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第17話:立腹少女と責められたじたじな弟分

「あなたはいったい……」

「サリおばさんから連絡を受けてあなた方を探していたのです」

「お前もか……」

「本当にサリさんには頭が上がりませんね……」

「今度何かお土産を持って行かなきゃね!」

「確かにそうですが、今は……」

「そうだな。おい、レイサイと言ったか。吾輩たちは今どこに向かっている?」

「今は西マーレに向かっています。西マーレはラカルイアに近い関係上あまり人がいないので身を寄せるのにちょうどよいかと」


 レイサイがそう言うや否や、風龍(ウィンドドラゴン)は少しずつ高度を落として西マーレの近くを流れる川のほとりに着陸した。


「少し離れてるみたいだけど……?」

「いくら僕が使役しているとはいえ魔物は魔物。一般人から見れば厄災の象徴ですから」

「まぁ当たり前だな」


 川のほとりからしばらく歩かないうちに小さな町が見えてきた。レイサイの言う通りあまり賑わっている様子はなく静かな町だった。

 レイサイは町に着くや否や、近くの建物に入っていった。続くように入っていくと研究所のような家に案内された。


「あらためて……僕はレイサイ・カニスです。あなたたちのことはサリおばさんから聞いています。なんでもそちらのリーライムさんが王級(キングクラス)であり、王様から目をつけられていると」

「そうなんです……」

「そしてそちらの亀がルディリア・ラム・ガムリオラ、かつてリウクス地方全土を掌握した魔王様ですよね?」

「あの魔女……本当に全部話したのか……」

「そんなに警戒しないでください……というのは無理な話ですね。ですが安心してください。僕はさっきも言った通りあなたたちを助けるために来ました」

「そうか、なら聞いているとは思うが吾輩たちを風の神殿に連れて行ってくれ」

「はい、分かっています。ですがお連れすることはできません」

「なっ⁉」


 レイサイの言葉を聞くや否や、ルディリアとお姉さまがレイサイに詰め寄る。2人の圧に腰を抜かしたレイサイは体を小さく震わせながら首を大きく横に振る。


「ま……待ってください! 僕が道を塞ぐわけじゃなくて僕の姉さんが……」

「姉さんって……あの……誰だっけ?」

「ドレイキア・カニスのことか? あいつがなんだっていうんだ」

「聞いたかもしれませんが姉さんはカニス村の村長なんです」

「確か言ってましたね」

「それとこれに何の関係があるんだ?」

「えっとですね……カニス村の村長は代々『風の祀り人』という役目を担うのです。はるか昔。この仕事は風の峠より流れる風が滞ることなく吹くために儀式をする人々のことを指していたのですが、今は風の峠の管理者という立場になっています」

「つまり?」

「ルディまだ分かんないの?」

「お前に言われると腹が立つな……言いから説明してみろ」

「仕方がないな! 風の神殿は風の峠にあるの。だから、風の峠の管理者に通行を認めてもらわなきゃいけないってわけ!」

「ラッセムさんの言う通りです。なのでまずは姉さんの信用を勝ち取る必要があるのですが……」

「難しいだろうな……」

「というかどうしてドレイキアはあんなに私たちのことを敵対視してたんだろ……?」

「分からないが、ラカルイア側の人間という解釈でいいんじゃないのか?」

「いえ、違うんです……」

「つまり?」

「姉さんはむしろラカルイアの人間を恨んでいます。私たちの両親はグレイアルムによって殺されたので」


 レイサイのまさかの一言に私たちの表情は一層固まる。しかし、言った張本人のレイサイはいたって普通の様子を見せていた。


「なっ……それなら尚更どうして……?」

「姉さんはそれと同じくらいカニスを愛しています。カニスの存続のためならなんだってやる、それが今の姉さんです」

「確かにそんなことを言ってたな……」

「じゃあ私たちが何とか出来ることを証明しなきゃ……」

「でもどうやって……? カニスは王様に睨まれている状況なんですよ? 私たちが風の神殿に侵入した話を聞けば……」

「まぁ間違いなくそれを口実にカニスは滅ぼされるだろうな」

「間違えて入っちゃった~ってのはだめだよね……」

「当り前だろう……」


 しばらく試案するが特にこれと言った案が出ることはなく完全に日が暮れてしまった。そのままレイサイさんの研究室で一晩明かすことになった。


 * * *


「一睡もできなかった……」

「金髪が? 明日は雨だな」

「傘を準備しましょうか」

「ちょっと! なんか寝られなかっただけだから!」

「それはそうとレイサイはどうした?」

「何やら薬草を取りに行くとかなんとか。しばらくは姉さん、ドレイキアさんに見つからない程度に自由にしていてください、だそうです」

「そうか、それなら少し調べてみたいことがある」

「というと?」

「三日月の湿地だ」

「あぁ! ルディがいきなり魔法を使えるようになったところ?」

「そのことだ。吾輩自身も何があったのか全く分かっていなくてな」

「なるほど、それなら三日月の湿地に向かうとしましょう」


 私たちは東の地平線から昇り始めている太陽を背中にマーレ西からさらに西に進んだ先にある三日月の湿地へと歩を進めた。

 ラカルイアに近いこともあって道中グレイアルムやラカルイアに向かう商人たちがうろついていたが三日月の湿地は街道から外れているためか人通りはほどんどなかった。


「さてここだが……お前たちお得意の童話の知識でここが語られているところはないのか?」

「無いことはないのですが……」

「まぁいい、話してみろ」

「ここはかつて虚龍ガラべドロ・オルグログラムが大侵攻を起こした場所です」

「大侵攻っていうのはね、ガラべドロっていう昔天国に住んでいた悪いやつが自分の領地を他の国に作ろうとして攻め込んだことを指すんだ!」

「説明ありがとうございます。その大侵攻をちょうどマーレに滞在していた天神様が見かけたという記述が載っていますね」

「なるほど……? つまりさほど重要な場所ではないのか?」

「そういうことですね。少し引っかかることと言えば、ルディリアが使う魔法は虚龍ガラべドロと同じ闇属性ということでしょうか……」

「確かに何かありそうだね」

「まぁ吾輩の力の祖だしな」

「……えぇぇぇええええ⁉」

「ちょっと待ってください……つまり、ルディリアは降臨者ということですか⁉」

「言ってなかったか? そうだ、吾輩は100年前に天神サカルリパライニカタ・ルサソレーナから闇属性の力を授かった降臨者だ」

「そういうのは早く言ってください‼」

「そうだよ!」

「いや、分かっていると思ってたんだ……悪かったな」

「驚きの真実すぎるよ……」

「本当ですよ。ただ、それなら辻褄は合いますね。おそらくこの地に残った虚龍ガラべドロの力がルディリアに何らかの形で作用した結果魔法が一時的に使えるようになった」

「リィの神級魔法みたいにってことだ!」

「なるほどな……それなら事態を解決できるかもしれないぞ……?」


挿絵(By みてみん)

次回は5月19日です。

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