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第9話:読書少女と童話の大魔導士様

 声がする方を振り向くと少女のような体をしながら圧倒的な魔力量を持つ、赤いとんがり帽子に真っ黒なローブを羽織った人がいつの間にか立っていた。


「お前はまさか……」

「サリ・ドラン⁉」

「ふむ……お主たちをどこかで見たことがあるような……」

「いや! 気のせいだよ! それでは!」

「ふーむ……あぁ、張り紙に載っておった者らか!」

「げっ……」

「知っていたか……」

「ど、どうしましょう……!」

「なに慌てなくてもいいのじゃ、別に儂はお主たちを国にうっぱらうつもりはないからの。それで、名をなんと……いや、まずは儂からじゃな。儂はサリ・ドラン。この町にある図書館の主じゃ」

「生きてたんだ……!」

「そりゃ魔女じゃからな。それで、お主たちの名前はなんじゃ?」

「私はラッセム・ヴァン・トゥーラ! こっちは妹のリーライムと元魔王のルディリア!」

「なるほどの、その魔力量はそれ故じゃったか」

「それよりもだ、どうしてお前のような者がここに?」

「どうしてって……図書館に戻るだけじゃが?」

「いや違うな。その恰好は明らかに外に出る用の装備じゃない」


 ルディリアの言う通り、サリさんの服装はケミシラ内を散歩していたと言われても違和感のないほどの軽装だった。


「流石は魔王様と褒めておくべきかの。本当の理由は古い友の気を感じたから飛んできたところなんじゃ」

「古い友?」

「それって、童話の?」

「あぁ、『サタナ・クライ』の気じゃよ。まっ、気のせいだったわけじゃが。それはそうと、お主たちは何用でここに訪れたんじゃ?」

「そうだ! 本題を忘れるところだった!」

「大魔導士様、私たちはあなたの図書館に用があってケミシラを訪れたのです」

「なるほどの。じゃが、お主たちはお尋ね者じゃろ? 流石に危ういんじゃないかの?」

「その通りなんだ。だから悩んでいたわけでな」

「ふむ……それならの……移動魔法(ルフドイ)‼」


 サリさんが魔法を唱えると私たちの体が光に包まれる。光が捌けた時には私たちは図書館のエントランスのような場所に立っていた。


移動魔法(ルフドイ)だと⁉ この魔法は行き先に行ったことある奴だけが……」

「儂が魔法の仕組みを改造したんじゃよ。そのおかげで来たことのない者でもここにだけは飛ばせることが可能なんじゃ」

「サリ様おかえりなさーい……って、またよく分かんない人を連れてきて……?」

「旅の方じゃよ。どうもここに用があるらしくての、連れてきたのじゃ」

「そうですか……でもどうしてでしょう、どこかで見たような気が……」

「まぁ、彼女らお尋ね者じゃしな」

「え……え……⁉ あぁ‼ そうじゃないですか! さっき酒場のチラシに国家転覆とか書いてあって、こわーいなんて思ったばっかりですよ!」

「まぁ何かの間違いじゃろ、彼女らからそんな気はせんのじゃ」

「サ、サリ様がそう言うなら……」

「それで、お主たちは何について調べる気でいるんじゃ?」

「そうだな、いろいろあるから分担といこう。吾輩は神殿について調べる。ラッセムはサリから有用そうな話を、リーライムは神級魔法について調べろ」

「了解!」

「神級魔法を……コワグ、彼女を案内してやるのじゃ」

「分かりました、それではついてきてください」


 コワグさんに連れられて5階の中央広場に連れられる。見渡す限り本がぎっしりと詰め込まれた本棚が見える限り続いており、辺りは紙と埃の匂いで包まれていた。


「コワグさん、どうしてサリさんは私たちにここまで良くしてくれるのでしょう?」

「そうですねぇ。さっきのサリ様の顔は近年まれにみる嬉しそうな顔でした」

「え?」

「もしかしたら、あなたたちをかつての仲間たちと重ねているのかもしれませんね」

「どうして……?」

「さぁ、私もわかりません。案外サリ様もさみしがりやぁッ⁉」

