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第32話:死闘少女と討ち取られた王

「ルディリア! このまま戦えば彼らが巻き込まれることに……!」

「分かっている!」

「ここまで来て他の人間の心配とは……どこまで愚かなんだ‼」


 国の紋章ともなっている剣を抜き、ルディリアにとびかかっていく。ルディリアも巨大な爪で攻撃をいなして反撃の魔法を食らわせる。


神級闇魔法(オルグログラ)‼」

「いや……お前と争うのは僕の神格化が終わった後にしよう‼ というわけだ、その命貰い受けようリーライム!」

「させるかよ‼」


 ミィバがリィとヴィリアンドの間に割って入る。戦闘に慣れていないことも相まって、ミィバは容赦なく吹き飛ばされる。


「ミバイさん‼」


 ミィバの助けに入ったリィを追いかけるようにヴィリアンドがさらに攻撃を加えようとする。その瞬間、隙だらけのヴィリアンドの背中に向けて魔法を放つ。


「リィから離れろ! 上級炎魔法(イデガラン)!」

「相変わらず魔力量だけはめちゃくちゃだな……神級水魔法(トルケムガー)‼」

「ぐぅ……! リィ、今だよ!」

「はい! 神級風魔法(ルフトロライ)!」


 私がヴィリアンドとやりあっている隙にミィバから魔力を貰い受けたリィが神級魔法を放つ。ヴィリアンドは少しだけ動揺した様子を見せたが焦ることなく攻撃をつづけた。


神級鉄魔法(ガメグランド)!」

「なっ……⁉」

「それって鉄狼の魔法だよね……」

「それがなんだっていうんだ」

「ディジーさんはどこにやったの⁉」

「もちろん俺の手で亡き者にしただけだ。それがなんだっていうんだ?」

「お前がディジーの姉貴を……‼ 俺の手で殺す! 殺してやる‼」


 なあなあとした様子でとんでもないことを口走ったヴィリアンドに対してミィバの怒りは留まることを知らなかった。


「ミバイさん……! 待って!」

「あれはどうしようもないな……」

「ちょっと! ルディなんとかしてよ!」


 ルディは半ばあきらめたような目でヴィリアンドに殴りかかるミィバを見つめていた。ただ、そのあきらめはミィバの結末を案じての物ではなさそうだった。


「見ろ、あれは『勝つ』者の目だ」


 ルディの制止も相まって、私たちは大人しく事の成り行きを見守ることにした。それからしばらくもしないうちに戦況が明らかになり始めていた。


「お前……お前のせいで!」

「なんだこいつ……! ただの人間風情が調子に乗るな!」

「黙れ‼ 私は……姉貴に……‼ まだ……!」


 ミィバは慟哭の声を上げながらヴィリアンドを握りこぶし1つで殴り続ける。ヴィリアンドこそ何度も魔法でミィバを剥がそうとするが、ボロボロになってもまだミィバは執念でヴィリアンドのもとから離れることはなかった。


「ルディ‼」

「そろそろ救出できるな。リーライムはミバイを助けろ、ラッセムは吾輩と一緒に来い」

「ようやく私の名前も呼んでくれたね!」

「うるさい、置いていくぞ」

「はーい」


 リィがミィバへと向かう道をヴィリアンドが通れないように私とルディで塞ぐ。当然のごとく、ヴィリアンドの矛先はルディへ向かっていった。


「そこを退け! ルディリア!」

「断る! 神級闇魔法(オルグログラ)‼」

「ミバイさん大丈夫ですか……?」

「俺は……俺は……」


 声を発するのもギリギリだったであろうミィバはそれだけ言うとリィの腕の中へと倒れこんだ。


「なるほどね、意思は尊重しつつもってことですね?」

「あぁ、あのまま何もさせてやらない方がもっと不憫だ」

「この僕と戦いながらお喋りとはいい度胸してるね! 一回僕に負けたというのに、何も反省していないようだ!」

「違う、吾輩は油断しているんじゃない」

「どういう……」

()()()()()()()()()()()()()()


 その言葉とほぼ同時にリコラに乗って私が飛び出していく。それを見たルディは安心した表情を見せてヴィリアンドの腕を掴む手の力を強める。


「行くよリコラ‼」

「はいラッセム様‼」

「吾輩を巻き込む気で撃て‼」

上級闇魔法(オルグログ)‼』


 リコラと私から放たれた無数の闇の魔弾はヴィリアンドの体とルディの体を連続で何度も通過していく。


「ふはははは‼ 数十年ぶりの仕返しだ! 神級闇魔法(オルグログラ)ァァァアアアア‼」

「ク……ソが……‼」


 私とリコラ、さらにルディの攻撃を真正面から食らったヴィリアンドはその場に膝から崩れ落ちる。

 辺りを包み込んでいたラカルイア兵やグレイアルムの歓声は止み、ラカルイア国民から歓声が上がった。


「やった……」

「ようやくこれで……」

「大勝利だぁぁぁぁああああ‼」


 私たちは倒れこんだヴィリアンドに背を向けて回復したミィバを輪に取り囲んで喜び合う。みんな顔や体はボロボロだったが、ただ笑顔だけが溢れていた。

 そんな私たちの背後をローブを被った幼子が通り過ぎ、虫の息になったヴィリアンドの元へと走っていくのが目の端に映った。


「そういえばあなたは一体……」


 お姉さまが、その子へと声をかけようとしたが完全に無視される。幼子は足を少しだけ開き手をヴィリアンドにかざして、小さく呟いた。


「私を、リウクスを、愚弄した者よ。消えろ。真・神級天魔法(ミルイルエラム)


挿絵(By みてみん)

次回は7月13日です。

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