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第30話:決心少女と最後に腹を括った仲間たち

 緊迫したルディリアの言葉に戦慄した私たちはルディリアの背に飛び乗ってジギラ火山に飛んで向かった。

 ジギラ火山は噴火しているが如く業火に包まれており、ナルディさんは必死な様子でその影と戦っていた。


「あいつは一体……」

「あらあら、お仲間が増えてしまったようね」

「シ……シルドッド⁉ 自分から逃げ帰ったはずじゃ……」

「ヴィリアンド様の命でナルディ・ロフを殺しに来たわ。だから、あなた達と対峙する気はないの。お願いだからここから消えてくれるかしら?」

「そう言われて、はいはいと引き下がるわけないです!」

「どうせナルディさんをやっつけて、炎国を侵略する足掛かりを作ろうとでもしてるんでしょ!」

「はぁ……本当に分からない子たちね。せっかく逃げさせてあげようとしているのに」

「皆さん! 私のことは置いてラカルイアに急いでください!」

「んな水臭いこと言うな! 俺たちも戦う!」

「いっちょ前にかっこいいこと言ってるがお前ほとんど戦わんよな」

「うるせえ!」


 こちらに視線だけを送っていたシルドッドは完全にこちらに向き直るとその勢いのまま私たちに迫ってきた。


「リーライム、貴方は最後に生け捕りにするから……一先ずは貴方の姉の死にざまを見届けなさい。神級炎魔法(イデガラーム)‼」

「させません。上級地魔法(ケドインガ)!」


 炎の大玉と地面から突き出す岩石が衝突し、辺りに轟音が響く。その一瞬さえも逃さずにシルドッドは追撃を食らわせる。


「お姉さま‼」

「ぐぅ……上級風魔法(ルフトロラ)!」


 お姉さまは風の渦に乗り、その場から離れる。その隙に、ルディリアがお姉さまとシルドッドの間に割って入っていく。


「ミバイ、金髪の回復を頼む! ここは吾輩に任せておけ!」

「あぁ、任せろ」

「やっぱり数の暴力は面倒ね……でも、ナルディさえ殺せれば問題ないわ」

「お前の相手は吾輩だ! 神級闇魔法(オルグログラ)‼」


 ルディリアは巨大な口を大きく開いて辺りにどす黒いブレスを吐き散らす。その闇に乗じてリコラがナルディさんを誘導して戦地から遠ざける。


「ナルディさん大丈夫?」

「えぇ、助かりました」

「お前も大概ひどい傷だな……待ってろ、すぐに治してやるから」

「そういえばミバイさんはいつそんな量の薬を……?」

「これか? 昨日、フィリアに話したらこんだけ用意してくれてよ。流石は大魔法使いの弟子といったところか」

「フィリア様にお会いになったのですね。今度あらためてお礼に行かないとですね」

「まずは目の前のことに集中しろ。そんな量の傷、下手したら死ぬぞ」

「大丈夫です」


 ナルディさんは何かをあきらめているかのような表情を私たちに向ける。けれど、その瞳の奥には何か決心しているような強さが見えていた。


「どういうことだ?」

「私はじきに死を迎えるでしょう」

「えっ……⁉」

「薄々勘づいてはいましたが……カルロッテさんと同じ状況なのですよね?」

「そっか、ナルディさんも『ミンラ』の所持者だから……!」

「えぇ、そういうことです。私の魔力量はもう……」

「でも諦めてねぇって表情だな?」

「もちろん。ここで私がタダ死にすれば炎国でのグレイアルムの活動はこれまで以上に活発になってしまう。なので、最低でもシルドッドだけは倒します」

「ナルディさん……」

「治療ありがとうございました。ルディリア様の助けに向かいます」

「おま……!」

「行っちゃった……」

「やはりサタナ様の右腕だけあって動き方が一緒ですね……」


 飛んで行ってしまったナルディさんを私はリコラに跨って共に追いかけていく。リコラは夜目が効くからか容易に走っていくが私の目にはただただ深い闇が広がっていた。