「客人に余計なことを口走るでない」

「いつからいたんですか⁉」

「ラッセムが図書館を見て回りたいというからの、さっき連れてきたところじゃ」

「そのラッセムはどこに……?」

「え……まさか、もう迷子になったとか言わないじゃろうな……?」


 サリさんの言葉を聞いていたかのように遠くでお姉さまが助けを求める声を上げた。サリさんはため息をついてコワグさんに探しに行くように指示した。


「お姉さまがご迷惑を……」

「気にすることはないのじゃ、それはそうとお主たちの事情はラッセムから粗方聞いたのじゃ。まさかお主が王級(キングクラス)とはの……」

「自分でもなんでかわからないんです……」

「もしかしたら、儂がやつの雰囲気を感じたのはお主のものじゃったのかの……」

「やつ?」

「あぁ、サタナ・クライのことじゃよ」

「あの天神様ですか?」

「その通りじゃ」

「でも彼女と私がどうして……」

「お主、歴史に疎すぎるんじゃないかの?」

「ごめんなさい……」

「冗談じゃ。軽く話すとするかの。そもそも数百年前に全ての神はリウクスを人間に任せてリウクスから去った。その時に神々が天国の人間に『ルサソレーナ』の名と神級魔法を授けて、その者を『降臨者』とし、リウクスの長とさせた。どうじゃ、ここまででもう分かったじゃろ?」

「なるほど、その降臨者が今でいう|王級《キングクラスの人間で、その力の源は神々の力だから……」

「正解じゃ。どうしてお主がそんな力を持っているかは知らぬが、ともかくそういうことじゃ」

「教えてくれてありがとうございます」

「うむ。それじゃあ、お主が探している本を探すとするかの」

「その本はどこに……?」

「どこ……この階全部じゃよ! 歴史書はこの階全てに置いてあるのじゃ!」

「嘘……」

「本当じゃ、さぁ気張って探していくのじゃ!」


 既に太陽が完全に沈み、図書館内をろうそくの小さな明かりだけが照らしていた。それなのにも関わらず、私たちは有用な情報を何もつかめずにいた。


「サリ様……もしかしてですが……」

「儂も薄々感じておった。3人とも申し訳ないが聞いてほしい」

「どうしたんですか?」

「ここにある本はこれで全部じゃないんじゃ」

「というと?」

「少し前に何者かの襲撃を受けた際に燃やされてしまっての」

「その中に私たちの欲しい情報があったかもしれないってこと⁉」

「そういうことじゃ」

「いったい誰がそんなこと……」

「その見当がつかずに困っていたんじゃよ。今時わざわざ歴史書・古文書を狙う輩など……」

「確かに……」

「それじゃあ、お前の知っている知識で答えてほしい。水の神殿はどこだ?」

「なんじゃ、そんなことじゃったか。それなら儂が案内するとしよう」

「え⁉」

「どうしてそんなに驚いておるんじゃ? 童話を読んだなら知っているはずじゃろ、儂もかつて神殿を巡ったんじゃぞ?」

「そういえば……」

「なら話は早い。早速向かうとしよう」

「わざわざこんな真夜中に行く必要がどこにあるというんじゃ。大人しく一晩待つべきじゃ」

「それもそうだな。金髪、銀髪ゆっくりやすんでおけよ」

「捕まえた!」

「何をするんだ金髪?」

「今日はルディもおやすみだよ! ここなら安全だろうからね!」

「その通りです。大人しく休んでください」

「見張りはコワグ含め悪魔たちにやらせておるから任せてしまってよいのじゃ」

「はい! 任されてます!」

「分かった、分かったから放せ!」

「やだっ!」

「嫌です!」


 そうして私たちはルディリアを2人で横から抱き枕にしてそのまま眠りについた。時々ルディリアがうめき声のようなものを挙げていたが気のせいということにしておいた。


挿絵(By みてみん)

次回は4月21日です。


 * * *


(追記・4月21日)

水国に入ったのに地図を更新し忘れていました……!

本当にごめんなさい!

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