村にやってきたあいつ
突如眩しい光が広がり、俺は目を閉じた。
そして開けた視界の先に、見慣れないやつを見つけた。
ぬるりと気持ち悪いやつだ。
へらりと口らしき場所を歪め、その場でぐるりぐるりと手に持った武器を振り回す。
何もない場所で飛び跳ね、突然全速力で走りだしたかと思えば、その場に硬直する。
仲間たちと遠巻きにそいつを観察し、あいつはいかれた奴だとかぶりを振りあう。
近づいたらやばい奴に違いない。
つるりとした顔と、やたらと綺麗に手入れされた肌。
こんな場所に来るのに汚れ一つない体。
絶対に何かある。
あんな奴、いつの間にこの集落に現れたのか。
ああ、また、何かやっている。
ぼおっと虚空を眺め、そして、また跳んだ。
気持ちの悪い奴だ。
いったいどこから来たのか。
やたらと白い顔。目も鼻も口も俺たちに比べたら小さい。
あんな歯で食事などできるのか。俺たちとは何もかもが違いすぎる。
あんな鼻で呼吸すらできるのかも怪しい。
そう、怪しい奴だ。
そいつはまるで俺たちをおちょくるように、横に縦に変な動きを繰り返す。
数歩ものすごい勢いで動き、光の速さで剣を横なぎに振る。まったく何もいない虚空を狙って。
本当に、気味が悪い。
そいつの奇行はしばらく続いた。
だが徐々に滑らかになっていく動きを見て、俺たちの間に緊張が走る。
聡い奴らはそいつの目にとまらないようにゆっくりと身を隠した。
一方で、経験の浅い、弱い奴らは危機感もなくそいつの行動範囲にとどまった。
そして、それは突如始まった。
そいつはまるでいたぶるように弱い奴から殺していった。
一人、また一人、あの奇怪な動きをする剣の前に倒れていく。
体力を削ったと思っても、どこからか不思議な光が出てきてあいつを癒す。
いったい何なんだ!
気味が悪い!
塵となって消えていく瞬間、どこからか声が聞こえた。
「クリティカルヒット!!」
あの気持ちわるい奴が両手を上にあげて飛び跳ねている。
踊り狂い、光を浴びている。
無念だ。
あいつはこれから先、俺たちの仲間をどんどんと殺していくのだ。
ここで止められなかった俺を、仲間は憎むだろうか。
だが見ているが良い。
そんな稚拙で小手先の技など、我々のボスには通用しない。
不気味なステップで惑わされると思うな。
ああ、光の波がやってくる。
あの粒の中に入れば俺という存在は消えるだろう。
だが、この意思は……決して……消え…………
――ステージクリア!
眩しい光が広がり、俺は目を閉じた。
そして開けた視界の先に、見慣れないやつを見つけた。
ぬるりと気持ち悪いやつだ。
――終――
ゲームのモンスター視点でした。
初期の頃って、変な動きしてその場でジャンプしたりダッシュをかましたりするよなと思って……ある、よね? あると言って!