「リコラには本当に見えているんですね」

「もちろん、この闇は私たちの力の源とほとんど同じですから」

「私には何が何だかさっぱり……」

「リーライム様! 前から攻撃です!」

「リコラ、一瞬だけ頭を下げてください! 上級水魔法(トルケーム)!」


 無我夢中で上級水魔法(トルケーム)を真正面に放つと、爆発音に近い蒸発音と共に強い力で前から押される。


「ありがとうございますリーライム様」

「もう戦場の真ん中なんですか?」

「いいえ、ただの流れ弾でしょう。周りにルディリア様やナルディ様、牽いてはシルドッドの気配がないですから」


 リコラに乗ったまましばらく走り続けていると、突然闇夜が大きな光によって照らされ消え去った。


「何が……?」

「あれは……!」


 何かを見たリコラの体が震えだす。その視線の先では太陽さえも驚いて逃げ出すような、巨大な火球がジギラ火山の空中に浮いていた。

 その下でルディリアとナルディさんがなんとか抵抗する姿が映っていたが、火球は速度を緩めることなく地上に迫っていた。


「このままじゃ……!」


 火球が地表に触れようとしたその瞬間、一匹の龍が火球に飛び込んでいった。それとほぼ同時に辺りを焼け野原にしかねない熱波が辺りにバラまかれた。


「本当に何が起こって……!」

「リーライム様、私の後ろに隠れていてください!」

「リコラは大丈夫なの⁉」

「分かりません……ですが、貴方様は生き残らなくては……!」


 光に遅れてやってきた轟音によってリコラの声はそれ以上聞こえなかった。目も耳も何も使えないまま数時間が過ぎていった。


 * * *


「ぎ……つ!」

「リ……おき……!」

「そっち……」


 あれからどれくらいたったのか、数人の声によって目が覚める。しかし、体は自分の意思に反して鉄のように重かった。


「目が覚めたか銀髪!」

「リィ! 生きててよかったぁぁ!」

「お姉さま、ルディリア、それにミバイさんまで……」

「リアもいるよ!」

「そうだ、戦いは一体……! いったた……」

「あまり動くな、普通の人間なのにあんなのを間近で食らったんだからな」

「戦いはナルディ・ロフとシルドッドの相打ちで終わった。あの火球は落ちた時の想定威力よりもだいぶ抑えられたおかげで一般市民への影響はほとんどなかったそうだ」

「そうですか……そうだ! リコラは⁉」

「何とか一命はとりとめた。だが……」

「まぁ戦えないだろうな。というか俺が許さん」

「ってな具合だ。ミバイがしばらくリコラの様子は見ているそうだ」

「最後までついていけないのは悪い。だが、面倒を見る奴がいないのはもっとだめだ」

「って感じで頑ななの」

「そうなると私たち3人だけですか……」

「いえ、私も行きます……!」


 横になっていたリコラが目を覚ましたかと思うとそんなことを言った。そんな様子にミバイさんは怒りに任せてリコラに掴みかかる。


「馬鹿なのか⁉ お前が行ったところで死ぬのが関の山だぞ!」

「分かっていますとも! ですが、サタナ様のためにここで戦わないわけにはいきません!」

「だからと言って!」

「ミバイ止めろ。こいつの目は本物だ。これ以上なんと言おうがてこでも動かないぞ」

「そうは言ったってよ……!」

「リコラ、吾輩たちに付いてくるのは拒まない。だが、約束しろ」

「何を……ですか?」

「死ぬな。それだけだ」

「分かり……ました! ありがとうございます!」

「それでいい」


挿絵(By みてみん)

次回は7月6日です。


 * * *


いよいよ炎国編も終わりラカルイア編に突入です!

ラストスパート駆け抜けていこうと思います!

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