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投獄少女と訳ありそうな兄弟

 朝になっても近くにはグレイアルムやラカルイア兵がうろついているので、私たちは地図を見ながら進むべき道を考える。


「さて……どうやってあの包囲網を潜るか……」

「強行突破!」

「黙っておけ」

「はい」

「東に向かってカニス、ビレニ側からぐるっと回るのが妥当かと思うのですが、どうでしょう?」

「吾輩も同意見だ。だが、この辺りは人が少ないこともあって治安が悪い。それでも大丈夫か?」

「不安だけど……行くしかないんでしょ?」

「まぁそうなんだがな。よし、まずはカニスだ」

「しゅっぱーつ!」


 背の高い草に隠れながら東にある風国随一の都市、カニスを目指す。もちろん随一と言ってもアルミドなどに比べればかなり小さい都市である。


「こんなんでバレてないのかな……?」

「静かにしておけ、幸いにも吾輩含めそんなにでかいやつはいないからバレることはないだろう」

「お姉さまは結構大きめだと思うんですが……周りの草木が黄金色なおかげであまり目立たずに済んでいますね」

「金髪、周りにグレイアルムは見えるか?」

「ううん。もう見えないよ」

「流石にこの辺までは追ってきてないみたいだな。銀髪、ここからカニスまであとどれくらいだ?」

「ええと……お姉さま、八重塔はどの方角に見えていますか?」

「八重塔ってあれだよね……北じゃない? って、あの辺の建物がカニスか!」


 おそらくカニスを見つけたお姉さまはスピードを上げて村まで走っていく。辺りにグレイアルムらの姿は見えないとは言え恐る恐る背を低くしながらお姉さまの後を追った。

 カニスはうわさに聞いていた様子とはかなり異なっていて、人で溢れかえっており活気に満ち満ちていた。


「着いたはいいですが……この後はどうしましょうか?」

「ってか張り紙の件は大丈夫なのかな?」

「あっ……! すっかり忘れてました‼」

「おいおいしっかりしてくれよ……」

「あぁ、あんたたちがサリおばばが案内しろって言ってた人たちだよね? 分かりやすくて助かるー」

「うん?」


 声のする方からは気のよさそうな高身長の女性が手のひらをひらひらさせながらこちらに向かって歩いてきていた。何体かの魔物を引き連れていた彼女は異様な雰囲気を放っていた。


「お前は……」

「そんな警戒しないで……ってのは無理な話か。あーしはこのカニス村の長、ドレイキア・カニス、よろしくー」

「よ、よろしくお願いします?」

「一応確認だけど、あんたがリーライム、それにラッセム。その亀がルディリアだね?」

「さっきサリ・ドランがどうとか言ってたが……」

「そうそう。サリおばばから連絡をもらってね。あんたたちの力になってあげてってさ」

「なるほど、それなら話は早い」

「それじゃあついてきて」


 ドレイキアさんはカニスの街へと進んでいった。彼女の後を追って私たちも進んでいこうと歩を進めようとする。

 しかし、ドレイキアさんの後ろで待機していた魔物たちが私たちの行く先を阻むように立ちはだかった。


「何の真似だ?」

「ごめんね? あーしはあんた達に力を貸す気はさらさらないの。だから……」

「それって……」

「走れ!」


 ルディリアが何かを察した瞬間、魔物たちが一斉に襲い掛かってきた。何とか逃げようともがくが全く意味を成さずに魔物たちに3人そろって確保され、意識を失う寸前の状態にされてしまった。

 

「くっ……どうして……」

「どうして? 理由は簡単。あーしがあんたたちを助けるメリットがないから。それどころかあんたたちを助ければ国に狙われて爺様から守ってきたカニスを失うことになりかねない」

「待って……!」


 そんなお姉さまの叫びも虚しく、捕らえられた私たちはどこかに運ばれて牢のような場所に放り込まれてしまった。薄暗く狭い部屋なのにもかかわらず天井は見えないほど高かった。


「どこここ……?」

「目隠しさえれてたからわからないけど……おそらく太陽の光の見え方的に北上していたはず……」

「北ですか……もしかして八重塔でしょうか?」

「八重塔っていうと、大昔のマーレの中心にあったやつ?」

「はい。八重塔ならこの高さも説明着くかと」

「なるほどな。だとしてどうしてこんなところに……」

「やっぱりここだった……」

「ん? お前らなんか言ったか?」

「いいえ。上の方から聞こえてきたようですが……」


 真っ暗だったはずの頭上を見上げてみると、途中の窓が一つ開かれており人影が1つ見えていた。

 人影はロープのようなものをこちら側に流すと、ロープを伝って私たちの目の前まで降りてきた。


「お前は……」

「驚かせてしまいごめんなさい……僕はレイサイ・カニスです。説明したいことはいろいろありますが……まずは移動しましょう。ついてきてください」

「ついていって大丈夫なんだよね……?」

「抜け出せるならこの際罠でも何でもいい。さっさとついていくぞ、ほら吾輩を抱えろ」

「偉そうなカメさんだな……」


 文句を言いながらもお姉さまはルディリアを抱え上げてレイサイが垂らしたロープを上っていった。


「彼の背中に乗ってください、少し狭いかもしれませんが……」


 レイサイに言われるがまま窓の外で待機していた風龍(ウィンドドラゴン)にすし詰めになりながら乗ると、レイサイは手綱を握ってどこかへと向かっていった。


挿絵(By みてみん)

次回は5月18日です。


 * * *


(追記:5月19)

投稿の一部が消えていることに気が付いたので直しました。

遅くなってしまい申し訳ございません……!

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