第20話:唖然少女と醜い降臨者の真実
切りどころが見つからなかったため今回はいつもより長くなっております。
フワヴリアの怒号を背に水晶玉を思いっ切り地面にたたきつける。真っ黒な光と霧は鳥のカタチを成しながらルディリアへと取り込まれていった。
「風龍! いてまえぇぇええええ‼」
ようやく鎖から解き放たれた風龍は未だ霧に包まれたルディリアへと突撃していった。
「神級闇魔法」
次の瞬間、風龍の姿は跡形もなく消え去っていた。フワヴリアは動揺した様子を隠すことなくルディリアへと特攻していく。
「神級風魔法ィィィイイ‼」
「無駄だ‼」
霧が晴れると、大きな翼を携えたルディリアが神殿の中を自由に飛び回っていた。落ち着きを取り戻し始めたフワヴリアはルディリアを討ち取るべく弓を構えては放つ。
力強くひかれた矢ではないとはいえ、神狼が放ったものなので矢が何本も命中した神殿は少しずつ壊れ始めていた。
「ちょっと……これ危ないんじゃ……‼」
次の瞬間、壁に入った亀裂はいよいよすべて繋がり神殿は大きな音を立てて崩壊し始めた。ルディリアは私たちを背に乗せると、神殿の外に出て風の峠で待機していたレイサイさんと合流する。
「皆さん! いったい何が……」
「あとで説明するから早く乗って!」
お姉さまが強引にレイサイさんの腕を取ってルディリアの背へと引っ張る。それを確認したルディリアは急いでその場から飛び立つ。
次の瞬間、完全に瓦礫となった風の神殿が風の峠に落下した。神秘的な輝きを放っていた装飾はその光を失い、ただの瓦礫の山が形を成していた。
「フワヴリアはどうなったのでしょう……?」
「流石に死んだんじゃない……?」
「まぁ人間で飛べる奴など聞いたことないからな」
「フワヴリア……やはり神狼が?」
「うん。でも、ルディリアがやっつけちゃった!」
「そういえばレイサイさんはルディリアの姿が変わっても驚かなかったね?」
「サリおばさんから話は聞いていましたからね。ってあれは……」
レイサイさんが指さす方では瓦礫の山の中から緑色の水晶玉が浮かんでいた。ふわふわと浮かんで何かを探すような挙動を見せたかと思えば、一直線に私のもとへと飛んできた。
「地国の時と同じか……」
「もしかしなくても神級風魔法が使えるの⁉」
「分からないです……が、風属性の魔力が体を巡っているのを感じます」
「フワヴリアの真似してみたら?」
「真似……」
さっきまでのフワヴリアのように弓を構える姿勢をとる。その瞬間、緑色の光と共に両手には弓矢がしっかりと握られていた。
「神級風魔法‼」
天に向かって放たれた矢は綺麗な直線を描いて進んでいった。矢がかなりの高さを上ったであろうころ、金属と金属がぶつかるような変な音が響き渡った。
「あっ……!」
「冗談だろ……?」
神級風魔法は風国を囲んでいたルディリアの結界と衝突していた。ひびが縦に入ったかと思えば、結界は粉々に砕け散った。
「ま……まずいです!」
流石に異変に気が付いたのか、ラカルイアからグレイアルムと大量の兵士が風国に流れ込んでくる。鬼の形相をした彼らはまっすぐ風の峠に向かって走ってきていた。
「ど……どうしよう‼」
「いや、こっちに来ているなら好都合だ。今のうちにカニスに行かれてもドレイキアに示しがつかないからな」
「それはそうかもしれませんが……!」
「こんな時に言うことじゃないかもしれないけど……さっきレイサイさん何か言いかけてなかった?」
「もしかして今なら……! ルディリアさん、彼らを引き付けて風国の南西、ビレニに向かってください!」
「何をする気だ?」
「もしかしたらあなたなら彼らを使うことが出来るのかもしれません。影獣を!」
レイサイさんの言葉を聞いたルディリアは私たちを乗せたまま高く飛び上がりグレイアルムたちを挑発すると南西に向かってスピードを上げていった。
目論見通りグレイアルムは私たちの後を隊列を成して迫ってきていた。
「影獣ってあの天神が従えていた魔物のことだっけ……?」
「えぇ、その通りです。天神様がこの地を去った時、仲間であった私の祖父メギル・カニスの手に預けられたのです。お爺様は自身の魔物研究所にて彼らを管理していたのですが、私の父シイラ・カニスの手に渡った途端、彼らは狂暴化してしまい手に負えなくなってしまったのです……」
「どうして……?」
「はっきり言って分かりません。手がかりとしてあることと言えばその時はリウクス大戦が起こっていたということくらいで……」
