第27話:興奮少女と何やら不思議な城主様
「ナルディただいまー!」
「おかえりなさいリア。そちらのお客様方は……」
「なんか町の入り口でナルディのこと話してたから連れてきちゃった!」
「リア、いい加減その勝手な行動を慎んでいただけませんか?」
「えへへ……ごめんなさーい」
「こほん、失礼。皆様こちらへどうぞ」
炎国城の長、ナルディさんはそう言うと少女と共に私たちを彼女の玉座の近くに招いた。恐る恐る近づいていくと、ナルディさんは突然席を立って私たちの顔をまじまじと眺める。
「お仲間が一人いらっしゃらないようですが?」
「え⁉ どうして知ってるの……?」
「もちろん知っていますよ。サリ様から連絡が届いていますから」
「本当にサリ様には助けられてばかりですね」
「だね!」
「それで……ルディリア様はどこに?」
「それなら多分地中に……」
「あ、え、はい?」
互いが厳しい表情だった中、ナルディさんはテンプレのような驚きと共に困惑した表情を露わにする。
「今、ルディは影蛇の姿になってるの。だから地上に出てこられなくて……」
「あ、あぁ……確かそんなことを……各影獣の姿に変えているとかなんとか」
「何それ! リアそのるでぃりあさまに会ってみたい!」
「リア、少し黙っていてください」
「はーい」
「そういえばこの子って……」
「彼女はリア・ユキザ。大昔の私の友人イルナ・ユキザのひ孫にあたる子です」
「これが人族と龍族の付き合い方かぁ……」
「それで、皆様はラカルイアを目指して旅をしている途中なのですよね?」
「うん。まぁ一先ずの目標は炎の神殿だけど」
「どこにあるかご存じだったりしませんか?」
「そうですね……リア、皆様をご案内なさい」
「はーい! じゃあ付いてきて!」
リアちゃんはそう言うと、ひょいと炎国城を飛び出して行ってしまった。後を追うようにお姉さまが飛び出していった。
「ナルディさんは……」
「私はここで待っています。良い知らせが届くことを願います」
「わ、分かりました?」
炎国城を出るとリアちゃんを追いかけるお姉さまを追いかけるミバイさんが視界の先の高い山へ続く小道を走っているのが見えた。
炎国城前の長い長い階段を急いで下り、暗い山道を進んでいく。しばらくゆるい傾斜が続いたのち、少しだけ開けた場所に出る。
「はぁはぁ……ここは?」
「あ、リィ! ようやく来たんだね!」
「お姉さんたち! 炎の神殿はこの先だよ!」
「よーし、じゃあ出発!」
「お前ら……少しくらい休ませてくれ……!」
「私もミバイさんに賛成です……」
不服そうなお姉さまとリアちゃんを横目に私とミバイさんは近くの丁度良さげな岩に腰を下ろす。
「そういえばリアちゃんはどうしてナルのお手伝いをしてるの?」
「えっとね、ナルディは私のお母さんなの!」
「それってどういう……まさか! ごめん! 嫌なこと思い出させちゃったよね……」
「ううん、気にしないでいいよ! リアあまり覚えてないし、ナルディがいてくれたから!」
「そうか……ラカルイアの連中はこんなところまで……」
「えっ……⁉」
「ルディリア⁉」
「あのるでぃりあさま⁉」
小さく聞こえていた地響きは少しずつ大きくなり、地面からは影蛇の姿となったルディリアが顔だけをのぞかせていた。
「これまた随分でっかくなっちゃったね……」
「あぁ、不便で仕方ない。さっさと影龍の姿にさせてくれ」
「じゃあ早いところ炎の神殿に向かわなきゃ!」
「はい、そろそろ出発としましょう」
「あぁ、また神殿で会おう。この先でいいんだよな?」
「うん! また後でねるでぃりあさま!」
「あぁ」
それだけ言うとルディリアは再び地面に潜っていった。聞こえていた地響きも少しずつ小さくなったころに私たちも山道を歩き始めた。
「そういえば聞きそびれてしまったのですが、ここって……」
「オドロ火山だよ! 炎国の真ん中にある一番大きな火山なんだ!」
「じゃあ鉄国みたいに頂上に……」
「ううん、もうそこに見えてるよ!」
リアちゃんの指さす先には既に石造りの炎の神殿の頭らしきものが見えていた。駆け足で進んでいくとその光景に圧倒されてしまった。
「火口……⁉」
「炎国城から見えてたのはもう死んじゃった火山なんだ。このオドロ火山の西側の火山はちょっと前に大爆発が起こってからこんな大きく凹んでるんだって」
「ちょっと前ってことはあの神殿は新しく作られたのか?」
「うん、ナルディが新しく作ったんだって」
「ちょっと待って、ってことは……」
「そうよ、ここには何もないわ」
声のした瞬間、お姉さまはリアちゃんと私を抱えて声とは反対の方へと飛び退く。
怯えた表情を見せるお姉さまと同じように怯える私の顔を不思議そうに交互にのぞき込むリアちゃんをお姉さまは私に抱えさせ離れるように言いつける。
「リアちゃん、少しの間だけ静かにしてて」
「うん、分かった……」
改めて声のした方を振り向くとブリムの長い帽子をかぶった背の高い女性が姿立っていた。牙のように鋭い短剣を光らせて堂々と立つ姿にはいつかの記憶と共に身の毛がよだつ。
「シルドッド・ナンジェルエ……! やはり貴方が……」
「何か勘違いしているようだけど、火山の噴火は私がやったわけじゃないわ。ただ、あなたたちがここに来ることだけは予想できていたからここで待っていただけよ、子猫ちゃん?」
「子供の時と一緒だと思わないで! 上級地魔法‼」
「あらあら、どうしてそんなに喧嘩腰なのかしら……? 神級炎魔法‼」
辺りの熱気以上の熱に全身が焼かれそうになる。自由自在に操られるの炎はまるで蛇のような形を成しながらお姉さまに襲い掛かる。お姉さまも必死に足掻くが戦い慣れしているシルドッド相手には防衛必死の様子だった。
私はと言えばどうしようもなくただお姉さまの無事を祈っていると辺りに聞き覚えのある地響きが聞こえてきていた。
「来……た!」
「待たせたな金髪銀髪‼」
「ルディリア!」
「ようやく姿を現したわね……闇の降臨者、ルディリア・ラム・ガムリオラ!」
「こいつは挨拶代わりだ! 神級闇魔法ァァアアア‼」
次回は6月23日です。




