ただの少女
サンシンの見張りは、若手が当番制でやるらしい。
「サンシンにボロボロにやられた俺らが見張りて言われてもな」
「暴れても、止めれるやついねぇよ」
食事中には、愚痴が交わされた。
「ねえねえ、シマダが当番のとき俺も付いてっていい?」
「お、ボスに挑戦する気がでたんだな」
目を輝かせたシマダに、ジンは曖昧に笑う。ボスに挑戦などしたくなかったが、少女のことがどうしても気になっていた。
シマダの当番は、すぐに回ってきた。少女の体は、相変わらず痛々しかった。
「体が丈夫とかそういう訳じゃないんだね」
「ん?あれ、確かに傷だらけだ。俺も超人的に怪我が治るイメージだった」
「大丈夫かな、女の子なのに」
「あれまで女の子扱いか、呆れる」
組員は口々にサンシンを化け物扱いするが、ジンからすると、ただの可愛い少女にしか思えなかった。
一発殴られるでもすれば、皆と同じように思えるんだろうか。
ジンは、サンシンのいる部屋に入った。シマダが止めたが、無視した。
近くにきた。少女は、ただ睨むだけで何もしない。
ジンは、思わず少女の頬に手を触れた。鎖がガシャガシャと音を鳴らす。また殴られると思い、少女は身構えた。
「大丈夫?痛くない?」
少女は目を見開いて驚いたあと、視線を逸らした。少し顔を赤らめて口をとがらす。
(あれ…?)
それは、周囲の女子が、ジンによる見せる表情だった。