「そういえばリウクス大戦って話は聞いてるけどどんなものだったの?」
「そうかお前たちは知らないのか……」
「あれは酷く惨い争いでした。神々がリウクスを去った後、降臨者がリウクスを統治したのは知っていますよね?」
「うん、その中の一人がルディだったんでしょ?」
「その通りです。ご存じの通り降臨者は6人、各国を任されていました。しかし生物というのは何処までも欲に塗れています。あるとき、炎の降臨者が鉄国へと侵攻を始めました」
「なっ……!」
「もちろん易々と攻め入ることはできず、この争いは長期化し双方は疲弊しました。それを待っていたとばかりに水の降臨者と地の降臨者が手を組んで鉄国と炎国を掌握しました」
「醜い……」
「えぇ、本当に。しかし、所詮は一時の欲のために組んだ仲。崩壊は火を見るよりも明らかでした」
「じゃあもしかして……」
「それを鎮めたのが吾輩だ。かなり苦労したのを今でもよく覚えている」
「その結果、ルディリアさんによってリウクスは一時平和の時を迎えました」
「じゃあどうしてヴィリアンドが……」
「続きを話してやってもいいが、また今度だ。着いたぞ」
話に夢中になっていて気が付かなかったが、私たちはいつの間にかビレニの上空に辿り着いていた。
「確かにあの小屋から天神と同じ雰囲気が漂っているな……」
「やっぱりそうなんですか?」
「あぁ。だが、吾輩の味方となるかは……」
木の柵で囲われた町ビレニの建物はほとんど倒壊しており、真ん中にある小さな小屋の身がぽつんと立っていた。
「大人しくしているといいんですが……」
「あんたたち来たのか。あーし待ちくたびれちゃった」
「遅くなりました姉さん。鍵の方は……」
「一応持ってきたけどさ。見てよこれ」
小屋のすぐそばに立っていたドレイキアさんは木っ端みじん一歩手前の南京錠を見せ、開け放たれた小屋の戸を指さす。
「もしかして自由に動き回ってるってこと……?」
「1匹でもかなり危険だというのに……」
「レイサイの言い方から察するに5匹揃っているんだろう?」
「えぇ、まぁ……」
「気を着けなきゃ……」
「いんや、その必要はないみたい」
ドレイキアさんが指さす方からは影龍、影陀、影鳥、影亀、影虎が我先にとこちらに向かって走ってきていた。
「5体揃ってると壮観だね……」
『サタナ様ぁぁぁあああ‼』
5体の純白の魔物はそう叫びながら突き飛ばすような勢いで私に突撃した。意味不明な光景に私たちは揃って頭に?を浮かべる。
「お帰りになられたのですねサタナ様……じゃない⁉ こ、これは失礼いたしました‼」
「でも確かにサタナ様の雰囲気は感じたよね……?」
「じゃあどうして……」
「おい、悩んでいるところ悪いんだが喋れるなら自己紹介をしてくれ」
「はっ……申し訳ございません。私は影虎、ことリコラです。そして、亀がカルエ、鳥がミテア、蛇がネユン、龍がテナウです。よろしくお願いします」
「名前がいっぱい……」
「何を当たり前のことを言ってるいのですかお姉さま……」
「まぁいい。吾輩は知ってると思うがルディリア。そしてこっちの金髪がラッセム、銀髪がリーライムだ」
「名前覚えてるなら名前で呼んでくれてもいいじゃん!」
「お姉さま、いまはそこではありませんよ」
「むぅ……」
「それで、どうして銀髪を天神と間違えた?」
「どうしてと言われましても……天神様の雰囲気を感じたからとしか説明のしようが……」
「確かサリさんも同じことを言ってたような……?」
「あれは本当だったのか……」
「それよりもルディ! 言うことがあるじゃん!」
「そうだったな……頼む、吾輩たちに力を貸してくれ」
「えぇもちろん」
「随分と速い承諾だな……?」
「えぇ、我々は神に仕えた身。神の後継者である降臨者に仕えることは当然です」
「なら話は早い、早速奴らを相手どろう」
「その前にヴィリアンド王の話をさせてください。彼をずっと調べていて分かってきたことがあります。あなたたちなら話してもよいかと……」
「話してみろ」
「はい、分かりました。端的に言うなら、彼は神格化の儀式を行う気でいます」
「シンカクカ?」
「簡単に言うなら彼自身が神に為ろうとしているのです」
「そんなことが出来るのか⁉」
「もちろんそんなに簡単なことではありません。必要なのは『自身が王級であること』と『王級の生贄を用意すること』です」
次回は6月1日です。




