第21話:進行少女と童話の最強軍人様?
「生贄って……」
「まさか……魔力量の検査を行っていたのはこのため……?」
「だからリィが王級だと分かった途端にいきなり追ってきたんだ!」
「じゃあ低級身分を排除していたのは……?」
「なるだけ高級身分を残すことで王級が生まれてくる確率を高めたんじゃないのか?」
「うわぁ……ってかそれならお父様が処罰された理由は……!」
「おそらくお父様もこの計画を知らされていたんだと思います。だから……」
「相変わらず悪趣味な野郎だ……」
「ただ不可解なことが……」
「というと?」
「この神格化の儀式について知っているのは神々とその知識と渡り合えるサリ様くらいのはずなのです」
「サリさんが教えるとは思えないし、神々はとっくにいないんでしょ? ならどうして……」
「今は考えていても仕方ないと思います。先に進みつつ考えていきましょう」
「銀髪の言う通りだ。あと、そんな悠長なことをしている暇はなさそうだ」
かなりの距離開いていたはずだったがいよいよグレイアルムとラカルイア兵がビレニまで近づいてきていた。
「さて……あなた達分かっていますね?」
『はい!』
リコラが他の影獣にそう声をかけると彼らはいっせいに隊列を成した軍隊に向かって一斉攻撃を始めた。
「今のうちに行きましょう。ここは彼らに任せておいて大丈夫です」
「姉さん、僕たちも加勢しましょう! 皆さん! 風国は僕たちに任せて早く鉄国に向かってください!」
「しょうがない……あんたたち! しっかりやってきなさい!」
「レイサイさん! ドレイキアさん! ありがとう!」
4匹と2人に別れを告げ、私たちは新たにリコラを仲間にルディリアに飛び乗った。ルディリアは猛スピードで風国を縦断し鉄国へと進んでいった。
「まずは何処へ向かおうか……」
「鉄国ということもありますし、カルロッテ・ホルン様のもとへと向かわれてはどうでしょうか」
「そういえばつっこんでなかったけど、リコラはついてくるんだね?」
「私もサタナ様のお創りしたリウクスがこのまま腐っていくのをただ見ているのはつらいですから……あ、ご迷惑なら今からでも風国に……」
「そんな心配しなくても大丈夫ですよ。むしろ当時のことを知っている方がいる方が助かります」
「だね!」
「ありがとうございます……! あらためてよろしくお願いします!」
影虎のリコラを新たに仲間とし、私たちは北の鉄国の大地を目指す。東に見えている地平線からは太陽が少しずつ顔をのぞかせていた。
しばらく飛び続けて風国と鉄国の国境を越し、この後どう動いていくかを話し合っているとき突然目の前を何かが横切っていった。
「なに⁉」
「攻撃されている! 金髪、銀髪、吾輩の代わりに応戦しろ!」
「は、はい!」
攻撃の飛んできた方を見てみると地上では何者かが大剣をこちらに向かって振っていた。大剣が1度振られるとこちらに向かって灰色の刃が飛んできていた。
「何が起きてるの⁉」
「この刃……もしかして……」
「リコラ、何か見覚えがあるのですか?」
「えぇ、もしかしたら彼女は……」
リコラが言い終わらないうちに何者かは大剣をこちらに向かって思い切り投げるとそれを蹴って飛び掛かってきていた。
「わわっ⁉」
「避けられん……!」
「その姿……それにカニス家の紋章入りの首輪……! まさか、お前……リコラか⁉」
「えぇ、カルロッテ様! 私です!」
「そうだったのか……いきなり攻撃するような真似をしてすまなかった。ひとまず私の家で話そう」
「そうしましょう。ではルディリア様、ソメカまでお願いします」
「あ、あぁ……?」
ルディリア含め私とお姉さまは何が起こったか分からないまま謎の鎧を纏った女性と共にソメカに降り立つ。
