第26話:謁見少女と威風堂々とした城主様
「ここだ」
ミバイさんの後を追って部屋の奥にあった階段をどんどん下っていくと、頑丈に閉められた扉が姿を現した。鎖や結界で完全防備された扉はこの部屋に何かが封印されていることを伝えていた。
「ここだけは絶対に入るなってディジーの姉貴に言われてたんだ。過去に馬鹿な奴が入ろうとしてディジーの姉貴に半殺しにされていたっけか」
「ひぇっ……」
「ただ問題があってだな、そんなことがあってから見ての通り信じられないくらい強固な鍵をつけちまったからよ」
「開け方が分からないってところか。まぁ吾輩に任せてみろ」
ルディリアは何とも思っていない様子で扉に近づいていくと、強固に封印されていた扉を思い切り蹴破った。
「そういう強引さ大好き」
「お姉さま、顔が死んでます」
「何でもいいだろ。開いたことに変わりはない」
「いやそうだけどさ……」
ルディリアはそのまま部屋の中央に浮かんでいた真っ黒な水晶玉に近づいていった。いつものごとく水晶玉を手に取り細い足で器用に地面にたたきつける。
「影鳥と来たので……マズイ! 皆さん、急いでこの部屋から出なくては!」
「リコラ、慌ててどうしたの……?」
「ルディリア様は影獣の姿に形を変えているんですよね? それなら次は影蛇のはず……!」
「急げ‼」
ルディリアの体が徐々に巨大になっていくのを尻目に残っていたリフィルのメンバーを引っ張りながら私たちはカールロ坑道跡に辿り着く。
「はぁはぁはぁ……一体なんだっていうんだ⁉」
「吾輩のせいで迷惑かけたな……」
「まぁ仕方ないですよ……」
「お前がさっきの鳥公なのか⁉」
頭だけをのぞかせている巨大な蛇を見たミバイさんはもう何が何だか分からない様子で半分怒りを混ぜたような表情で言い放つ。
「とりあえず無事に力が戻ったようで良かった……です……」
ルーレンスさんはそう言うと力が抜けたようにその場にへたり込む。お姉さまが急いで肩を貸し持ち上げる。
「ルーレンスさん大丈夫?」
「申し訳ございません……先ほどの影響で足を……」
落石が足に直撃したのか、ルーレンスさんの足は見てられないような曲がり方をしてしまっていた。
「吾輩が確認を怠ったせいだ……悪い……」
「ルーレンスさん……」
「よし、代わりに俺を連れていけ! ルーレンスさんは私たちリフィルが責任をもって預かっておく」
「なっ……⁉ ミバイさん、私としてはこれ以上ないほどうれしい限りですが……」
「命を晒すことになる、だろ? 分かってる、俺はさほど戦いが得意じゃない。だがな、ディジーの姉貴を助けられるなら俺の命くらい惜しくない!」
「何がお前をそこまで動かすんだ……?」
「俺は元々炎国出身でな。少し前にラカルイアの連中に攻め込まれて故郷の火山を丸ごと滅ぼされたんだ」
「やっぱりラカルイアの影響はどこにでも……」
「そのまま路頭に迷うことになってな、だが炎国は1種族1火山保有している国でな、私たち魔族はそのまま炎国城下町か鉄国に逃れることになったんだ」
「じゃあ……」
「あぁ、鉄国に逃れた俺はそこでディジーの姉貴に助けてもらったんだ。ま、俺の話はこれくらいでいいだろ。ともかく俺をお前たちと一緒に連れて行ってくれ」
「分かりました、ミバイさん私の代わりによろしくお願いいたします」
「あぁ! お前ら! ルーレンスさんをしっかり守っておけよ!」
『はい‼』
リフィルのメンバーに見送られてキサニ鉱山跡を後にする。東に見えているムクケア山アの頂上からは太陽が既に顔をのぞかせていた。
「もう朝……」
「まさかと思うがダンガルで見かけた時から寝てないのか?」
「そうですね……」
「それなら炎国城下町に急いで向かうとするか。そこならある程度休むところもあるだろ」
「いよいよ炎国……」
「日にちとしてはそこまでのはずですが、ラカルイアを逃げ出してからかなり経っているような気がします……」
「だね……お父様、あともう少しだよ……」
「さて、見えてきたな。あれが神代から続く要塞都市、炎国城下町だ」
龍族の身長ほどはありそうな巨大な塀にぐるっと囲まれた町は周りの火山に引けを取らない威圧感を放っていた。
「そういえばミィバはどうして炎国城下町の方に逃げなかったの? 地理的にも近いからいろいろと楽そうなのに」
「ミィバって俺のことか……? まあいい、その話なら町に入れば分かるぞ」
ミバイさんを先頭に城下町に入っていくと、一目ではただの人のようだが角や翼などが生えている龍族が多くいるのが理解できた。
「龍族って初めて見たかも……」
「この町を最初に作ったのは炎神セヴェリオハーラン・ナセンジェルエなのは知っているだろ? だが、かつての大侵攻で一回滅んでからは機能を停止していたんだ」
「確かそれを復興させたのが天神の側近で龍族の『ナルディ・ロフ』ですよね?」
「その通りだ。そんなこともあってこの町は龍族が多いんだ」
「もしかしてさ、今まで天神に関係のある人物を訪れていったから……」
「ナルディさんを探すことが先決ですね」
「ねぇねぇ、お姉さんたちナルディのことを言った?」
声のした方を振り返ると金色の長い髪を風にたなびかせた少女がベンチに座っていた。不思議に思って彼女の近くに寄ろうとすると、ひょいとベンチから立ちあがって軽い足取りで去ってしまった。
「あの子は……」
「追いかけてみよ!」
「大丈夫か……?」
ミバイさんの制止を振り切り、お姉さまは少女が進んでいった道を走っていった。後を追うように私とミバイさんも走り出す。
しばらく裏路地を縫うように進んでいくと私たちはいつの間にか炎国城に続く階段広場に辿り着いていた。
「ここって……」
「あれが炎国城……‼」
「あ、お姉さんたち来たんだ! こっちこっち!」
少女は何百段はあるであろう炎国城に続く階段をひょいひょいと登っていった。後を追うように登っていき、城に入ると赤い髪を膝ほどまで伸ばした龍族が足を組んで玉座に座っていた。
「ようこそ炎国城へ、お客人」
次回は6月22日です。




