第12話:秘密少女と作業没頭中の大魔導士様
川の跡を上っていき、ケミシラに続く橋の下までたどり着く。盆地の中心からから見た通り、人がギリギリ通れそうな洞窟が口を開いていた。
「ここならそうと言ってくれればよかったのに」
「彼なりの抵抗なんじゃないですか?」
「最後まではた迷惑な奴だ。よし、乗り込むぞ」
「でもそんなに気合い入れなくいいんじゃない? 前回邪魔してきたロットイラ、つまり今回でいうテクシエはさっき倒されちゃったんだしさ」
「確かにそうかもしれないが、ほかの奴が邪魔してこないとも限らない」
「そうですね。用心することに越したことはないと思います」
「それもそっか」
ルディリアを先頭にして縦に並んで狭い洞窟を慎重に進んでいく。しばらく道なりに歩いていくと高い天井の広い場所に出た。
「ここが水の神殿だよね……」
「童話の通り、煌びやかな場所ですね。確か水神が宝石などを好んでいたのでしたっけ」
「そうなのか……っと、あれだな」
水の神殿の中央には地の神殿で見たものそっくりな真っ黒な水晶玉が浮いておりその周りには結界が貼られていた。
ルディリアが結界内に入ろうとすると、何かが弾けるような音と共にルディリアはその場を飛び退いた。ルディリアの体は所々焦げており、その場に倒れこんでしまった。
「えっ……⁉」
「流石に迂闊だったか……くっ……」
「大丈夫ですか⁉」
「なんとかな……」
「どうして……? 地の神殿の時、私は大丈夫だったのに……? 私がやるしかないってこと……?」
「お姉さま……流石に危険です!」
「止めておけ! 解除方法を見つけるべきだ……っておい!」
私やルディリアの静止が聞こえていないのかお姉さまは結界の中へと入っていった。恐ろしさのあまり目を瞑る。
しかし、次に目を開けた時、お姉さまは何の問題も無さそうな様子で真っ黒な水晶玉を手に持って結界から出ていた。
「どういうこと……?」
「何が起きている? あの結界はあくまで吾輩対策であって他の奴には何も起きないってことか……?」
「それなら私が触ってみれば……」
「確かに一番確実で早いが……」
「ダメだよ! ルディだったから大丈夫だったかもしれないけど、リィだったら……」
「しかし……」
「ダメったらダメ! 私が入れるから特にリィが入る必要もないんだし!」
「それはそうだな。こんなところで犠牲がでたらそれこそ間抜けだ」
「その話は置いておいて……ほら、ルディ」
「あぁ」
ルディリアはお姉さまから真っ黒な水晶玉を受け取ると思い切り地面にたたきつける。中から姿を現した紫色の光と真っ黒な霧によって視界を塞がれる。
しばらくして視界が元に戻ると、私たちの前で虎の姿をしていたはずのルディリアは黒色の亀に姿を変えていた。
「亀……?」
「虎の次は亀か……何かで見たような並びなんだが……」
「やっぱりルディリアも何か思うところがあるんですね。私も何かはありそうだと思っているのですが……」
「黒色の水晶玉とかルディが姿を変える感じとか、地の神殿と一緒だね」
「ですが、地の神殿と違って私が開けた扉が無かったですね」
「そういえば……入口があんなに見つけづらいところにあったからいらなかったんじゃない?」
「まぁそれはあるだろうな」
「それじゃあルディの力が戻ったところでさっさとここを出てサリさんのところに戻ろ!」
「そうですね。いろいろと聞けることもありそうです」
そうして私たちは水の神殿を後にしてケミシラのスムスドン国立図書館を目指す。しかし、ケミシラを前にしてあることを思い出した。
「入れないんだった……」
「どうやってサリさんに気づいてもらいましょうか……」
「流石サリ様、予想通りですね」
「うわぁ⁉ コワグさん⁉」