鎧を着た女性を先頭に町を進んでいくと道行く人が皆、彼女に向かって手を振っていた。どうやら怖い人ではなさそうだなどと思っていると町の中で一番大きいであろう兵舎に辿り着く。
「ここって……」
「入ってくれ」
そう促されて建物の中に入り広めの部屋に案内される。近くの4人掛けの机に腰を下ろすと鎧の女性は椅子に座る前に私たちの方を向いて膝をつき頭を下げる。
「あらためて、突然の攻撃を詫びよう。すまない」
「いえ……それは大丈夫なのですが、あなたはいったい……」
「兜を着けたままだったな。ちょっと待ってくれ」
目の前の女性は兜を外して姿を露わにする。その瞬間、私とお姉さまは口をそろえて大声を上げる。
『カルロッテ・ホルンさん‼』
「私の名を知っているのか?」
「カルロッテさん、あなたはサタナ様の仲間だったのですよ? 名が知られていてもおかしくはないでしょう」
「確かにそうか。それよりも、カニスの皆は元気にやっているか?」
「はい。少々仲違いもありましたが」
「そうか」
「それよりもずいぶんと気がたっているようですね? 一体どうしたというのですか?」
「それが、何が何だか知らないがラカルイアの連中が血相を変えて鉄国中をうろつきまわっていてな。それだけならまだいいんだが、そこらの一般人に危害も加えているみたいで見かけ次第潰しまわっていたところなんだ」
「相変わらず力で解決する姿勢は変わっていないのですね……」
「おい、いい加減吾輩たちも話に加わらせろ」
「あぁすまん。お前は……影鳥ミテアか?」
「違う。吾輩は闇の降臨者ルディリア・ラム・ガムリオラだ。と言っても元だが」
「そうか、お前たちがサリの遺言にあった旅人か。無事にここまで辿り着くなんて……やるな」
「ちょっと待って⁉ 遺言って言った⁉」
「言ったが……?」
「じゃあサリさんは……」
「知らなかったのか? やつはちょうど1週間前に死んだぞ」
「1週間前って……」
「吾輩たちが水国を脱出した日だ……」
「あの時……!」
申し訳なさと心苦しさと懐かしさと、いろんな感情が一斉に私たちの心に突き刺さる。数秒の沈黙が流れていたがカルロッテさんが容赦なく破る。
「私の旧友に哀悼の意をささげてくれるのはありがたいことだが、今は行動あるのみだ。それを忘れるな」
「は、はいぃぃぃぃ……!」
「お姉さま……涙で顔がぐちゃぐちゃですよ……」
「リィも同じだよぉぉぉぉ!」
「サリ・ドラン……すまなかった……」
「……こんな事を言うのは何ですが、カルロッテ様がサリ様の死を一番悔しがりそうなものですが……確かお二人は数百年の仲なんですよね?」
「あぁ」
「それならどうして……?」
「私含めもう長い命じゃなかったからな。いつ死んでもおかしくないときにお前たちの助けとなれたことが嬉しかったんじゃないかと思うんだ」
「そうですか……って、カルロッテ様も……⁉」
「あんな戦い方をしていたのに……?」
「あぁ。最後くらいサタナの残したリウクスを守る手伝いをさせてくれ」
「カルロッテさん!」
さっきまで大泣きしていたお姉さまは何かを決心したような表情を見せてカルロッテさんの手をしっかりと握った。
「一緒にサリさんの仇とんなきゃ!」
「お姉さま、さっきまでの話を聞いてなかったのですか……?」
「聞いてたよ! でも! 友達が殺されたことに腹を立ててないわけないじゃん! でしょ⁉」
お姉さまの迫真の勢いに流されてカルロッテさんは一瞬きょとんとした表情を見せていたが、口元を少しだけ緩めた。
「隠していたつもりだったんだが……ははっ、敵わないな」
「あははっ! これから一緒に頑張ろ!」
「あぁ、よろしく頼む!」
次回は6月2日です。




