第19話:出陣少女と最後に笑うは如何者か
えぇ、全て手筈通りに。彼女らは風の力を手にしあなた様のもとへと向かうことでしょう。どうかご安心ください。ここは何があっても私が守ってみせます。あなたの御心のままに、天神サカルリパライニカタ・ルサソレーナ様。
* * *
レイサイさんに見送られて風の神殿へと繋がる上昇気流に身を任せる。体が軽くなる感覚を覚えたかと思えば、体はみるみるうちに地上から離れあっという間に風の神殿がある浮島に足を着けていた。
「あっという間でしたね」
「あぁ、さてと……風国最後の仕事をするとしよう」
「うん! でもそんなに気を引き締めなくたって……」
「この頭は何のために付いているんだ? 飾りか?」
「なんで急に煽られてるの⁉」
「お姉さま……私たちはまだ風国で神狼に会っていないのをお忘れですか?」
「あっ……」
「そういうことだ。気を付けて向かうぞ」
ルディリアを先頭に進んでいくと、他の国の神殿と同じような部屋と共に見慣れない影が姿を現した。
キモノを纏い、頭には立派なかんざしをつけた女性はこちらに向けて笑顔を向けて小さく手を振っていた。しかし、彼女からは気品と共に殺気と憎悪が溢れていた。
「おでましか……」
「あらぁ、そんな顔せんとってください。おとろしいわぁ」
「あなたは……」
「お二人もお元気そうで何よりやねん」
「そんなこと微塵も思ってないくせに……」
「あはは、良くお分かりやね。あらためて……ウチは神狼、第3位の風狼ことフワヴリア・シルヴェストリや。お手合わせのほどよろしゅう頼んます」
「来るぞ……」
フワヴリアは椅子から立つことなくその場で呪文を唱え始める。その様子を煽られたように感じたのかお姉さまはためらうことなく飛び掛かっていった。
「そんなに悠長な態度をして馬鹿にするのも大概にしなよ! 上級鉄魔法‼」
「お前……‼」
「馬鹿になんてしてまへんで……ウチの呼び声を聞けや。炎死霊、地人形‼ いてまえ‼」
「わぁあああ⁉」
床から突如現れた巨大な拳にお姉さまの体が突きあげられた。急いでお姉さまの体を抱えて近くの大岩に回り込む。
しかし、瞬時に2体の使い魔の攻撃によって容赦なく岩は砕かれる。
「ルディリア! 助けてください!」
「任せろ。神級闇魔法!」
「リィ、私なら大丈夫だから。リィは離れてて!」
「いえサリさんの努力を無駄にするわけにはいきません。私も戦います!」
「……分かった。じゃあ、私に続いて!」
「お姉さま……はい!」
『上級水魔法‼』
お姉さまと私の両手から放たれた水流は2つ合わさって濁流となって闇に惑わされていた使い魔たちに襲い掛かる。
ルディリアに気を取られていた使い魔たちは強烈な不意打ちによって吹き飛び神殿の壁にたたきつけられる。
「へぇ、予想外や」
「流石はサリ・ドランに習っただけはあるな」
「しゃあない、少し早いかもやけど……覚悟したってぇやぁ‼ ウチの呼び声を聞けや。風龍‼」
「……!」
「恐怖で声も出まへんか、まぁ当たり前のことやろな」
「怖くはないんだけど……あれって……」
「あぁ、レイサイが乗っていた龍と同じに見える……」
「つまりどういうことですか……⁉」
「分からん。だが、今は戦うしかない」
「だよね……リィ行くよ!」
「はい!」
「ルディは支援をお願い。あいつの視界を塞いで!」
「お安い御用だ。神級闇魔法……! くぅ……‼」
「ルディリア⁉」
「ジブンの相手はウチがしましょう。風龍、彼女たちの相手は任せたで」
「ちっ……流石に見てるだけなんてことはないよね……」
「今は目の前のことを何とかしましょう。むしろ、ルディリアがフワヴリアを抑えている間にあれを奪えさえすれば……!」
「そっか! よし、ドラゴンさんこちら! 手の鳴る方へ!」
お姉さまが風龍に向かって手を叩いて挑発する。完全にお姉さまの方へと視線がずれたところに魔法を構える。
「中級鉄魔法‼」
魔法は風龍の羽の付け根に直撃しバランスを崩す。しかし、風龍は大きく口を開くと風属性の霧を辺りにまき散らす。
「痛っ⁉」
「なにこれ……魔法とも違うけど、攻撃性が高い……!」
「気をつけろ! そいつはブレスだ! 当たると魔法よりも体力を奪われるぞ!」
「そないなこと言うとる場合なんでっか? 神級風魔法‼」
フワヴリアは自身の身長の数倍はあるであろう弓を引き絞ってルディリア目がけて放つ。残像のみを残した矢はルディリアに直撃した。
「ルディ! うわぁああ⁉」
ルディリアを助けようと2人の間に割って入ろうとしたお姉さまの体を風龍は軽々と突き飛ばした。
遺跡の壁にぶつかり、粉々に割れた石がお姉さまの体に転がっていく。その様子を見た風龍はゆっくりとお姉さまに近づいていった。
「逃げてお姉さま‼」
「ふふっ……かかったね!」
お姉さまの小さな声が聞こえたかと思えば、風龍の頭、足、翼には鉄の鎖がかかっていた。
「なっ……⁉」
「あいつ……いつの間にあんなものを仕込んでいたのか……」
「へへっ! さぁ、リィ! 今だよ!」
「え、あ。はい!」
「させへん‼ って……ジブン放しや!」
「お前の相手は吾輩なんだろうが‼ 銀髪行け!」
急いで奥の部屋まで走る。頑丈そうな扉を開けると、マーレ式の部屋の中央にはいつものごとく真っ黒な水晶玉が浮かんでいた。
「これで3つ目!」
「や……やめやぁぁぁあああ‼」
次回は5月26日です。