「はい、コワグですよ~。サリ様からそろそろ帰るころだろうし迎えに行けと命じられてここに来ました!」
「それなら話が早い。それじゃあ頼んだぞ」
「あぁ、この亀さんがルディリアでしたか! なるほど……移動魔法!」
コワグさんの魔法でスムスドン国立図書館の中まで戻ってくるとサリさんが出迎えてくれた。なにやらさっきまで忙しくしていたのか身なりがかなり荒れていた。
「こんな姿で悪かったの。ちょっと忙しくしていたところだったんじゃ……その亀がルディリアかの? ふむ、虎の形態から思っておったがルディリアの形態は影獣と同じなんじゃな……」
「影獣……! それだ!」
「影獣って天神が旅の途中で仲間にした魔物たちのこと⁉」
「ですね。天神が各所にある闇地を解放していったときに仲間になった魔物のことです」
「なるほど……でも、どうしてなんだ?」
「そんなこと儂が知っているわけないじゃろ。まぁ、魔力量を見る限りお主の力はしっかり戻っておるようじゃし、とりあえずはいいじゃろ」
「まぁ魔法はまだ使えないままなんだがな……」
「おぉ、忘れておった。それじゃよそれ。どうして魔法が使えなくなっちまったんじゃよ」
「地国で出会ったロットイラの結界でこんなことになっちゃったの」
「ロットイラ……地狼のことじゃったか」
「そうだ。だから力は戻っているとはいっても全く力になれずにいるんだ」
「なるほどの……それじゃあ、お主たちが強くならなくてはいけないの」
「うん!」
「はい……あっ‼」
「急にどうしたの⁉」
話の流れでさっきまで完全に忘れていたことを思い出して大声をあげてしまった。そんな私の様子を3人は驚いた表情で見ていた。
「私の杖を作ろうなんて話があったのを思い出しました……」
「あっ……‼ 忘れてた!」
「そういえば、それが理由でサリ・ドランを訪ねたんだったな」
「なんじゃそんな話じゃったか。それじゃあ儂の隠れ家に向かうとするかの」
そう言うとサリさんは座っていた椅子を立ってさっさと部屋を出ようとする、しかしコワグさんがサリさんの行く手を塞いだ。
「サリ様! 忘れたのですか? 今、ケミラル河が氾濫していて風国側にはとても迎えない状況なんですよ⁉」
「え……? どういうこと?」
コワグの驚きの発言に私たちはその場で固まった。サリさんはと言えば、すっかり忘れていたというような表情で椅子に座り直した。
「水国の東側で南北に流れるケミラル河が突然氾濫し始めたんです。そのせいで橋が破壊されるどころか近くに行くことすら……」
「吾輩たちが地下にいる間にそんなことが……」
「おそらくこんなことが出来るのは水龍の力を持つテクシエだけなはずなんじゃが……何がどうなっているのかの……」
「水龍の力を持つ? 何の話だ」
「説明してなかったっけ? 神が去った後、各地で眠りについた神龍たちの魔力をヴィリアンドが力尽くで奪って神狼たちに分け与えたんだよ。だから、神狼は神級魔法を難なく使えるの」
「説明されていないぞ……吾輩は今のラカルイア事情はあまり知らないんだからちゃんと説明してくれ」
「ごめん!」
「話を戻しましょう。テクシエは先ほどのサリさんの攻撃で相当なダメージを負っているはずなので彼がこんな事態を引き起こすことはできない……つまり……」
「ヴィリアンドはテクシエを早々に見限って、新たな神狼を誕生させたってところかの」
「仲間にすら慈悲という言葉がないのか……」
「まぁ、王様ならやりかねないよね」
「ですね……」
「まぁいい。それはそうとこいつの杖づくりはここでできないのか?」
「出来ないことはない、じゃが……はっきり言って要らんと思うのじゃ」
『えっ?』
次回は5月4日です。
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