突破クエスト。
その完了期限まで残った日はあと8日だった。
インモラルは少しも焦っていなかった。
(お金が惜しくない生徒たちだから。)
実際、完了期限が5日ほど残っている時に7階に上がれると見た。
生徒たちの成長力は優秀だった。
予想より3日も早く7階に行けるようになった。
(すべてアランの影響だが、それについて行った生徒たちも普通は越えた。そういった面でアランはパーティー運もついてくれるタイプだ。)
インモラルはあたりを見回した。
早朝でも湖の近くのキャンプ場にはのろい生徒がいなかった。
実は7階に上がるための準備は昨夜すでに終わっていた。
しかしインモラルは装備の再点検を命令した。
緊張感を与えるためだった。
アデルはインモラルが命令する前に自分が担当するパーティーの生徒たちに再点検を指示した状態だった。
物静かな湖。
その横に整列したアデルパーティーはすでに上がる準備ができていた。
インモラルの命令で再点検を進めているのはアランパーティーだけだった。
再点検はあと一人だけを残して終わった。
「アランはどこにいるの?」
アランパーティはそれぞれ自分の武器を再点検して初めて知った。
アランがいるはずの場所にいないことを。
ジェニーはとっくに気づいていたが、どこで何をしているのか分かっていたので黙っていた。
インモラルもこれといって慌てなかった。
(そろそろ来る頃だが。)
再点検を終えたアランパーティーが湖の横に整列したのを見てそう考えていた。
風がさっと吹いた。
湖が終わるところにある森から、熱い熱気とともに誰かが歩いてきた。
アランだった。
徹夜したとは思えないほどしっかりとした歩き方だった。足跡一つ一つに力が満ちていた。
インモラルはアランの状態を一目で把握した。
「うん、いいね。」
アデルも同じ判断をしたのか、そう言った。
アランの体調は最高潮に達していた。
アランは急いでパーティーの先鋒に立った。
「遅くなってすみません!」
体を包み込む熱気と目に漂う深い精気。
インモラルが遅れて合流したアランを責めなかったのは、アランの準備された心身のためだった。
この時アラン自身は知らなかった。
自分のステータスに微妙な変化が生じたことを。
名前:アラン
レベル:36 種族:人間
職業: 自覚できない(進行率:72%) 名望:10
昨日までは50%だった進行率が22%上昇していた。
パーティーの誰かが力強く言った。
「さあ、行こう!」




