第29話:和気少女と大魔法使いの弟子
「ルディリア……なんですよね?」
「何を今さら言っているんだ銀髪。どこからどう見ても吾輩だろう」
「どこからどう見てみてもそう見えないからそう言っているんだよ‼」
「ルディリア様も力を取り戻したようですので、私たちは炎国城に戻るとしましょうか。リア行きましょう」
「はーい」
「……その、ナルディ様は共に来ていただけないのでしょうか?」
「リコラ……私は……」
ナルディさんは顔を背け、リアちゃんの手を取って私たちの元を去っていった。彼にとって予想外だったのか、リコラは目を見開いたままナルディさんの背中を見送った。
「結構薄情な奴だな」
「滅多なことを言うなミバイ。ナルディ・ロフにも何か考えがあるんだろう」
「とはいえナルディ様は我々と来てくれるとばかり思っていました……」
「それはそうと、この後どうする? ルディは力を取り戻したし、ラカルイアに乗り込んでもいいと思うんだけど」
「そうだな。そろそろ本気でラカルイアに乗り込む作戦を考える必要があるか……」
「その言い方だと今まで何も考えてなかったみたいだな」
「まぁな」
「そうなの⁉」
「当り前だ。お前たちがいなかったらラカルイアどころか地国を脱することすらできなかっただろう」
「そっか」
「ラカルイアで戦争を起こすんですよね……?」
「あぁ、この狂ったラカルイアの専制政治を終わらせる」
「もちろんそれについて口出しするつもりはないのですが……」
「なんだ?」
「倒すならヴィリアンド王だけにしてください……他のラカルイア国民に罪はありませんから……」
「あぁ、分かっている。だから吾輩は神格化の儀式を狙うつもりでいる」
「なるほど、その時なら人払いもされるということですか」
「だと思うんだが、リコラその辺はどうなっている?」
「大変申し訳ございませんが、正直神格化を行う以外の情報はほとんど掴めていません。他の影獣たちからの情報も今は途絶えてしまっていて尚更……」
「そうなんだ……ってことは今いる私たちだけで何とかしなきゃいけないんだ」
「心許ねぇな」
「同感だ。だが、これ以上他に頼る当てもない」
「私にリィ、ルディ、リコちゃん、ミィバの5人。大丈夫だよ、天神様の冒険も確か5人だったし!」
「そういうもんか?」
「そうだよ!」
「話し込んでいるところ申し訳ないのですがそろそろ日が暮れます。近くの町に移動しましょう」
「町なんてあるの? 炎国には火山があるイメージしかないけど」
「あぁ、俺の故郷にも町があった。今は滅んでるだろうがな。まぁいい、ここから一番近いのはオドロ火山の麓、オドロ町だ」
「早速向かうとしましょう」
ミバイさんの案内に従いながら オドロ火山を下りていく。暗い山道の先には明かりが見え始めていた。
「あれがオドロ町だ。ようやく休めるぜ」
「ねぇ、あれって……」
「サリ・ドラン……⁉ そんなはずは……」
「あの方は……フィリア様‼」
リコラは元気よくその少女のもとに走ってよった。少女は驚いた表情を見せながらも、しゃがみ込んでリコラを迎えた。
「リコラじゃない! 何時こちらに来たの?」
「お久しぶりですフィリア様。炎国にはつい最近来たばかりで……」
「この人たちが今回の旅の仲間ってことよね? こんにちは! 私、フィリア・ドランっていうの!」
「私はラッセム・ヴァン・トゥーラ! よろしく!」
「サリ・ドランというよりか、金髪が2人になったみたいんだな」
「少しわかる気がします」
「それで、リコラたちはどうしてここに?」
「それには山よりも高く海よりも深い理由がありまして……」
「随分大げさな物言いをするのね? まぁ、大方予想はついてるし過去に師匠からいろいろ聞いてるから分かる気がするわ」
「えぇ、ラカルイアの圧政に終止符を打ちに行きます」
「……彼女が首謀者と言ったところ?」
「あぁ、ルディリア・ラム・ガムリオラだ。お前の師匠には世話になった」
「よろしくね。それで、いつラカルイアに乗り込むの?」
「何も問題がなければ明日の早朝だ」
「それじゃあ早く休まなくちゃいけないわね。近くに私のアトリエがあるから使っていって」
「恩に着る」
フィリアに着いていくと町のはずれに小さな家が見えてきた。周りは不思議な植物に覆われておりいかにも魔女が済んでいそうなアトリエだった。
「ちょっとルディリアさんには狭いかも」
「気にするな。吾輩は寝なくても問題ない、金髪たちが休めればそれでいい」
「そっか、随分優しいんだね。元魔王様」
「お前何処まで知って……」
ルディリアが言いかけたのを遮るように扉を閉じて私たちを部屋へ案内する。案内された部屋はあまり使っていないとフィリアが言う割に綺麗に整えられており、落ち着いて過ごすことが出来そうだった。
「何か困ったことがあったら呼んでね」
それだけ言うとフィリアは早々に部屋を出て行ってしまった。残された私たちも特段やることもないので各々眠りについた。
* * *
窓の外から漏れ出ている赤色の光で目が覚める。眩い光と共に劈くような爆発音が遅れて響き渡る。
「何事⁉」
「あっちは……ジギラ火山の方です!」
「ねぇあれって……!」
お姉さまが指さす方向では龍の影が徐々に顔を見せている太陽に浮かんで見えていた。その影と小さな影が対峙していた。
「まさか……ナルディ様……⁉」
「おい! お前ら起きてるか⁉」
「あんな爆発音聞いて起きて無いやつがいるかよ」
「確かにね」
「そんなこと言っている場合じゃない! ナルディ・ロフが倒されれば炎国は文字通り火の海になるぞ!」
次回は6月30日です。




