第28話:瀕死少女と完全復活の魔王様
「ルディ……来るのが遅いよ」
「意外と地中は迷うものなんだぞ? とはいえ、悪かったな」
「あいつをぼっこぼこにしてくれたら許してあげる」
「お前結構余裕あるだろ……まぁいい、お前が神狼の第1位か」
「ふふふ……そう、私が神狼の第1位、炎狼ことシルドッド・ナンジェルエよ。よろしくね」
「よろしくも何も、お前にはここでくたばってもらうがな! 銀髪、援護しろ!」
「はい! お姉さま、リアちゃんをお願いします!」
「……気を付けてね」
「俺も手伝う。あまり魔法は使えないが、ある程度の補助ならできるつもりだ」
「お前、見たところ魔力量がかなりあるな。銀髪の魔法補助に回れ、こいつは強力な魔法を使えるが如何せん魔力量の枯渇が早いからな」
「分かった。リーライム、いつでも頼ってくれ」
「はい、頼りにしています」
「さてとお喋りは終わったかしら?」
「あぁ、覚悟しろ」
そう言うや否や、ルディリア巨体を震わせてシルドッドへ向かっていく。辺りに響く轟音を物ともせずシルドッドはそのまま迎え撃つ。
「あら、それは私のセリフよ。神級炎魔法‼」
神級炎魔法を持っている短剣に付与させてルディリアの巨大な頭にクロスさせるように食らわせる。
「くっ……神級闇魔法‼」
「上級天魔法!」
辺りが闇に包まれると同時にシルドッドがいたはずの場所を目がけて魔法を放つ。しかし、視界の先の闇の中から放たれる殺気が衰えることはなかった。
「直撃したはずじゃ……」
「銀髪!」
「えっ……」
シルドッドは闇に翻弄されるどころか、それすら利用して目の前にまで迫ってきていた。間一髪のところで避けたが魔法の追撃をもろに食らってしまった。
「ぐっ……ぁぁ……」
「銀髪! くそっ! 一旦晴らすしか……」
「あら随分悠長ね」
ルディリアの胴体の真横に瞬時に移動したシルドッドは容赦なく攻撃を食らわせる。ルディリアは小さなうめき声と裏腹に大きな体を横に倒す。
「ルディ‼」
「1撃1撃があまりにも重い……何が起こっていやがる……」
「それもそのはず……シルドッドはあのヴィリアンドと肩を並べるほどの強さを持っていますから」
「なるほどな……どうりで……」
「お姉さんたち! あと少し、あと少しだから……!」
「もう少しってどういう……」
リアちゃんが小さく言った言葉に疑問を投げかけようとすると、私たちとシルドッドの間に火の雨が降り注いだ。
空高くを見上げると巨大な龍がこちらを見下ろしながら悠々と羽ばたいていた。
「これは……?」
「皆様、遅くなってしまい本当にごめんなさい!」
「ナルディさん!」
「まさかこんなことになっていただなんて……シルドッド、あの時に私が殺したはずじゃ……」
「ふふふ、強い子がこんなに増えて私も嬉しいわ。けどあなた相手は分が悪いから……少しだけお暇させてもらうわ」
「逃がすか!」
ルディリアがシルドッドに向けて魔法を放つが魔法は空を切って近くの山肌に激突した。そのルディリアの表情は悔しさと共に安堵も漏れていた。
「皆様、大丈夫ですか⁉ こんなことになるとわかっていたら私もついていけば……」
「そんなの結果論に過ぎない。自分を責めるなナルディ・ロフ」
「ありがとうございます」
「そういえば、どうしてリアに行かせたの? 何かすることがあったとか?」
「えぇ。ルディリア様にこちらを……」
ナルディは手に持っていたものをルディリアの前に置く。それは何処からどう見ても私たちが探していた紫色の水晶だった。
「どうしてこれが……?」
「聞いたかもしれませんが、炎の神殿は一回大きく崩れてしまったのです。その時に結界も解かれてこの水晶だけが取り残されていたのです」
「意外と結界ももろいんだな……」
「これがラカルイアの手に渡る前に私の方で回収し炎国城にて保管していたのですが、再び作られた結界はサリ様によるものだったので解除するのに苦労してしまい……」
「そんなに自分を責めるな。お前が守ってくれたおかげで吾輩が最後の力を取り戻せるからな」
「そっか、これで最後なんだ……!」
ルディリアは巨大な図体で水晶玉を粉々に砕くと紫色の霧と光がルディリアの体を包み込む。巨大な影は少しずつ小さくなり、大きな羽の影が辺りを覆い隠す。
霧と光が完全に晴れたころ、物語に出てきた「ガラべドロ」と瓜二つな龍が私たちの前に降り立った。
「ルディ完全復活だー‼」
「るでぃりあさま、ふっかーつ!」
* * *
「復活……しちゃったわね。本当にこれでよかったのかしら?」
「あぁ、これで生贄は全て揃った。あとは奴らにここに来てもらうだけだ」
「それにしても自分で殺した相手を自分の手で復活させるだなんて……なんて皮肉な話」
「あの時の俺は周りを殺すことしか考えていなかった。しかし、あのお方のお陰で俺は神に為ることが出来る……!」
「そのためにまずは私を殺すのでしょう? さぁ、一思いにやって頂戴」
「いや、お前には最後の仕事が残っている。あの、ナルディ・ロフを殺せ」
「へぇ……? また意外な注文ね」
「俺は神となった後、あのお方を殺す。そうすればこのリウクスに脅威は完全になくなる」
「本当に過激な発想ばかりね、貴方は」
「そのために、あのお方の右腕である奴は殺さなくてはならない」
「なるほどね……けど、私に彼女は殺せないわよ。彼女は強い、それは数十年前に嫌というほど思い知ったわ」
「案ずるな。奴の魔力量はかなり減っている。あの鉄国の騎士と同じようにな」
「本当に過激な発想を持っていながら、本当に冷静ね……」
次回は6月29日です。
* * *
かなり短い回で申し訳ございません。
次回から話が動いていくのでここで切るしかなかったのです。
それでは次回をお楽しみに!




